政府は膨れ上がる社会保障費に窮し、もうこれ以上は年金で高齢者を支えることができないと考えるようになって、「老後までに2000万円貯めろ」とか「NISA(新NISA)やiDeCoを用意するから自分で投資して老後は自分で何とかしろ」という方向に切り替えた。
アメリカの金融業界も、日本国民が持つ金融資産2100兆円にアクセスしたい。日本国民が保有する貯金を金融市場に持ってきてもらうのは大歓迎だ。さらに、日銀も日本の株式を大量に買い支えてきたので、足抜けするには日本国民に投資してもらわなければならない。
政府も、アメリカの金融業界も、日銀も、みんなそれぞれの理由で日本国民に投資してほしい動機があって投資を煽るようになっている。だから、それに乗せられた国民が、たいして投資の知識もない中で株式市場にやってきている。
日本国民も、すでに物価上昇や政府の無策に辟易としている。将来の年金も、どうなるのかわからないと危惧して「やりたくないけれども、じり貧から抜け出すにはやるしかない」と考えている。
そうしたこともあって、2024年2月には日経平均株価が1989年の大納会でつけた史上最高値の3万8915円を更新し、3月4日にはとうとう4万円を超えるという歴史的な節目を迎えたのだった。
ところが、である。
それから1か月も経たずして、日経平均株価はずるずると下がっていってしまった。いったん下がりはじめると雪崩のように株価が崩れていき、4月19日にはとうとう3万7000円も割り込んだ。
4万1000円が3万7000円近くまで下がったので、率にすると約10%下がったことになる。
まったく何の知識もないまま株式市場に乗り込み、「株が上がっている」というだけで日経225やTOPIXなどを買った投資初心者は蒼白になって、長期投資が前提のはずの新NISAで早々と株を売って、SNSなどでは「損切り民」と揶揄されているのだった。
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