政治の無為無策は昨日・今日の話ではない。30年もずっと続いていることの絶望

政治の無為無策は昨日・今日の話ではない。30年もずっと続いていることの絶望

政治の無為無策は昨日・今日の話ではない。いろんな識者が解決策を出しても政府は何もしない。無策が30年もずっと続いているのである。30年も日本を成長気運に乗せる能力のない政治家がこれからも政治を担うのであれば、今後も日本は厳しそうだというのがわかるはずだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

「良い仕事」から閉ざされた約280万人もの子供たち

物価上昇による景気の悪化は続いている。低所得層の貧困も深刻化した。厚生労働省『生活保護の被保護者調査(令和5年5月分概数)』によると、生活保護を受ける世帯数は164万8101世帯で前年同月比で0.5%の増加となっている。

一方、保護申請数は2万2,680件となり、こちらは11.4%増と大きく増えていた。物価高が深刻化したのは2022年からだが、この年の生活保護申請件数は23万6935件で、3年連続の増加でもあった。

物価高ともなると、年金だけで生活してる高齢層が大きなダメージを受けるのだが、統計データはまさにそれを示している。その結果として、何が起きているのかと言うと、高齢層の労働者増加だ。

日本政府は「一億総活躍時代」という美辞麗句で高齢層が働くことを賛美しているのだが、これは要するに「カネのない高齢者は死ぬまで働け」と言っているのも同然であり、現実は「活躍」とか言うようなきれいごとではない。

高齢者以外も日本政府による増税路線や社会保険料の引き上げなどで国民負担率が47.5%でほぼ5割近い水準になっており、生活困窮がどんどん広がっている。

そんな中で、子供のいる世帯数は「2022年(令和4年)国民生活基礎調査」の結果では初の1000万割れの991万7000世帯となって、少子化にまったく歯止めがかかっていない側面もあらわになってきた。

非正規雇用が常態化するようになってから若い世帯は将来が見通せなくなってしまい、それによって結婚が減り、結果として子供の数も減っている。岸田政権は異次元の少子化対策とか虚しい言葉をぶち上げたのだが、その異次元は何かと言うと「ブライダル業界に補助金を出す」みたいな話で失笑を買っている。

増税と社会保険料の引き上げとムダ遣いしかできない今の無能な日本政府に、少子高齢化を解決するのは不可能なのかもしれない。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

1500人が起業したら、その中の1人しか成功しない

日本の社会では、1980年代後半から非正規雇用での就労者が拡大し、2000年には本格的かつ広範囲に取り込まれていくようになった。これは企業にとって非常に便利な仕組みだった。

「出世させる必要がない」
「景気が悪いとリストラできる」
「壊れたら別の人間に入れ替えられる」

日本企業の重荷になっていた終身雇用と年功序列が外せるのだから、これほど企業にとってコスト削減になるものはない。だから、今やこの非正規雇用が主流になっている。しかし、これは日本人の人生設計を不安定にするものだ。

誰もが正社員で入社したいという気持ちがあるのだが、どう探しても正社員の職が見つからず非正規雇用になってしまう。そのため、2000年以後は多くの若年層が貧困層に転がり落ちた。

労働条件が格段に悪くなっており、それが日本人の貧困層を拡大させているのである。

一方で、サラリーマンに見切りをつけて起業した人間も地獄を見ていた。成功した実業家は、自分が成功したので人に何かを語るときは、かならず「成功したい? 金持ちになりたい? 這い上がりたい? ならば起業せよ」と述べる。

しかし、起業が正しい解答なのかどうかは、その人のビジネスマンとしての資質と、運と、資金繰りがうまくいくかどうかにかかっている。多くの場合、資質と運と資金繰りは揃っていないことの方が多い。

「起業バカ」(光文社)の著者でもある渡部仁氏は、年間に約18万人が起業し、1年位内に起業を目指している人が60万人から70万人いるというデータを出している。しかし、この中で実際に起業に成功したのは、1500人に1人であったと述べる。

【ここでしか読めない!】『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』のバックナンバーの購入はこちらから。

1500人が起業したら、その中の1人しか成功しない

1500人が起業したら、その中の1人しか成功しない。なぜか。原因はひとつではなく、多くの要因が複雑に絡み合っている。たとえば以下のものである。

「ビジネスの見込み違い、起業費用の見込み違い」
「共同設立者の裏切り、約束の不履行、意見対立」
「大企業のベンチャー潰し」
「下請けでの奴隷的契約」
「連鎖倒産、契約の不意の打ち切り」
「フランチャイズ詐欺」
「金融機関の貸し渋り、出資拒否」
「資金繰り地獄、自転車操業」
「身ぐるみ剥がされる個人保証」
「ビジネス環境の急速な変化」

起業するには金がかかり、人間関係に依存する。だから、この2つの問題が常にトラブルを引き起こす。その両方が起業者を追い詰めていく。

このような状況の中で、なんとか起業しても10年後に生き残れる会社はわずか5%しかない。ことごとくは潰されていく。一時期は良かったとしてもそれは続かない。逆に悪いことの方が長く続く。

起業に多額の資金を投じたり、借金をしていたりすると、それが失敗した瞬間に、貧困層に転がり堕ちる。なおさら状況は厳しくなっている。新しい事業だけでなく、老舗の事業でさえも追い込まれているのが今の時代である。

帝国データバンクの全国企業倒産集計2023年上半期報によると、企業倒産(負債1000万円以上の法的整理が対象)は4006件となっており、「5年ぶり4000件超え」と発表されている。

『不況型倒産』の合計が3197件なので、いかに日本企業を取り巻く環境が厳しくなっているのかが見て取れる。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

政治が機能していないことに日本の絶望がある

雇われていても、じり貧になり貧困層に落ちる。起業しても1500分の1の確率でしか成功しない。今、私たちが生きているのは、高度成長期の右肩上がりの社会ではない。何をやっても貧困に転がり堕ちる地獄のような社会だった。

重要なのは「これからの日本に希望があるのか」という点である。

日本は非正規雇用の割合が増え、少子高齢化が放置されている上に、政府は経団連の提言を受け入れ、「隠れた移民政策」を行っている。少子高齢化は内需が消えていくことを意味している。さらに「隠れた移民政策」では賃金が低下することを意味している。

さらに高齢者が「安い賃金でも」と労働市場に入り込んでいくわけで、これもまた賃金の低下を招く。この流れが続くと、結局は一般の労働者も賃金引き下げを飲まざるを得ない。

まして、これから人工知能(AI)によるイノベーションが進んでいくと、ますます企業は労働者を雇わなくなってしまう。いろんな意味で、日本人は厳しい社会に暮らしているというのがわかるはずだ。

こうした状況を打破するためには、政治主導で高い経済成長を取り戻さなければならない。年間3%、できれば年間4%くらいのGDP成長率が継続できれば、日本の社会問題の多くのものは改善されるはずだ。

しかし、その政治がまったく機能していないことに日本の絶望がある。政治の無為無策は昨日・今日の話ではない。30年もずっと続いているのである。いろんな識者が解決策を出しても政府は何もしない。

30年も日本を成長気運に乗せる能力のない政治家がこれからも政治を担うのであれば、今後も日本は厳しそうだというのがわかるはずだ。もう日本はとっくに時間切れなのかもしれない。

亡国トラップ─多文化共生─
『亡国トラップ─多文化共生─ 隠れ移民政策が引き起こす地獄の未来(鈴木 傾城)』

鈴木傾城のDarknessメルマガ編

CTA-IMAGE 有料メルマガ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」では、投資・経済・金融の話をより深く追求して書いています。弱肉強食の資本主義の中で、自分で自分を助けるための手法を考えていきたい方、鈴木傾城の文章を継続的に触れたい方は、どうぞご登録ください。

一般カテゴリの最新記事