『出ていってなどいないのに、我が家ではないかのように感じる。祖国を離れてなどいないのに祖国があなたを捨てたかのように感じる。自分の国にいながらにして、異邦人のように感じる』……。これは、多文化共生で苦しむフランスの白人たちの「心の叫び」なのである。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
フランス大統領選挙に嵐を巻き起こしているエリック・ゼムール
今、フランスが激動している。フランスの反グローバル化・反多文化共生を謳う強硬右派の論客であるエリック・ゼムール氏が2022年の大統領選挙に立候補をして、ゼムール氏を支持する国民と徹底的に反対する極左(左翼・リベラル・フェミニスト)とマスコミ連合が激しい闘争を繰り広げているのである。
エリック・ゼムールは徹底的な「反EU」であり「反移民」である。そのため、マスコミからは連日のように「差別主義者」「排外主義者」と罵られ、挙げ句の果てには「ナチス宣伝相ゲッペルスにそっくりだ、だから危険だ」という奇妙な印象操作さえも行われて攻撃されている。
一方で、今回の大統領選挙では国民連合(旧・国民戦線)のマリーヌ・ルペン氏も立つ可能性もあって、フランスはいよいよ強硬右派が次々とメインストリームに押し上げられるステージに入っている。
フランスの大統領選挙に嵐を巻き起こしているエリック・ゼムールが大統領になったら、フランスの歴代為政者が続けてきた多文化共生の姿勢が根底から覆されることになるわけで、エスタブリッシュメントたちの抵抗は凄まじいものがある。
しかし、「移民は帰れ」「移民は出て行け」というフランス国民の声は日増しに高まっており、エリック・ゼムールはそういった国民の声をすくい取って勢力を拡大して止まらない。
マスコミは、マリーヌ・ルペンの時と同じようにエリック・ゼムールをも「極右」と叩いて回っているが、国民は誰も氏を極右とは思っていない。
フランス文化を守るために「反EU・反移民」を掲げるエリック・ゼムールは愛国者であると認識しているのである。フランス人の国民の声が、いよいよ無視できないものになりつつある。
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約200万人もの移民がフランス国籍を取っている
フランスも他のEU諸国と同様に、多くのイスラム系移民を受け入れた国家だ。何しろ、フランス人とは「自由・平等・博愛」の精神を信じる国民であり、それを建国の理念に掲げた国家でもある。
そして、フランス国内で多種多様な文化や民族が共存し、共に発展できるようにしたいという「多文化共生」が現代社会の理想とされた。
この思想に則って実際に移民をたくさん入れ、2020年の段階で約852万4876人もの移民が国内にいる。宗教も人種も問わなかったので、イスラム系移民も大量にフランスに根付いていった。
しかし、この「多文化共生」はフランス人のアイデンティティーを脅かし続けているのも事実だ。何しろ、イスラム系移民は誰もフランスの文化など何とも思っていない。
彼らは心からイスラム文化を尊重しており、フランス文化には馴染まない。女性もブルカを取ろうとしない。フランスで、イスラム主義を貫くのである。食事もそうだ。フランス料理などまったく眼中になく、ハラール(イスラムの戒律に則った料理)しか食べない。
決して同化しようとせず、フランス国内にイスラム寺院を作って、家族や親戚を呼び寄せ、フランス文化を「駆逐」する勢いになっている。エリック・ゼムールはこの状態をこのように述べている。
『出ていってなどいないのに、我が家ではないかのように感じる。祖国を離れてなどいないのに祖国があなたを捨てたかのように感じる。自分の国にいながらにして、異邦人のように感じる』
https://www.youtube.com/watch?v=LEj-oCXIGLI
これは、多文化共生で苦しむフランスの白人たちの心の叫びなのだ。フランス国内で「民族間対立」が生まれ、非常に激しい憎悪が生まれている。
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フランス人とイスラム教徒が、互いに憎悪を掻き立てる
フランス国内では、特にイスラム系移民に対する住民と軋轢はもはや避けることができないレベルにまで達している。
たとえば、フランスではブルカ禁止令が可決された時、イスラム原理主義はこれを激しく批判し「フランス人は我々の文化を禁止するな、イスラムを差別するな、フランス人は差別主義者だ」と激しく激怒した。
そして、移民たちは「フランスはイスラム文化を尊重しろ」と命令した。ブルカ禁止令を可決したのはサルコジ元大統領だったが、イスラム系住民たちはサルコジ元大統領を糾弾し、サルコジ大統領の妻を「売春婦」と罵った。
これに激怒したのがフランスの右派グループである。彼らは逆に「移民はフランス文化を尊重しろ」と言い返し、移民排斥の極右グループとイスラム教徒の間で、暴力沙汰が起きて互いに殴り合い、殺し合うところにまで発展した。
こうした中で、フランスでは2015年1月に風刺週刊紙「シャルリエブド」が襲撃されて17人が犠牲になるというテロ事件が起きた。さらにこの事件の最中、アメディ・クリバリという男が同時テロを起こしてスーパーマーケットを襲撃し、人質を取って立てこもった事件も起きた。
この犯人はパリ南部のグリニー市グランドボルヌ地区に住んでいたのだが、このグランドボルヌ地区は移民ゲットーのような様相になっている場所で、住民の40%が失業者という悲惨な状況にある場所だった。
フランスもまた多文化共生だとか言って大量に移民を受け入れて、その移民を使い捨てにしていたのだが、この使い捨てされた移民が貧困から這い上がれない社会構造の中で「フランス」そのものに敵意と憎悪を抱いて、テロをどんどん仕掛けるようになっていった。
こうした状況の中で、フランス人もまたイスラム系住民に敵意を抱くようになり、マリーヌ・ルペン氏やエリック・ゼムール氏のような強硬右派を支持するようになっていったのである。
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移民問題を巡る問題で、激しい暴力沙汰が起きる
多文化共生など、極左(左翼・リベラル・フェミニスト)たちの現実無視の絵空事でしかない。まったく違う文化・宗教・人種を一緒にしたら共生するのではなくて分離する。そして、互いに相手を憎み、衝突し、殺し合うことになる。
多文化共生は殺し合いに至る道なのだ。
「自由・平等・博愛」を標榜するフランスもその例に漏れなかった。フランスは多文化共生で憎悪のスパイラルに落ちて国が混乱してしまっている。いずれにせよ、白人たちと移民はどんどん対立構造に入って、今後も敵対視が強化されていく動きになってきている。
そんな中で、エリック・ゼムール氏が大統領選挙に立って、社会を変えようとしている。どのように変えるのか。グローバル化と多文化共生をフランスから一掃して、再び昔のフランスに戻すことで変えようとしているのだ。
「今はフランスを改革する時ではなく、フランスを救う時だ」
https://www.youtube.com/watch?v=LEj-oCXIGLI
エリック・ゼムールはこのように力強く説く。
「我々の子供や孫たちが野蛮な目に遭わないために、娘たちがヒジャブで覆いかぶされないように、息子たちが服従させられないように、自分たちが知っているフランス、そして祖先が伝えてくれたフランスを受け継ぐために、我々の生き方、伝統、言語を守るために」、フランスを守ろうと述べている。
https://www.youtube.com/watch?v=LEj-oCXIGLI
しかしながら、エリック・ゼムールがやろうとしている「フランスを元に戻す作業」は、もう手遅れかもしれないと思えるような難しい仕事になる。
多文化共生は、失敗だったと言っても簡単に後戻りすることはできない。移民を受け入れ、彼らに国籍を与えたら、「この政策は失敗だったから帰れ」と言っても、彼らは絶対に帰らないからである。
移民を無理やり排斥しようとすると、それがさらなる軋轢と抵抗につながって、治安の悪化と国内情勢の不安定化に拍車をかける。失業問題も、移民問題も、宗教問題も、すべてそこに絡まっていく。
「我々は置き換えられない。我々を泥の中に引きずりこもうとする冷徹な怪物に立ち向かわなければならない」
私は、エリック・ゼムールが言っているかつてのフランスが大好きだ。本当の意味で国を愛しているエリック・ゼムールが勝利することを私は願っている。