1971年〜1974年生まれは、自分たちは過酷な時代に生きる世代だと認識せよ

1971年〜1974年生まれは、自分たちは過酷な時代に生きる世代だと認識せよ

1971年から1974年生まれを中心に、その前後数年の間に生まれた世代は「団塊ジュニア世代」と呼ばれている。この団塊ジュニア世代が成人になったのは1991年から1994年である。

この時期は日本にとってどんな時期だったのか。

バブル崩壊が1990年。それが鮮明化して不動産の資産下落で日本企業の多くが莫大な負債を抱えて苦しむようになり、不況が鮮明化するようになっていったのが1994年。

この時代の企業はバブル崩壊の直撃を受けて新入社員を採用する余裕がなく、時代は「就職氷河期」へと突入していた。高校や大学を卒業しても仕事が見つからない。そのような時代が1990年代だった。

そう考えるとバブル崩壊の最中に仕事を探さなければならなかった「団塊ジュニア世代」は、日本のバブル崩壊で大きな悪影響を受けた世代であったと言える。

このバブル崩壊では政治も混乱していた。

1993年8月に成立した細川護熙内閣は8ヶ月ほどで崩壊、1994年4月に成立した羽田孜内閣はたった2ヶ月で崩壊、1994年6月に成立した村山富市内閣は1年半持ったが日本を混乱させたまま何もできずに退陣するという有様だった。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

格差拡大は、2000年代に入るとより鮮明になった

「団塊ジュニア世代」は日本が経済的にも政治的にも阿鼻叫喚であった時代に世の中に出て、いきなり辛酸を嘗める人生に放り込まれた不運の世代でもある。

非正規雇用が広がっていったのは1990年代からだが、団塊ジュニア世代から正社員になれない人が急増していったのである。言うまでもなく非正規雇用は低賃金で使い捨ての要員だ。

この頃から日本の底辺部では次第に生活格差が広がっていくことになるのだが、それは非正規雇用での採用が増えていったからでもある。

1999年には労働者派遣法が改悪されているのだが、ここで派遣労働が原則自由化されたことによって、日本に格差が定着するのが決定的になった。

この格差拡大の状況は2000年代に入るとより鮮明になる。

2001年に登場した小泉純一郎内閣は「聖域なき構造改革」「不良債権処理」を推し進めたのだが、この中身は何だったのかというと、不良債権を抱えた企業を根こそぎ叩き潰すというものだった。

そして2003年には「改正産業活力再生特別措置法」を施行するのだが、これは企業がリストラすればするほど減税するというものだったのだ。

これで団塊ジュニア世代の命運は決まった。彼らは次々とリストラされて雇用されるとしても非正規雇用だけしかなくなったのである。

「勝ち組、負け組」という言葉が流行するようになった。非正規雇用でしか雇われない若者たちは「負け組」と蔑まれるようになり、彼らの窮状を見た中高年や高齢者は「自己責任だ。しっかりしろ」と罵った。

その中高年も、押し寄せるグローバル化の波と少子高齢化による社会保障費の増大で自分たちも首が締まることになるのだが、2000年代はまだそのようなことになるとは気づいていなかった。

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問題が次々と発生するということを知らぬふり?

バブル崩壊。就職氷河期。労働者派遣法。不良債権処理。改正産業活力再生特別措置法。

1990年代から続くこうした一連の流れが日本に格差と貧困をもたらして、これを1971年から1974年生まれの団塊ジュニア世代がまともに食らった。

日本にとっても不運だったのは、これが日本の少子高齢化を悪化させ、加速させることにもつながったことだ。

団塊ジュニア世代の親たちは「団塊の世代」と呼ぶ。この団塊の世代はなぜ「団塊」なのかというと、第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた世代で、戦後日本において「最も人口が多い世代」だからだ。

この「最も人口が多い世代」が生んだ子供たちが団塊ジュニア世代であり、日本の人口動態においては二番目に人口が多い層である。

本来であれば、この団塊ジュニア世代が2000年代に入ってから第三次ベビーブームを起こして少子高齢化は緩和されるはずだったのだが、そうならなかった。

非正規雇用で終身雇用から逸脱し、さらに低賃金を余儀なくされた彼らにとっては、子供を持つどころか、家庭を持つということすらも「大きなリスク」と感じるようになってしまったからである。

日本社会は彼らの窮状を見て、日本の将来に何が起きるのかという想像力を働かせなかった。

彼らが窮状に落ちたまま放置していると、能力ある働き手の喪失、格差の拡大、貧困の増大、少子高齢化の加速、イノベーションの喪失、内需の減少、社会保障費の増大、税金の引き上げ……という問題が次々と発生するということを知らぬふりをした。

今、日本で起きている問題は「こうなる」と分かっていた問題なのである。

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少子高齢化特有の問題のすべてをこの世代がかぶる

1971年から1974年生まれと言えば、すでに44歳から47歳になっている。その前後も広範囲に含めるとしたら、今の40代が団塊ジュニア世代であると言える。

この世代は競争が激しく、厳しい社会環境の中で、必死で生き抜いてきた世代でもある。彼らはもう「若者」ではない。だから彼らが貧困に落ちていたとしても社会からの救済はない。

「大人なのだから、自分の身は自分で何とかしろ」と言われる年代である。

しかし、20代の就職氷河期で就職がうまくいかなかったり、2003年からの改正産業活力再生特別措置法で政府主導のリストラに巻き込まれたりして非正規雇用を余儀なくされてしまった彼らが、40代になって何かできることがあるのか。

客観的に見ると、なかなか難しいというのが現状だ。

人間は40代に入ると無理が効かなくなる上に、病気やケガをしやすくなる。その上に、40代で非正規雇用の人間を今さら正社員で雇おうという企業もほとんどない。

今後も雇用に関しては、グローバル化による途上国の低賃金層やAI(人工知能)やインターネットによる極度の効率化で減っていく一方だ。突然、状況が好転することはない。

そのため、時代に翻弄されて格差と貧困の中に叩き落とされた不幸な団塊ジュニア世代の可能性は「ほぼ閉ざされた」と言っても過言ではない残酷な状況の中にある。

この彼らの不幸は、実はこれからもっと過酷になっていく。

なぜなら、少子高齢化によって社会保障費が増大していくことになるので、「年金の削減」「年金受給年齢の引き上げ」「医療費削減」「増税」と言った少子高齢化特有の問題のすべてをこの世代がまともにかぶることになるからだ。

この世代は、よく耐えていると私は思っている。(written by 鈴木傾城)

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団塊ジュニア世代は「年金の削減」「年金受給年齢の引き上げ」「医療費削減」「増税」と言った少子高齢化特有の問題のすべてをまともにかぶることになる。この世代は、よく耐えていると私は思っている。

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