世の中の流れを見て「何がどうなる」と予測するのが好きな投資家はこの世界に来い

世の中の流れを見て「何がどうなる」と予測するのが好きな投資家はこの世界に来い

個別銘柄からETFに軸足を移した結果として、ここ数年でこのETFの多彩さに深く興味・関心を持つようになっている。コアは【VTI】に絞るのは変わらないが、サテライト的な動きでは、こうしたETFを短期でうまく使っていきたいと思っている。今後、この世界を追求していきたい。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

ETFの多彩さに深く興味・関心を持つようになった

私はもうすでに資産の半分以上を【VTI】のようなETF(上場投資信託)に置き換える作業をしており、個別銘柄はほんのサテライト的に売買するくらいになっている。個別銘柄からETFに軸足を移した結果、ここ数年でこのETFの多彩さに深く興味・関心を持つようになっている。

ETFは、特定のセクター、地域、国、コモディティ、債券、株式などへの投資が可能な金融商品である。

ETF【VTI】は「Vanguard Total Stock Market Index Fund」で日本では「全米株式インデックスファンド」として知られているものだが、これは名のとおりアメリカの株式市場全体をトレースするように作られたETFだ。

アメリカの代表的な指数であるS&P500に連動したものであれば、【SPY】や【IVV】や【VOO】などもある。

ETFは、その他にもNASDAQの上位100銘柄の相対的な動きを扱った【QQQ】もあるし、エネルギーセクターの株式をまとめた【XLE】のようなものもある。コモディティでいえば最近、非常に注目されているETFに【GLD】や【IAU】がある。

【GLD】【IAU】は文字通りゴールドの価格を反映したETFである。ゴールドは2024年3月から急激に値を上げている。インフレが続くのであれば、現金よりもゴールドが資産価値を保全するわけで、【GLD】【IAU】が買われても不思議ではない。

他にもシルバーのETFである【SLV】もあれば、プラチナのETFである【PPLT】もある。コモディティに勝機がある状況がきたとき、こうしたETFを買うことによって利益を手に入れることができる。

ロシア・ウクライナ戦争や、イスラエル・ハマス戦争ではその戦況のゆくえが石油価格を動かしていく。石油をトレードするにはエネルギー企業を集めたETF【XLE】をトレードすることもできるし、ストレートにWTI原油への投資を可能にするために設計されたETF【USO】を買うこともできる。

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マクロ的な観点を持った投資家と親和性が高い

ETF(上場投資信託)は、個別銘柄とは違って、世の中全体の動きやセクターの将来を読むマクロ的な観点を持った投資家と親和性が高いように思う。

たとえば、2023年からハイテク分野で爆発的な熱狂を見せているのが生成AIだが、この生成AIは莫大なマシンパワーを要するので、莫大な資金をそこに投じることができる大手ハイテク企業にとって非常に有利である。

そのため、NASDAQ100に連動するETFよりも、より大手ハイテク企業に特化したETFである【XLK】や【VGT】などが選ばれたりすることもある。AIでの開発競争や技術革新や製品組み入れはこれからが本番になるので、どの企業が最終的に勝者になるのかは、まだ未知数である。

現在はマイクロソフトがうまく利益化し、そこにアップルやメタやアマゾンが追いかけているのだが、出遅れたアップルもかなり本格的な巻き返しがあるかもしれない。あるいはアドビシステムズやオラクルが飛躍するかもしれない。

それならば、このセクターを丸ごと抱えたETFである【XLK】や【VGT】で備えようと思う投資家がいても不思議ではない。

また、このAIの頭脳になるのは半導体なのだが、この分野ではエヌヴィディアが突出している。しかし、AI需要はエヌヴィディア一社ではまかないきれないので、半導体セクター全体がAIブームの恩恵を受けることになる。

そういった意味で、半導体セクターを集めたETFである【SOXX】も強力な選択肢となる。

今後、AIが社会に大きなインパクトを与える史上最高の成長産業となり、半導体の需要も切れないと考えるのであれば、個別銘柄だけでなく、【XLK】【VGT】【SOXX】などのETFが選択肢に入るのは当然である。

これらは「AIが成長産業となる」というマクロ的な分析によって買われるETFであり、これを見てもマクロ的な観点を持った投資家とETFの親和性の高さはよくわかる。

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ETFにも欠点がある。たとえば、どんな欠点か?

もちろん、ETFにも欠点がある。ETFには手数料がかかるし、市場が急変したときに特定の指数に追随することができなくなるトラッキングエラーが発生することもある。

また、多数の個別銘柄をパッケージしたもので、特定の銘柄の比率が高すぎたり低すぎたりする問題もあれば、自分自身は不要だと思う銘柄が含まれていることもあったりする。要するに、ETFの設計が自分の信条とぴったり合うようなことはめったにない。

たとえば、半導体のセクターをトレースする【SOXX】でいえば、エヌヴィディアの比率をもっと高めて、インテルは除外してほしいとか考えている投資家もいるだろう。しかし、ETFは設計会社は決めたパッケージなので、比率や構成銘柄を自分の都合で変化させることができない。

そうした欠点がETFには、ある。

さらにいえば、ETFは個別銘柄と違って価格変動がマイルドである。たとえば、エヌビディアが2倍以上に上がったとしても、半導体セクターのETF【SOXX】も同じように上昇するわけではない。

なぜなら、他の上がっていない銘柄や上がりが足りない銘柄が足を引っ張って価格上昇を抑えるからである。

このような欠点もあるので、ETFにはあまり興味が持てないという投資家はたしかにいる。ピンポイントで個別銘柄を選択して、大きな上昇を一気に取りたいと考える投資家はETFには向いていないだろう。

ETFはそうした考えかたで買うものではなく、あくまでも「セクター全体がどうなるのか」「そのコモディティがどうなるのか」という全体(マクロ)で考えるべき投資対象となっているのだ。

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信用取引的なトレードも空売りもできるのがETF

マクロ観点で世の中を見て、「これから世の中はこうなる」と思ったときに使うことができるのがETFの大きな特徴である。場合によっては、投資をブーストすることもできるし、空売り(ショート)することもできる。

「今後、間違いなくアメリカの株式市場が大きく上昇する」という確信を持った投資家がいたとする。

こうした投資家は普通に【VTI】や【SPY】などを買ってもいいのだが、「絶対に上がる確信がある」「大きく勝負に出たい」と強く考えているのであれば、実はそれに答えるETFも用意されているのがおもしろいところである。

たとえば、【SPXL】や【UPRO】は、S&P500の3倍の値幅で動くETFである。3倍だからETFの信用取引のような扱いであるといえる。2倍の値幅では【SSO】がある。他にもNASDAQ100【QQQ】の3倍の値動きをする【TQQQ】や、2倍の動きをする【QLD】がある。

それだけではない。株式市場が下落すると上昇する空売り型のETFもあるのだ。S&P500をショートするのが【SH】で、2倍でショートするのが【SDS】、3倍でショートするのが【SPX】と用意されている。

NASDAQ100をショートするのが【PSQ】で、2倍でショートするのが【QID】、3倍でショートするのが【SQQQ】である。ダウをショートする1倍の【DOG】、2倍の【DXD】、3倍の【SDOW】などもある。

世の中の大きな流れを見て「何がどうなる」と予測するのが好きな投資家にとっては、ETFはまさに打ってつけの世界であると見えてこないだろうか。

私自身も「個別銘柄からETFに軸足を移した結果として、ここ数年でこのETFの多彩さに深く興味・関心を持つようになっている」のは冒頭で書いた通りだ。コアは【VTI】に絞るのは変わらないが、サテライト的な動きでは、こうしたETFを短期でうまく使っていきたいと思っている。

今後、この世界を追求していきたいと思っている。

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