「金持ちは敵だ」「金持ちから奪え」「金持ちを殺せ」がいずれ実行される理由

「金持ちは敵だ」「金持ちから奪え」「金持ちを殺せ」がいずれ実行される理由

カネよりも公園で子供たちと遊んでいるのが幸せという人もいるし、浜辺で貝殻や石を拾ったり山で虫を捕ったりするのが幸せという人もいるし、飼っている犬と散歩をしているのが幸せという人もいる。子供と遊んだり、浜辺で貝殻や石を拾ったりするのはカネにならない。しかし、それが幸せという人もいる。彼らは「カネこそすべて」という価値観では生きていない。しかし、弱肉強食の資本主義の中で彼らはこっぴどく嘲笑される。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

金持ちがそれを「見せつける」社会になっている

世界中で経済格差が深刻化しており、この流れは日本にも波及している。

莫大な富を手に入れるのであれば、「ビジネスを成功させて上場して創業者利益を手に入れる」ことが王道ルートであることはすでに多くの成功者が示している通りだ。

これが意味するのは、ビジネスに邁進し、ビジネスを成功させることができる人間とそうでない人間の差は、資産形成において天と地ほどの差になっていくということである。

ビジネスの成功者は上場によって数百億から数千億を一気に手に入れることになるのだが、もともとビジネスに関心がない人間は年間300万円だとか400万円の収入で一生を生きていくことになる。

資産総額は65歳を迎えた時点で2000万円あれば良い方だが、ほとんどはそこに到達することもない。

しかし、それほど巨額のカネがなくても楽しく愉快に暮らせるし、ほとんどの人は別に莫大な資産がなくても困っていない。実のところ、世の中の大半は、カネがなくても平穏に暮らしたいと思っている人で占められている。

今までは、世の中に棲み分けができていて、金持ちは金持ちの世界で排他的な共同体を作り上げて、それは排他的サークルに入れない人たちには見えないものだった。

しかし、いまやインターネットやSNSによって、金持ちがそれを「見せつける」社会になっている。大金持ちは臆面もなくそれをひけひらかして、いかに自分が富を持っているのかを自ら可視化する。

さらに貧困層に向かって上から目線で「カネがない奴は価値がない」とか「カネがない男は終わり」とか「カネを稼げない男は馬鹿」というような煽りや嘲笑を投げつける。そして、そうした言動が「勝ち組だから」と賞賛される社会になっている。

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ビジネス的思考を持った人間の「価値観」

富裕層は富裕層の世界があり、中間層は中間層の世界があり、貧困層は貧困層の世界がある。それぞれ、違う価値観で好きなように生きているのだから、お互いに何も干渉する必要はない。

しかし、インターネットとSNSはそうした世界を可視化させて、お互いを「つなげた」ので、違う価値観が急激に出会い、対立し、衝突することになる。

理想論としては、違う価値観が出会った時は、お互いに相手を認め合ってそれぞれの良さを確認し合うことが最適なのだが、現実は理想論のようになるわけではない。違う価値観はしばしば相手に自分の価値観を押し付け、相手を苛立たせ、そして対立と衝突を生み出すことになる。

SNSは「違う国」「違う人種」「違う宗教」「違うイデオロギー」の人間をことごとく「つなげた」のだが、それによって生まれたのは、相手に対する嫌悪や不信感や憎悪という感情だった。

理解し合うのではなく、反撥し合うのである。互いに違う価値観を罵詈雑言によって攻撃する世界になったのだ。

この対立は「金持ち」と「その他」にも顕著に表れるようになっている。資本主義の中でビジネス的に成功した金持ちにとって、月給14万で地道に働いている人など「終わっている」という価値観しかない。

「カネこそすべて」なのだから、カネがない人間は「終わっている」としか思えない。それがビジネス的思考を持った人間の「価値観」である。しかし、すべての人は「カネこそすべて」という価値観を持っているわけでは断じてない。

カネよりも公園で子供たちと遊んでいるのが幸せという人もいるし、浜辺で貝殻や石を拾ったり山で虫を捕ったりするのが幸せという人もいるし、飼っている犬と散歩をしているのが幸せという人もいる。

子供と遊んだり、浜辺で貝殻や石を拾ったりするのはカネにならない。しかし、それが幸せという人もいる。彼らは「カネこそすべて」という価値観では生きていない。しかし、弱肉強食の資本主義の中で彼らはこっぴどく嘲笑される。

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底知れぬフラストレーションが渦巻く

原始時代は強靭な肉体を持った人間が有利な世界だったので、遺伝的に強靭な肉体を持った人間が褒めそやされて、逆に「強靭な肉体を持たない人間は価値がない」という話になっていただろう。

中世のヨーロッパでは、いかに神を深く信奉できるのかが重要だったので、「信仰を持たない人間は価値がない」という話になっていただろう。現代は資本主義なので、「カネを持たない人間は価値がない」という話になっている。

「カネがモノを言う世界なのだから、カネを稼げばいいではないか」という成功者特有の考え方は資本主義に最適化された考え方であり生き方である。しかし、その価値観は全員に共有されるわけではないし、しかもその価値観を身に付けても誰もが成功者になるわけではない。

しかし、経済的な成功者のみが極度に恩恵を受けるようになり、傲慢になり、「カネがない人間は終わっている」みたいな言い方をするようになると、そこから生まれてくるのは価値観が違う者同士の激しい嫌悪と対立と憎悪である。

現在、資本主義はますます苛烈になっており、勝者総取りの世界になろうとしている。成功者は莫大な富を手に入れるのだが、現代の資本主義に最適化されない人間はますます困窮していくことになるのだ。

その結果、現代の「負け組」に追いやられた人たちの中から、やがて底知れぬフラストレーションが渦巻くようになり、それがひとつの憎悪として形成され、その憎悪は極度に成功した人間たちに向かっていく。

憎悪の行く先には何があるのか。言うまでもない。「破壊してやる」「殺してやる」という感情である。

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「殺してやる」という強い意志となって結実する

アメリカでは格差が広がるだけ広がっているのだが、この格差が「社会主義の支持」という形になって現れているのが現代の動きだ。(ダークネス:2020年。社会の底辺で渦巻いている巨大な不満が爆発するのは時間の問題だ

アメリカ人はまだ理性を保っているので「富の再配分を」「富裕層にもっと税金を」と訴えているのだが、もしこの社会主義運動が成果を見せず、富の再配分は為されず、金持ちと貧困層の格差がどんどん広がっていく社会になると、最終的にはどうなるのかと想像したことがあるだろうか。

最終的には貧困層が激しい憎悪を「富をひけひらかしている金持ち」に持つようになり、物理的に襲撃の対象になっていく。

南米はアメリカよりもさらに格差が極度化された世界なのだが、南米の金持ちは貧困層に襲撃されないように家のまわりを高い塀と高圧電流で守り、さらに武装したガードマンを付け、子供たちも誘拐されないようにボディーガードを付ける。

金持ちは襲撃の対象とされているので必死で身を守っているのである。うかうかしていると「殺される」のである。

ここに弱肉強食の資本主義の行き着く未来が見える。

金持ちが自らの富をSNSで得意げになって見せつけ、上から目線で「カネがない奴は価値がない」とか「カネがない男は終わり」とか「カネを稼げない男は馬鹿」というような煽りや嘲笑を投げつけることによって憎悪が培養され、やがて「ヤツらを殺してやる」という強い意志となって結実することになる。

「金持ちをひとり残らず血祭りに上げて今の社会をひっくり返してやる」という新しいイデオロギーが力を持つようになると、それは革命(レボリューション)運動へと突き進むこともあり得る。

弱肉強食の資本主義は暴走しているので、どこかの時点で99%の持たざる層は、1%の金持ちを「敵」と見なして血祭りに上げる行動を起こすことになるだろう。「金持ちは敵だ」「金持ちから奪え」「金持ちを殺せ」が合言葉になって実行される。

日本人はまだ「金持ちを殺してやる」という憎悪を持つ人は皆無か、いても目立たない。しかし、いずれはそうした憎悪を持つ人間が忽然と表側に現れて、上から目線で何か言っている金持ちから殺害対象にしていくことになる。

憎悪はすでに社会の底辺で育っているというのは確信できる。底辺から誰かが現れて、必ず事件が起きる。

今のままで推移すると、そうなるのは必然だ。

犯罪の世間学: なぜ日本では略奪も暴動もおきないのか(佐藤 直樹)。日本独特の秩序で法のルール以前に私たちを縛る「世間」が、その排他性を強めて犯罪を生み出している。1990年代以降の犯罪の厳罰化、2000年代以降の殺害事件や脅迫事件を「世間」の視点から読み解き、息苦しさや閉塞感が増す日本の「空気」に迫る時代診断の書。

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