天安門事件をひた隠しに隠す中国。中国は民主化できないまま30年経った

天安門事件をひた隠しに隠す中国。中国は民主化できないまま30年経った

中国はアメリカとの貿易戦争の標的となってグローバル市場から締め出されつつある。そして、成長鈍化、不動産バブル崩壊懸念、人権問題と、次から次へと大きな問題が起きて収まることがない。

これによって中国共産党政府に対する不満も沸騰しているのだが、習近平はより強度な独裁でそれを乗り切ろうとしている。しかし、それでも吹き上がる社会不安を収めることには成功していない。

そこで中国政府が、ますます必死になって行っているのが「言論統制」である。

中国の言論統制は、今や新聞社のみならず、一般市民にも及んでいる。最近も政府批判を繰り返していた人々のブログや短文投稿サイトのアカウントを強制閉鎖するという挙に出ている。

反政府的な発言をしたらすぐに削除される。

しかし、それでも政府の監視を運動家がくぐり抜けているが、看破できないと見なされた活動家は有無を言わせない強引な逮捕が待っている。

中国政府が敵だと認識したら、香港の書店経営者だろうが、中国有数の資産家だろうが、みんな逮捕されるのである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

香港からは民主主義が消されていく

30年前の今日、1989年6月4日は「天安門事件」が起きた日である。天安門事件は、正確には「六四天安門事件」と呼ばれている。中国政府による人民虐殺事件だ。中国政府は、これをひた隠しに隠している。

民主派の煽動が人民の不満と結びついたら、中国が再び動乱に落ちてしまう。そんな危機感が中国共産党にみなぎっており、インターネットでの摘発もことさら厳しくなっている。

中国本土では天安門事件に関するデモを仕掛けるのは生死に関わる問題となるので行われていないのだが、香港では数千人の市民によるデモ行進が行われている。

香港が中国に返還されたのは、1997年7月1日である。それ以降、香港は長らく中国とは別の「一国二制度」という自由な気風と言論が認められていたが、今やその制度も形骸化し、香港も中国化しつつある。

2014年にはこうした中国の圧力に不満を持った若者たちが「雨傘革命」という大規模デモを起こし、これが香港全土を巻き込んで膨れ上がっていった事件もあった。

しかし、暴力と内紛と中国の工作で「雨傘革命」が空中分解すると、香港人の間で急速に「強大な中国相手に何をしても無駄だ」という、あきらめと冷めたムードが広がっていった。

その結果、香港からは民主主義が消されていこうとしている。

香港では、中国共産党や習近平を批判する書物を売っていた書店経営者が次々と拉致されるという事件も起きていたのだが、これも中国政府の露骨な言論統制であるのは明白だ。

香港人は今も中国政府による締め付けに、心理的に抵抗を見せているのだが、最終的には中国政府は香港を飲み込み、本土化してしまう可能性が高い。

香港人は最後の最後までこの流れに抵抗するだろう。しかし、香港の未来を悲観する人も多くなった。

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次々と遮断される言葉

中国では、「天安門事件」という言葉は一切検索できないようになっている。この事件は、中国のタブー中のタブーなのである。タブーに関しては中国では徹底的に隠蔽される。

これらの言葉は「センシティブワード」と呼ばれているのだが、習近平を揶揄する「クマのプーさん」はもちろんのこと「ディズニー」という言葉さえもセンシティブワードも入っている。

天安門事件の6月4日は、「本日は」という言葉さえもセンシティブワードで使えなくなるというのが中国の実情である。これからも、中国政府がまずいと思った言葉は、どんな言葉であれ次々と遮断されていくことになるはずだ。

しかし、大量の情報がインターネットを介してなだれ込む「情報化」の時代に、いつまでも情報統制が続けられるわけがない。いずれ中国政府のやっていることは破綻する。

小さな小川のせせらぎであっても、それが寄り集まると大河になっていく。いったん情報統制に失敗すると、中国国内に吹き荒れている政府への不満は巨大な嵐となって中国政府に向かっていくことになる。

中国は暴動が続発する国だ。今は情報統制で暴動を抑え込んでいるが、それに失敗すると政府は状況をコントロールすることができなくなる。

政府批判が大規模デモとなって吹き荒れたら「国そのものが自壊する」ということを誰よりも知っているのが中国政府であり、習近平である。だから、過剰防衛だと言われても中国政府は必死になってこういったものを抑えこむ。

もちろん、中国は徐々に豊かになっており、今の政治体制に不満を持つ者よりも、中立の者のほうが増えている。つまり、全市民を巻き込んだ大規模な反政府運動はなかなか起こりにくい環境にある。

しかし、アメリカとの「新冷戦」が本格化して中国が締め付けられていく中で、中国の夢が悪夢に変わったと人民が確信したら、中国で再び第二の天安門事件が起きてもおかしくない。

だから中国政府は必死なのだ。

 

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いったん火が付いたら止まらない

チュニジアではひとりの青年の焼身自殺をきっかけにして2011年に民主化革命が始まって独裁政権が崩壊していった。

中国では、どうなのだろうか。

焼身自殺と言えば、中国では政府への不満から土地の立退きまで焼身自殺の嵐である。自分を燃やすというのは、実は中国では珍しい抗議ではない。

中国では不満があれば「燃やす」のが基本である。だから暴動が起きれば燃えるし、社会に不満があればバスに火炎瓶を投げ込んで他人を燃やしたりする。

今後、人民の怒りが充満していくと、誰かが燃えてチュニジアのような暴動が起きてもおかしくない。その「怒り」が人民の共感を得ると、あとは一気呵成に騒乱まで結びつく可能性がある。

だからこそ、中国は1989年6月4日の「天安門事件」を情報統制し、この事件をタブー化し「なかったこと」にしている。共産党の指導者たちは恐れているのである。

中国は人口が多い国だ。彼らが一斉蜂起したら中国共産党と言えども体制崩壊の危機にまで追い込まれる。

最初は小さな反政府運動だったとしても、それを欧米が支援して大規模化していくと中国政府と言えどもひとたまりがない。

火がつけば広範囲に燃えていく。いったん火が付いたらそれは止まらない。だから、わずかな可能性であっても、中国政府はその暴動の芽をつぶそうと躍起になる。

しかし、物事には限界というものがある。

中国共産党は今、経済的にも政治的にもどんどん追い込まれている。アメリカとは折り合えず、成長は鈍化し、不動産価格は崩壊の懸念が生まれ、言論封殺はますます苛烈になっていく。

いずれ中国では第二の天安門事件が起きるだろう。そのとき、中国政府はまた戦車で人民を踏み潰すのだろうか。(written by 鈴木傾城)

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天安門事件。火がつけば広範囲に燃えていく。いったん火が付いたらそれは止まらない。だから、わずかな可能性であっても、中国政府はその暴動の芽をつぶそうと躍起になる。しかし、物事には限界というものがある。

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