日本の未来のため、恐れずにキャッシュレスの波に飛び込め

日本の未来のため、恐れずにキャッシュレスの波に飛び込め
ハーバード大学のケネス・ロゴフ教授が「一万円札の廃止」を訴えて物議を醸したのは2017年の夏だった。その理由として、マネーロンダリング・脱税・収賄の抑止やマイナス金利政策の効果を説いた。

この「一万円廃止論」は日本国内で激しい反発を引き起こし、「なぜこんな使い勝手の良い一万円を廃止しなければならないのか」という声がかなり目立った。

これについて産経新聞は、2017年8月28日に『1万円札が消える!米ハーバード大教授がぶち上げた「1万円札廃止論」のナゼ』という記事を掲載している。

そして、「日本で現金需要が高い背景」として、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストの次の解説を掲載している。なぜ、日本は現金需要が高いのか。

(1)現金決済を好む国民性
(2)低金利で銀行預金を保有するインセンティブが低下
(3)現金を持ち運ぶことの不安が比較的小さい
(4)どの地域でも現金が不足する事態が生じにくい
(5)紙幣のクリーン度が高い

この5つの項目をよくよく考えると、興味深い日本の姿が浮かび上がって来る。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

安全な日本と、国外の想像を絶する使い勝手の悪さ

日本は「安全・安心・清潔」の国だが、それが紙幣にも行き届いている。

「現金を持ち運ぶことの不安が比較的小さい」というのは、多額の現金を持ち歩いていても強盗に襲われる危険も少なければ、盗まれる危険も少ないということを意味している。

日本を一歩出ればそうはいかない。荷物も財布も油断しているといつでも盗まれるし、地域を間違えば治安の悪い場所に入り込んで金も生命も危うくなる。

「どの地域でも現金が不足する事態が生じにくい」というのは、日本では銀行もATMも普通に機能していて、きちんとメンテナンスされているということだ。

国外ではATMが本当に使えるのかどうかを心配しなければならないし、カードを飲み込んで死んでしまうATMも珍しくない。そして、そもそも銀行もATMもないような地域はザラにある。現金が手に入らないのである。

「紙幣のクリーン度が高い」というのも日本人の高度な民度と気質が表れている証でもある。日本では極度に汚れてボロ雑巾のようになった紙幣はなかなか見ない。

これは国民がなるべく紙幣をきれいに丁寧に扱い、日銀も汚れたり破れたり古くなったりした紙幣を常に新しいものに入れ替えているからだ。

国外はそうではない。東南アジアでもインドでも、あまりにもすり切れて、よく見ないとそれが紙幣なのかどうかも分からないようなものが流通している。

そうしたボロ雑巾化した妙な臭いのする紙幣を使おうとすると、それを見た店が受け取りを拒絶することもある。みんな、古い紙幣を他人に押しつけ合っているのだ。

さらに欧米ではコカインが流通しているのだが、鼻から吸うのに紙幣を丸めて吸引具代わりに使い、たとえば米ドル紙幣の90%はコカインの痕跡が付いていると報告された。

それだけではない。国外では偽札や隣国の似たような紙幣まで流通して現金を使った騙しが横行している。持っている紙幣が本物なのかどうか、そこから疑わなければならないのが国外の事情だ。

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そこに安住してしまっては日本には未来がない

要するに国外では「紙幣を使う」というのは非常なリスクであり、使い勝手が悪い存在だったのだ。日本だけが「安全・安心・清潔」の概念が国民から政府まで行き届いていて、紙幣が安心して使える環境にある。

欧米でクレジットカードが普及して「脱現金」が普通に受け入れられたのも、中国やインドが現金取引を排して電子マネーに移行しようと国を挙げて推進しているのも、裏には「紙幣がリスク」という事情があったからである。

日本人が現金決済を好んでいるのは、まさに日本という国の民度の高さが紙幣に対する安心感を生み出しているからだ。それは、日本社会がきちんと機能している証拠だ。

この点に関しては、日本人は自分たちの民度の高さをもっと強調して誇ってもいい。日本は現金を最も正しく、丁寧に、清潔に扱っている民族だったのだ。

しかし、ここで間違ってはいけない重要な点がある。

日本は紙幣の使い勝手の良い国だが、「そこに安住してしまっては日本には未来がない」という点だ。

なぜなら、時代は大きく変転しており、金融の分野の中心は紙幣というアナログから電子マネーというデジタルに大きく移行しているからだ。

この分野では今、フィンテックからブロックチェーンまで、世界を飲み込む巨大で重要なイノベーションが起きている。このイノベーションによって、社会はより一段上の合理化と効率化に向かっていく。

「紙幣を大切に使う社会」にこだわっていると、日本は金融分野におけるイノベーションに取り残され、日本社会は非効率な運営となる。

スマートフォンの分野ではアップルとグーグルにすべてを持っていかれ、インターネットのショッピングの分野ではアマゾンにすべてを持っていかれたように、マネーもまた外国の企業が制することになる。

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このままでは、個人も企業も国も時代遅れと化す

日本社会をより効率化し、より合理化し、次世代にも通用する高度な社会に作り替えるためには、「次の時代を獲りにいく」という前のめりの姿勢が日本人に必要だ。

「紙幣が使い勝手が良いから」とそれにこだわってしまうと、日本という国だけがイノベーションに置いていかれ、非効率な国として世界の潮流から大きく遅れてしまう。

現代は資本主義の世界なのに、金融の分野で出遅れることは凄まじく危険で致命的なことであるのを、日本人はもっと強く明確に自覚すべきだ。

日本人がしなければならないのは、ケネス・ロゴフ教授の「一万円札の廃止」に反発することではない。日本という国が次の時代の大きな潮流で生き残れるために、むしろ率先して「脱現金・脱紙幣」を進めていくことである。

日本を次の時代にも通用する国にしなければならない。次の時代の金融でもリードできる国になっていなければならない。ハイテクの分野で取り残されつつある日本を、ここで私たちは救わなければならない。日本を後進国にしてはならない。

日本を巨大な金融イノベーションの中で勝てる国にするためにはどうするのか。

私たち個人が率先してやらなければならないことがある。それが「キャッシュレス」である。迫り来る巨大イノベーションで日本人や日本企業が出遅れないためには、個人がまず動かなければならないのだ。

私たちひとりひとりが「キャッシュレス(脱現金)」を行い、日本社会がキャッシュレスで回るように作り替えていき、不備な点や不便な点に改善というイノベーションを起こさなければならない。

スーパーやコンビニで現金払いなどしてはいけない。買い物でもクレジットカードやデビットカードを使い、積極的にキャッシュレスに向かうべきだ。

そうすることによって支払いが迅速化し、支出もスマートフォンやPCで一元管理され、ネットもリアルも買い物がより効率化する。そして、紙幣というコストの削減によって、日本企業のあり方も変わり、金融イノベーションの競争力がつく。

「何でもかんでも最先端にしてどうするのか?」などと時代錯誤なことを言っていてはいけない。

そう言って日本人の経営者や管理者はPCを使えずにハイテク分野で敗北し、インターネットに乗り遅れて出版業界も新聞社もまとめて凋落し、テレビ局も時代遅れと化していき、家電メーカーも古臭い折り畳み携帯電話を作り続けて凋落していったのではなかったか。

マネーも紙幣というアナログからデジタルに移行するのは100%確実なのだから、個人個人が一刻も早くキャッシュレスに乗れないと、個人も企業も国もまとめて時代遅れと化して凋落の元凶と化す。

次の日本の未来のために、恐れずにキャッシュレスの波に飛び込んで欲しい。現金を使わない生活をスタートし、不便なところを「改善しろ」と突き上げるのが日本の未来になるということだ。どんどん、やって欲しい。(written by 鈴木傾城)

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紙幣の時代は終わっていく。次の日本の未来のために、恐れずにキャッシュレスの波に飛び込んで欲しい。現金を使わない生活をスタートし、不便なところを「改善しろ」と突き上げるのが日本の未来になる。

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