経済界は半導体に出遅れたら自分たちは生き残れないという危機感があるので、半導体に対する設備投資はかなり増えている。さらに株式市場でも、半導体セクターをパッケージしたETFに資金が流入してきている。この重要な「半導体セクター」で日本で賭けるにはどうすればいいのか?(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
現代社会においてもっとも重要なセクターのひとつ
半導体セクターは現代社会においてもっとも重要なセクターのひとつとなる。それは、現代文明がまさに半導体なく成り立たないからに他ならない。
かつて1980年代までの日本は半導体で世界トップの国だったのだが、アメリカに叩きつぶされてからはすっかり凋落してしまった。しかし、米中の新冷戦が起きている今、アメリカは知財強奪国家・中国に半導体の覇権を取られないために、なりふり構わず米国内の半導体セクターの防衛に走っている。
中国には半導体規制をかけ、西側の最先端技術が中国に渡らないように大きな網をかけて、さらに中国のEVや半導体には関税を大きく引き上げて、中国政府の補助金で不当なまでにダンピングされた中国製品がアメリカの半導体セクターを破壊しないように手を打った。
そして、アメリカは西側諸国全体に、中国を締め出す方策を取るように助言している。そして、西側の半導体セクターが中国に遅れを取らないように、技術強化するように促している。
たとえば、目立つ動きとしてフランスがなりふり構わずAIに邁進しているのは注目に値する。マクロン大統領は2030年計画を策定し、莫大なインフラ整備、民間投資の促進、海外ハイテク企業の誘致で、挙国一致体制となった。
マイクロソフト、アマゾン等がフランスに160億ドルという莫大な金額を投資することも決定した。今後10年は、半導体とAIで覇権を取った国がリーダー国となる。
フランス政府は、2027年までに100万人にAIスキルトレーニングを提供し、2500社のAIスタートアップを支援する。2030年までに次の世代の人材を育て、激烈なパラダイムシフトに備えようとしている。
日本はどうか。
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グローバルX 半導体関連-日本株式(2644)
日本もまた半導体の復活に動き出しており、政府や民間が半導体セクターに大きな投資を行っている。ただ、日本の政治家の認識が現実のスピード感についていけていない。半導体セクターが日本の産業の命運を決するほど重要なセクターであるという認識が足りていない。
インバウンドなんかやっても日本の産業が成長するわけではないが、政治家はインバウンドに利権があるのか、そういうところばかり力を入れて、半導体セクターには後手後手になってしまっている。
しかし、さすがに経済界は半導体に出遅れたら自分たちは生き残れないという危機感があるので、半導体に対する設備投資はかなり増えている。さらに株式市場でも、半導体セクターをパッケージしたETFに資金が流入してきている。
私が注目している日本株式ETFは『グローバルX 半導体関連-日本株式(2644)』である。このETFは半導体の製造や加工、製造装置、素材など、半導体関連事業全体を扱う「日本企業」のみで構成されているETFとなっている。
グローバルXは、Global X Management Company, Inc.、株式会社大和証券グループ本社、および大和アセットマネジメント株式会社の合弁会社であるのを見てもわかるが、大和証券系が発行しているETFとなっている。
GX半導体日株の組入上位銘柄(2023年10月31日現在)を見ると、以下のようになっている。
レーザーテック(13.31%)
ディスコ(12.43%)
東京エレクトロン(10.8%)
SCREENホールディングス(8.63%)
ルネサスエレクトロニクス(8.02%)
アドバンテスト(7.77%)
ローム(7.73%)
マクニカホールディングス(4.4%)
東京精密(4.26%)
アルバック(3.8%)
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個人投資家でも無理なく半導体セクターに投資できる
組入銘柄は時価総額300億円以上の国内株式が投資対象で、ポートフォリオは30〜40銘柄となっている。
日本の株式の場合、単元はほぼ100株となっているのだが、半導体セクターの株価は1株がかなり高い銘柄がいくつもある。
たとえば、レーザーテック(6920)は現時点で一株42,190円、ディスコ(6146)は53,850円、東京エレクトロン(8035)は35,230円、SCREENホールディングスは15,520円……となっている。
半導体セクター全体を拾いたいと思っても、レーザーテックだけで42,190円の100株だから、最低でも420万円相当を用意しなければならないということになる。これは個人投資家にとっては大きな負担だろう。
しかし、GX半導体日株(2644)だと最小売買単位が1口となっている。現時点で4720円だから、4720円相当でこれらの銘柄を購入できる。これは、個人投資家でも無理なく半導体セクターに投資できる金額でもある。
ETFは株式のように売買できるので、日本の半導体セクターをまとめて投資するにはGX半導体日株(2644)は非常に魅力的な選択肢となるというのがわかるはずだ。
最近、OpenAIがChat-GPT4oを発表したかと思うと、グーグルもすかさずGeminiをバージョンアップさせており、AIの開発競争は激化している。そこに、Metaも、Amazonも、Appleも、Adobeも、みんな食い込んでくる。また、新しいベンチャー企業も多くがAIに照準を合わせている。
生成AI革命は半導体に大きな需要を生み出しており、これらの需要は間違いなくこれからも半導体セクターを潤わせていく。アメリカの半導体セクターの巨大さは凄まじいのだが、日本の半導体セクターにも大きな恩恵があるのは明らかだ。
とすれば、GX半導体日株(2644)を手に入れておくのは悪い選択肢ではない。
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半導体セクターに賭けたい投資家には大きな選択肢
日本の半導体セクターが独特なのは、半導体そのもので勝負するエヌヴィディアやインテルやAMDのような企業が少なくて、半導体を作る装置を開発に特化していることにある。
かつては東芝、日立製作所、NEC、富士通などが半導体事業を手がけていたのだが、これらの企業の存在感はもはやほとんどない。最近やっとラピダスが立ち上がって勝負を賭けているのだが、まだまだ先は見えない状況だ。
しかし、日本企業は半導体製造装置の分野で高いシェアを持っている。この背景には、日本の優れた精密加工技術や素材開発力がある。日本企業が半導体製造装置で高いシェアを持つことは、日本の半導体産業の国際競争力の源泉となっているのだ。
その中心となっているのが、GX半導体日株の組入銘柄なのだ。
レーザーテックの半導体向けの検査・計測装置は半導体製造工程で不可欠な装置である。ディスコは半導体ウェーハの研削・研磨装置や、ウェーハの切断装置(ダイシングソー)で高いシェアを持っている。
東京エレクトロンやSCREENホールディングスは成膜装置、エッチング装置、熱処理装置などで高いシェアを持っている。自動運転やIoTなど多様な分野で利用される半導体ソリューションで欠かせない企業だ。
世界でも有数の重要企業が日本の半導体セクターにあって、それがGX半導体日株(2644)で、かなりの低価格で手に入れることができるのだから、半導体セクターに賭けたい投資家には大きな選択肢である。
もちろん、半導体が供給過多になったり、半導体を巡る世界情勢が変わったら、この業界を巡る評価も変わってくる。つまり、ETF【VTI】のように、未来永劫にわたって買い時であるわけではない。いずれ、どこかで降りなければならないときがくる。
しかし、今の時点では半導体セクターは、賭ける価値のあるセクターであるのは間違いない。AIが引き起こすパラダイムシフトがどれくらい続き、どれくらいの広がりがあり、どれくらいの規模になるのか、よく見つめながら半導体セクターに目を向けていきたい。