より危険になる中国。欧米よりもむしろ日本が中国に強い警戒心を持つべき理由

より危険になる中国。欧米よりもむしろ日本が中国に強い警戒心を持つべき理由

中国はどんなに大国になっても欧米を侵略しようという意図は見せないだろうが、膨張主義国家として周辺の国は「飲み込む対象」となる。日本はまさに中国の周辺国家であり、侵略の対象となっている。とすれば、中国に強い警戒心を持つべきなのは欧米よりも日本なのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

TikTokを通して情報が中国政府に漏れていく

中国発の動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」は、ユーザーの個人情報を収集して中国に流している危険なアプリなのだが、TikTok側は「広告サービスの効果を向上させるために使用する」と述べてそれをやめようとしない。

アメリカのそれぞれの州の州政府のウェブサイトにまで個人情報を追跡するための1×1サイズのピクセル・イメージが仕込まれていた。

このピクセル・イメージはトラッキングピクセルと呼ぶのだが、これが仕込まれることによって、ユーザーのさまざまな情報を環境変数で得ることができるようになる。しかし、ユーザー側は自分がトラッキングされているというのは気づかない。

最近では、アメリカ人のジャーナリストのデータに不正アクセスして監視していたことも発覚して、米司法省からも捜査を受けるという事態にもなっている。TikTokを通して情報が中国政府に漏れていく。

外国政府が、勝手に自国の個人情報を好き放題に盗んでいくことに危機感を覚えない政府はない。まして、それが中国政府だとしたらどこの国でも警戒する。警戒しないのは日本政府くらいなもので、欧米の各国政府は大きな危機感を持ってこの状況を見守っている。

アメリカは、国家安全保障上の懸念があるという理由で、TikTokの利用禁止、あるいは北米事業の売却を命じているのだが、これは「もうアメリカでTikTokに商売をさせない」という宣言でもある。

そして、考えなければならないのは、アメリカ政府が問題にしているのはTikTokだけではなく、中国企業すべてだということだ。アメリカの巨大企業を徹底的に模倣して国内で大きなシェアを取り、その次に世界に打って出て中国政府の意のままに外国人の情報を収集する。

こういう中国政府のやりたい放題に、欧米は中国そのものをグローバル経済から排除しようとしている。

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中国政府と結託してアンフェアな手口で競争を仕掛ける

中国企業は中国政府と結託してアンフェアな手口で競争を仕掛けている。どういう手口が使われているのか。

中国政府は、国内企業を支援するために多額の補助金を提供している。これによって企業が市場での競争力を強化し、海外企業との価格競争に勝利することを可能にしている。

外国企業が中国に入り込んでも自由競争はない。中国政府は自国民に中国版の製品やサービスを使うことを強制し、自国企業が優位になるように誘導し、その自国企業を中国政府が支配する構図となっている。

たまに、アリババの最高責任者であるジャック・マーのように欧米にも名が知られるようになって中国政府に批判的になる経営者もいるのだが、そういうのは完全に叩き潰して表舞台から抹殺するようなこともしている。

中国では経営者も中国政府の走狗になるか、それとも表舞台から抹殺されるかの2つに1つである。言うことを聞かない経営者は文字通り命を消されることもある。逆に政府に徹底的に媚びる経営者は珍重させれる。

ファーウェイなどはまさに中国政府と結託して全世界の通信インフラに潜り込んでいった典型的な企業なのだが、そのファーウェイの裏には明確に中国政府の存在があり、中国政府の世界制覇の戦略と通りに動いていた。

企業の裏側に政府がいて他国の企業を蹴散らして自国の企業が競争に勝つように仕向け、それぞれの国の重要な通信インフラに潜り込み、あとは好き放題に情報を抜き取っていく。

また、中国政府と中国企業は海外企業の特許、商標、著作権などの知的財産権を侵害することにまったく何の躊躇もなく、違法でアンフェアな工作で知的財産権を強奪していく。

国外の企業や行政や大学に入り込んだ中国人がスパイ活動をして極秘技術や最先端研究や企業秘密をことごとく盗んでは事件になっているのだが、こうした活動はすべて中国政府が組織だってやっていることなのである。

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欧米は中国をグローバル経済から排除することに本気

中国企業がアンフェアな手法で競争を仕掛けることは、グローバル経済に深刻な影響を与えている。そのため、欧米をはじめとした国際社会は、アンフェアな競争を行う中国企業の排除をこれからより鮮明にしていく。

TikTokは欧米から排除されようとしているのだが、これは中国企業の排除される企業の1つであって、最終的には中国のほぼ全企業がグローバル経済から排除されていく流れになっていくのは間違いない。

半導体にしてもアメリカは2023年2月に対中半導体輸出規制強化策を発表して、中国に最先端技術が渡らないように強く規制をするようになっていった。

最近、中国とあまりにも結びつきが強すぎると大きな批判にさらされていたAppleもいよいよ脱中国の動きを鮮明に出すようになってきている。

iPhoneなどはアメリカでデザインされていて中国で製造されているのだが、この生産拠点を中国から他国に再配置する動きが加速している。一部はアメリカに生産拠点を戻し、一部はタイやフィリピンやベトナムなどの東南アジアに移し、一部は台湾に移し、一部はインドに移している。

またウォーレン・バフェットが率いるバークシャー・ハサウェイも長らく保有していた中国企業「BYD」の株式を売却している。これも、アメリカの〝脱中国〟の動きに歩調を合わせたものであると言える。

また、アメリカはEU(欧州連合)とも歩調を合わせながら、レアアースなどの重要鉱物資源についても中国依存から脱却しようとしている。さらに、サプライチェーンの再構築も行われており、中国からの脱却を粛々と進めている。

欧米は中国をグローバル経済から排除することに対して「本気」なのである。

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日本はまさに中国の周辺国家であり、侵略の対象だ

折しも中国では習近平国家主席が異例の3期目を続投することになり、自分に忠実な人物を集めてさらに独裁色を強めていくことになった。中国は経済発展したのだが、民主国家にならなかった。むしろ、強固な習近平独裁国家となって、より世界経済のリスクになりつつある。

欧米はすでに中国を見限っており、傲慢不遜で危険になった中国を完全に敵視するようになって中国の排除に動いている。日本は今、こうした流れを傍観しているのだが、欧米と中国の対立がより激化していくと、日本も完全に巻き込まれていく。

中国は軍事的にも強大化しているのだが、防衛予算はこの30年で39倍にも膨れ上がっている。2023年の国防費は30兆円の予算が組まれることになっている。日本の国防費は3兆4029億円なので、それと比較しても凄まじい額であることが分かる。

そんな中で、中国は台湾への領土的野心を隠さない。

将来のどこかの段階で、台湾有事が引き起こされる可能性も指摘されているのだが、そうでもなくても中国は南シナ海や東シナ海などの地域で領有権を主張してベトナム・フィリピン・日本と軋轢が生まれているわけで、有事になった際は日本が巻き込まれない方がおかしい。

さらに中国は核兵器の開発と拡散と強化に走っているわけで、日本が侵略の対象となった時はもはや阻止できないことになる。

欧米は中国の危険性を強く認識して、なりふり構わず中国排除に動いているのだが、状況を客観的に見ると、中国排除をしなければならないのは欧米というよりもむしろ日本なのである。

中国はどんなに大国になっても欧米を侵略しようという意図は見せないだろうが、膨張主義国家として周辺の国は「飲み込む対象」となる。日本はまさに中国の周辺国家であり、侵略の対象となっている。

日本はもっと中国の危険性を認識しないと、日本の領土は内部からも外部からも侵略されていくばかりとなるだろう。

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