社会は経済格差で分断し、いずれ社会が破壊されるほどの事件が引き起こされる?

社会は経済格差で分断し、いずれ社会が破壊されるほどの事件が引き起こされる?

社会は経済格差で分断する。いずれ資本主義社会で何も持たない集団(グループ)が、成功者を吊し上げて処刑するような事件が発生しても私は驚かない。そのときは、日本の今の社会システムが破壊されるほどのインパクトがある事件が引き起こされるだろう。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

日本社会は分断していると言ってもいいような様相に

すでに日本社会は分断していると言ってもいいような様相になっている。成功者はどこまでも所得と資産を膨らませていき、低所得層はどこまでも不利な環境で搾取されて貧困化していく。

すでに日本では平均年収186万円ほどの低所得層は約1200万人にもなろうとしている。彼らはすでに中間層ではない。かなりの低所得層だ。

企業は非正規雇用を増やし、リストラも恒常化させているので中間層から低所得層に落ちる人々はもっと増える。さらに高齢になったのに年金では食べていけない人々も低賃金で働くしかないので低所得層になっていく。

一方で日本では1億円以上の資産を持つ世帯が人口の3%ほどいて、彼らはどんどん資産を膨らませていく。

そして、成功した人間たちは経済的に成果を出していない人たちを「馬鹿」とか「頭が悪い」とか「自己責任の結果」とか言いながら嘲笑し、自分たちの成功をSNSなどで「これでもか」と誇示する。

資本主義が弱肉強食化すると、「稼ぐが勝ち」とか言って競争が奨励され、激甚化し、競争に向いた性格の人間がルールを破ってでも、人を蹴落としてでも、エゴをまき散らしてでも、不正してでも勝ちあがろうとする。すなわち、脇目も振らず経済的な成功を追求するようになる。

このシステムで成功者になるためには、つねに自分自身の最大の利益を追求し、競争相手を圧倒することが重要視される。利益(リターン)至上主義となる。これにより、市場においては決定的に優劣が広がり、経済的な勝者と敗者が明確に分かれることになる。

日本はそうなっているし、その傾向はもっと強まる。社会は分断に向かっている。

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政治は格差是正に関してまるっきり機能していない

たしかに資本主義における競争は生産性と効率性の向上を促進する。一方でこれが経済格差や社会的不平等を拡大する要因ともなり得る。

経済的な競争が激化すると、市場での成功や生存を果たすのは競争に強く、効率的な事業や個人が台頭する。そして、弱者と見なされる企業や個人は淘汰され、強者だけが生き残りやすくなる。

経済的成功を追求するあまり、競争相手を排除することが、資本主義社会において強調され、弱肉強食化はより進んでいくことになる。

成功した企業や個人は弱肉強食の資本主義で支配力を高め、資源や機会へのアクセスが増加する。これに対し、競争に負けた企業や個人は逆に経済的な困難に直面し、不利な立場に置かれるようになる。

弱肉強食の資本主義では短期的な利益追求が奨励されるため、社会的側面の配慮が後回しにされるか、不十分なまま放置される。そして、不平等や格差が大きな社会問題を引き起こしていくようになっていくのである。

本来であれば、この差を調整するのが政治の役割である。

しかし、今の政治家は30年以上も日本を成長させることができない無能が揃っており、政治活動と言えば国会で寝て、料亭でメシを食って、パーティーを開いて裏金を作って、税金で外国に遊びに行って、ハニートラップに引っかかって帰ってくるくらいの仕事しかしていない。

政治はまるっきり機能していない。機能していないから日本は衰退していき、経済格差が広がり、社会的分断が広がっているのだ。

政治がまともになる兆しはまったくない。与党は無能だが野党は与党よりも無能で政治が機能していないのである。結局、日本社会は弱肉強食の資本主義がはびこるようになって、社会的な分断が止まらない。

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金融リテラシーもない国民に投資を煽って自己責任

経済格差が広がるだけ広がり、貧困化するリスクも高まっていき、自分たちが「ほどほどの暮らし」すらも維持できないほど苛烈なものになりつつある。しかも、経済的な利己主義がはびこって経済的な結果がすべて自己責任になっている。

たとえば、政府が提唱している「新NISA」もそうだ。

税金を取りまくることしか能がない岸田政権が新NISAで「税金はかかりません」とやってる。政府は明確に日本国民の貯金を株式市場に誘導しているのだが、株式市場は上がるばかりではない。大暴落することもある。

それこそ30%でも40%でも暴落することは何度も起こり得る。金融リテラシーもない国民に投資を煽ってそんなところに無防備に放り込むのだから、日本政府も罪なことをしていると思わないだろうか。

それで、どうなるのか。

今後、国民が「年金で食べていけない」と騒ぎ出したら、「だから貯蓄を勧めて新NISAも用意した。投資しなかったお前が悪い」と自己責任論を押しつけることができる。投資の失敗も「自分自身のせい」で終わらせられる。

「新NISAで金融リテラシーもない国民に投資を煽っている」と言うと、必ず出てくるのは「日本人の投資アレルギーはどうしようもない」というものだ。これは議論のすり替えである。

日本政府は国民の面倒を見たくない。
年金で食っていけない国民が続出する。
だから新NISAで投資に誘導する。
投資に失敗したとしても自己責任。
政府は責任を取らないシステム。

政府の責任逃れを批判したら「日本人の投資アレルギーが……」と言い出すのだから、苦笑するしかない。政府が投資をダシにして責任逃れしているのを批判しているので、投資アレルギーなんか何の関係もない。

政府が国民の資産運用の失敗を補填してくれることは100%ない。国民が失敗したら、また成功者がしゃしゃり出てSNSで「失敗した奴は馬鹿」とか「頭が悪い」とかあざ笑い、政府は見て見ぬふりをするのは目に見えている。

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日本社会の分断は、大きな社会問題を引き起こす

国民の金融リテラシーを向上させるような教育もせず、義務教育でも金融教育をせず、年金制度がぐらつくようになってから「新NISAでは税金がかかりません」と言い出して国民に投資で資産を作れと言い出す。投資に失敗したとしても自己責任で、政府は絶対に責任を取らない。

こんな状態では、株式市場を支配しているヘッジファンドやらハゲタカファンドやら仕手筋やら投機筋などに、国民の資産がありったけ強奪されるリスクが高まるだけだ。それこそ、日本の国富をみんな外資のハゲタカファンドに持っていかれる可能性すらもある。

そうなったら、本当の意味で日本は先進国から脱落して貧困国家となりかねない。しかし、政治がそれを主導して責任を取らないのだ。大半の国民は見捨てられることになる。そういう方向に時代は突き進んでいる。

しかし、投資の世界では巧みに動いた勝ち組も作り出すので、日本人の全員が貧困化するわけではなく、莫大な資産を持つ成功者と何の資産も持たない低所得層に分断して、ますます成功者は低所得層をSNSであざ笑うことになるだろう。

この日本社会の分断が、日本社会を根底からひっくり返す要因になるのではないか。

社会に怒りが充満すると、現在の社会システムを破壊するための「何か」を人々は求めるようになる。それは「社会主義」かもしれないし「民族主義」かもしれないし「独裁主義」かもしれないし「全体主義」かもしれない。

何がやってくるのかわからないが、場合によっては、資本主義社会で何も持たない集団(グループ)が、成功者を吊し上げて処刑するような事件が発生しても私は驚かない。そのときは、日本の今の社会システムが破壊されるほどのインパクトがある事件が引き起こされるだろう。

分断がどうしようもないほど広がったとき、それは大きな潮流になる。

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