長期ローンを組んでマイホームを買うというのは、今の日本では危険な冒険か?

長期ローンを組んでマイホームを買うというのは、今の日本では危険な冒険か?

企業はもう従業員を守らなくなった。この流れはさらに加速している。そんな時代に長期ローンを組んでマイホームを買うというのは、考えてみれば危険な冒険でもある。そして数千万円を背負って家を買って、少子高齢化がもっと進む将来に資産価値は保てるだろうか?(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

最も動揺したのは住宅ローンを組んでいる人たち

2022年12月10日、日本銀行は金融政策決定会合を経て、突如として「長期金利の変動幅を、これまでのプラスマイナス0.25%程度から0.5%程度まで広げる」と発表した。この寝耳に水の政策変更に日本社会には大きな激震が走った。

利上げではないのだが、変動幅が広がるというのは将来的に利上げの可能性もあるということで、世間はこれを「実質的な利上げ」と捉えた。

日銀の黒田東彦総裁の任期は2023年4月なのだが、これに伴った金融緩和政策の変更の可能性もあり、今後は日本も利上げが為される環境になるかもしれない。

そもそも、日銀が景況に合わせて利上げ・利下げを決定するのは当たり前の仕事なのだが、日本はバブル崩壊以後は延々と実質GDP成長率ゼロの無残な状態にあり、安倍政権以後は大規模な金融緩和が継続的に行われて利上げができなくなっていた。逆に言えば、利上げに耐えられない財政環境になっていたとも言える。

しかし、2022年は日本もグローバルなエネルギー高騰や欧米の利上げに巻き込まれて、消費者物価指数も上昇してきている。2022年11月は3.7%となって、ほぼ41年ぶりの物価上昇率となった。こうした中で、日銀は長期金利の変動幅を見直しせざるを得なかったようだ。

そして、この「実質的な利上げ」で最も動揺したのは住宅ローンを組んでいる人たちや、これから組もうとしている人たちである。まず、これから固定型で借りる人にとってはローンの負担が増える可能性は十分にある。

とは言うものの、住宅ローンの7割近くは変動金利であり、ほとんどの人はそれほど大きな影響は受けないかもしれない。しかし、住宅ローンは10年〜20年のスパンで考えるべきであり、「今は」問題なくても将来の短期金利が変動することも十分にあり得る。

ギリギリの予算で生きていると住宅ローン破綻は間違いなく増えるだろう。そうでなくても今の時代、住宅ローンというのはすさまじくリスクが高いものであると言える。住宅ローン破綻率は現在3%台である。

景気が悪化していく中で、住宅ローン破綻が増えていくのは当然だ。

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長期的に見ると日本の経済は萎縮していく方向になる

日本政府は、いまや完全に増税にひた走る路線を採っている。日本はすでに50種類近い税金が国民に課せられていて、しかも税金と社会保険料で国民負担率は5割近い数字となっている。

これからさらに新しい税金が課せられ、しかも社会保険料も上がることが決定している。岸田政権は検討師とか言われているが、こと増税に関しては即断即決である。

物価も上がっているのだが、実質賃金は逆に下がっている。しかも最悪は終わったわけではなく、2023年は欧米も中国も景気悪化に突入することが分かっている。2023年は景気後退《リセッション》の年となり、日本もその大波から逃れることはできない。

それでは、景気後退を乗り切ったら日本も景気が良くなるのかと言われれば、それも今の状況では非常に怪しい。若干の景気の好転は見られたとしても長期的に見ると日本の経済は萎縮していく確率の方が高い。

日本は少子高齢化で内需が減退し、イノベーションも生み出せず、税金も社会保障費も信じられないほど増大して高負担社会となり、貧困もじわじわと忍び寄っている。コロナ禍を経た現在、約1200万人が平均年収186万円の低所得層である。

最初、日本では若年層の貧困が取り沙汰された。次に女性の貧困が問題になった。次に子供の貧困が議題に上がった。そして今、中高年の貧困も認知されるようになった。高齢層の貧困も表面化するようになった。

2000年代から今現在まで、順繰りでクローズアップされるそれぞれの世代の貧困を相対的に見ると、日本で何が起きているのかが分かる。それは、日本の全世帯に貧困が回ったということなのである。

貧困は、特定の世代、特定の性別、特定の地域の単発的な問題ではなくなった。すべての日本人が直面する大きな社会問題となった。

そして、今は最も貧困から遠いはずの堅実に働いているサラリーマンまでもが実質賃金の低下、リストラやリストラ不安、教育費の高騰、のしかかる住宅ローンなどで苦境にあえぐようになっているのだ。

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トップ10にも20にも30にも日本企業は存在しない

世界では猛烈なグローバル化が進んでいき、それは日本企業にも大きな影響を与えるようになった。終身雇用も年功序列も成り立たなくなっており、大企業も経団連も「もう終身雇用は難しい」と明確に言い出している。

非正規雇用は就労者全体の4割を占めるようになり、正社員の中でもジョブ型雇用で賃金格差が生まれていこうとしている。(ダークネス:迫りくるジョブ型雇用の社会では、自分にスキルがあるかどうかが死活問題と化す

こうした社会の動きが、働き盛りの中高年を直撃している。

日本企業は1990年のバブル崩壊で苦境に落ち、従業員を振り落として非正規雇用に入れ替えながら再起にもがいていたが、2008年のリーマン・ショックで再びどん底に落とされてしまった。

1980年代には世界の時価総額ランキングに多くの日本企業が連なっていたのだが、今ではもうトップ10にも20にも30にも日本企業は存在しない。日本企業は長らく不良債権に苦しみ、競争力を失い、事業を縮小し、赤字に転がり落ち、技術は周辺国にどんどん流出し、立ち直れなくなっていった。

そして、当初は若年層が非正規雇用で苦しんでいたのだが、長引く経営不振で中間管理職もリストラされていくようになると、彼らは再就職がとんでもなく厳しいものであることに愕然とすることになった。

その時になってやっと中高年は、2000年代に若年層が超就職氷河期で追い込まれて苦境に落ちていたことを思い出し、あれは自己責任ではなく、社会が変わった結果起きていた現象であるのを理解したのだった。

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わざわざ住宅ローンみたいな十字架を背負うか?

企業はもう従業員を守らなくなった。この流れは、さらに加速している。そんな時代に、長期ローンを組んでマイホームを買うというのは、今の日本では危険な冒険でもある。

大企業でも10年後は斜陽になったり、潰れたりする確率は想像以上に高い。会社が潰れなくても自分が途中でリストラされる確率も高い。転職に失敗して収入が激減する確率も高まっている。賃金は延々と低いまま推移する確率も高まっている。

会社は大丈夫でも国そのものが駄目になって、30年後は不動産の資産価値が激減している可能性すら考えられる。

30年ローンだとか35年ローンなどは終身雇用が確約されていた時代か、国が右肩上がりに成長する国で検討するのが合理的であって、これから国が萎縮していくのであれば危険なだけだ。

最近は年収400万円程度の家庭も「家賃を払うより得だ」と思ってマイホームを買うが、少子高齢化の時代にマイホームは本当に資産になるのだろうか。

新築マンションは新築はプレミアが2割も乗せられているし、住宅ローンが終わる頃は資産価値が低いボロマンションになっている可能性も高い。持ち家も20年も経てば資産価値などゼロに等しいほどガタがくる。

その頃に売ろうと思っても、自分が考えている価格では売れずに買い叩かれるだろう。

銀行や住宅会社は、常に「住宅は今が買い時」「家賃よりローンの方が得だ」と煽っているのだが、普通の人にとってはマイホームを持って住宅ローンを払っていくというのは今後の日本を見るとかなりのリスクとしか言いようがない。

まして日本の人口動態は少子高齢化で悲惨なことになっていて、今後10年どころか20年近くも止まらない。今でも地方は高齢化で過疎化・限界集落化して資産価値は消えているのだが、これからも少子高齢化による人口減が進むのである。

住宅は「不動産」ではなくて「負動産」かもしれない。そうであれば、ローンに人生を縛られるよりも、マイホームなどにこだわらない方が合理的だ。少なくとも、そう考えた方がいいような不穏な社会になっている。

今の時代に、わざわざ住宅ローンみたいな十字架を背負いたいとは私は思わない。

『邪悪な世界のもがき方』
『邪悪な世界のもがき方 格差と搾取の世界を株式投資で生き残る(鈴木傾城)』

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