天安門事件をひた隠しに隠す中国共産党。今後、何が中国共産党を崩壊させるのか?

天安門事件をひた隠しに隠す中国共産党。今後、何が中国共産党を崩壊させるのか?

経済的混乱や経済的衰退は、そのまま中国共産党に対する不満になって湧き上がるようになっていく。だからこそ、中国は1989年6月4日の「天安門事件」を情報統制し、この事件をタブー化して「なかったこと」にしている。共産党の指導者たちは恐れているのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

中国の強圧に反対する香港の民族運動も破壊された

中国はアンフェアな経済大国であり、軍事的野心を持った危険な独裁国家であることはすでに全世界が知るようになっている。

現在の中国はゼロコロナ政策による成長鈍化、不動産バブル崩壊懸念、チベット・ウイグル問題、周辺国との領土問題や経済的軋轢と、大きな問題をいくつも抱えて綱渡りの状況でもある。

当然、中国国内では、共産党政府に対する不満も沸騰しているのだが、習近平はより強度な独裁でそれを乗り切ろうとしている。しかし、それでも吹き上がる社会不安を収めることには成功していない。

そこで中国政府が、ますます必死になって行っているのが「言論統制」である。

中国の言論統制は、今や新聞社のみならず、一般市民にも及んでいる。最近も政府批判を繰り返していた人々のブログや短文投稿サイトのアカウントを強制閉鎖し、巨大IT企業の経営でさえも経営に関与している。

しかし、それでも政府の監視を運動家がくぐり抜けているが、看破できないと見なされた活動家は有無を言わせない強引な逮捕が待っている。

中国政府が敵だと認識したら、活動家だろうが、弁護士だろうが、書店経営者だろうが、芸能人だろうが、中国有数の資産家だろうが、外国人だろうが、みんな逮捕されるのである。

欧米の経営者にも影響力のあったアリババのジャック・マー氏も表舞台から消された。すでに中国の強圧に反対する香港の民族運動も完膚なまでに破壊されて、市民も沈黙せざるを得ない状況になっている。

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「強大な中国相手に何をしても無駄だ」というあきらめ

33年前の今日、1989年6月4日は「天安門事件」が起きた日である。天安門事件は、正確には「六四天安門事件」と呼ばれている。中国政府による人民虐殺事件だ。中国政府は、これをひた隠しに隠している。

民主派の煽動が人民の不満と結びついたら、中国が再び動乱に落ちてしまう。そんな危機感が中国共産党にみなぎっており、インターネットでの摘発もことさら厳しくなっている。

すでに中国本土のみならず、自由な言論があったはずの香港でも抗議デモは命がけになってしまった。

香港が中国に返還されたのは、1997年7月1日である。それ以降、香港は長らく中国とは別の「一国二制度」という自由な気風と言論が認められていたが、今やその制度も完全破壊され、香港も中国化しつつある。

かつての自由な気風のあった香港は、もう過去のものになった。

2014年には中国の圧力に不満を持った若者たちが「雨傘革命」という大規模デモを起こし、これが香港全土を巻き込んで膨れ上がっていった事件があった。しかし、暴力と内紛と中国の工作で「雨傘革命」が空中分解した。

そして、2019年から2020年の激しい民主化運動も潰えると、香港人の間では「強大な中国相手に何をしても無駄だ」という、あきらめと冷めたムードが急速に広がっていった。

香港では、活動家だけでなく、中国共産党や習近平を批判する経営者が次々と逮捕されるという事件も起きていたのだが、これも中国政府の露骨な言論統制であるのは明白だ。

それでも、香港人の少なからずは今も中国政府による締め付けに抵抗を見せているのだが、状況は芳しくない。香港の未来を悲観する人も多くなった。民主活動家の多くはイギリスなどに亡命して香港を見捨てた。

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「本日は」という言葉さえもセンシティブワード

中国では、「天安門事件」という言葉は一切検索できないようになっている。この事件は、中国のタブー中のタブーなのである。タブーに関しては中国では徹底的に隠蔽される。

これらの言葉は「センシティブワード」と呼ばれているのだが、習近平を揶揄する「クマのプーさん」はもちろんのこと「ディズニー」という言葉さえもセンシティブワードも入っている。

天安門事件の6月4日は、「本日は」という言葉さえもセンシティブワードで検索できなくなるというのが中国の実情である。これからも、中国政府がまずいと思った言葉は、どんな言葉であれ次々と遮断されていくことになる。

大量の情報がインターネットを介してなだれ込む「情報化」の時代に、情報統制するというのも壮大なスケールだが、中国共産党政府はそれをやりきるつもりでいる。情報統制と共産党賛美の洗脳をセットにして14億人を操る。

いったん情報統制に失敗すると、中国国内に吹き荒れている政府への不満は巨大な嵐となって中国政府に向かっていくことになるので、中国共産党政府もこのあたりには容赦ない。

中国はただでさえ暴動が続発する国だ。情報統制に失敗すると政府は状況をコントロールすることができなくなる。

政府批判が大規模デモとなって吹き荒れたら「国そのものが自壊する」ということを誰よりも知っているのが中国政府であり、習近平である。だから、「やりすぎだ」だと言われても中国政府は必死になってこういったものを抑えこむ。

もちろん、中国は取り残された人がいるとは言え、かつてよりも豊かになった人も多く、今の政治体制に不満を持つ者よりも、中立の者のほうが増えているのも事実である。

しかし、アメリカとの新冷戦や、ゼロコロナ政策による締め付けや、複合的な不況が本格化していく中で、中国の成長が終わったと人民が確信したら、取り残された人々はもう共産党を支持しないだろう。だから中国政府は必死なのだ。

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中国共産党でも体制崩壊の危機にまで追い込まれる

ロシアは、プーチン大統領によるウクライナ侵攻で国際社会から一気に切り離されて、いよいよロシアの国家崩壊が見えてきている段階になっているのだが、中国はこうした動きを注意深く観察しているはずだ。

中国が、もしロシアのように動くとしたら「台湾侵攻」となるのだろう。

ロシアがウクライナを侵攻して国際社会から切り捨てられるこの光景を見て、中国が台湾侵攻に動くとは思えないが、独裁国家は得てして通常とは違う発想をするので絶対にそういうことがないとは限らない。

すでに中国は経済成長のピークが終わった。そんな中で、アメリカと敵対して国際社会から徐々に切り捨てられようとしている。中国が追い詰められると、何らかの軍事行動を起こして人民の目を軍事的緊張関係に向けることもあり得る。

それが台湾侵攻であっても不思議ではない。

しかし、中国は経済的な民族なので、自分が金持ちになれないような国になったら、いくら台湾侵攻に国民の目を向けさせても中国人は政府に対する不満を隠さなくなるだろう。

経済的混乱や経済的衰退は、そのまま中国共産党に対する不満になって湧き上がるようになっていく。

だからこそ、中国は1989年6月4日の「天安門事件」を情報統制し、この事件をタブー化して「なかったこと」にしている。共産党の指導者たちは恐れているのである。

中国は人口が多い国だ。香港とは違う。中国全土で一斉蜂起が起きたら、中国共産党と言えども対処不能となる。湧き上がった反政府運動を欧米が支援して大規模化していくと、中国政府と言えどもコントロールできない。

反政府運動に火がつけば広範囲に燃えていく。いったん火が付いたらそれは止まらない。だから、わずかな可能性であっても、中国政府はその暴動の芽をつぶそうと躍起になる。

しかし、物事には限界というものがある。いずれ中国では第二の天安門事件が起きる時も来るのかもしれない。そのとき、中国政府はまた戦車で人民を踏み潰すのだろうか……。

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