迫りくるジョブ型雇用の社会では、自分にスキルがあるかどうかが死活問題と化す

迫りくるジョブ型雇用の社会では、自分にスキルがあるかどうかが死活問題と化す

ジョブ型雇用が広がっていく。誰も頼りにできない中で生き残るためには、生き残るために必要な武器、すなわち専門知識を必死で手に入れるしかない。ジョブ型雇用が主流の社会ともなれば、高度に専門化・体系化された知識やスキルがないと未来がなくなる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

自分を守ってくれていたものが機能しない

終身雇用の時代が終わり、年功序列の時代も終わった。企業のビジネスサイクルも短くなり、企業の効率化で人が要らなくなり、リストラが恒常的に行われるようになった。学歴があろうがなかろうが、すべての従業員は巻き込まれる。

そして、これからはジョブ型雇用になり、スペシャリスト(専門家)が高賃金・好待遇で雇われて、残りは低賃金の使い捨て非正規雇用の世界に入っていく。最初は大企業で始まり、やがては中小企業も「専門家と使い捨て人員」で固められるようになる。

そこに、グローバル化と多文化共生が複雑に入り交じっていく。グローバル化とは企業が「安い人材」を求めて外国に出ていくことで、多文化共生とは企業が「安い人材」を求めて外国から労働者を呼び寄せることである。

すでに日本企業も明確なまでに日本人切り捨てをやっているのだ。政府は何をしているのかというと、日本国民から税金を取りまくって、このグローバル化と多文化共生を押し進めているのである。

このすべては、今まで自分を守ってくれていたものが、自分を見放すようになっている動きであるということに気付かなければならない。

終身雇用が終わったというのは、企業はもう従業員を守らないということだ。年功序列が終わったというのは、中高年も企業から放り出されるということだ。

ビジネスサイクルが短くなったというのは、企業そのものが潰れやすくなって、会社もろとも仕事を失うということだ。新しいテクノロジーが導入されるということは、ついていけない人間は見捨てられるということだ。

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自分を守るのは、自分自身だけでしかなくなった

路頭に迷っても政府が助けてくれない。2020年からのコロナ禍で実体経済が危機に陥っても、日本政府は消費税減税を頑として拒んだ。特別一時給付金も一回出すだけで終わりだった。

以後も緊急事態宣言やらまん延防止等重点措置を要請しながらも、国民に対しての補償は一切なかった。要するに、苦境に落ちた国民を助けるよりも見捨てる動きになっている。国も自分を守ってくれない。

こういう不安定な社会の中では、学生も「学歴がなければ死ぬ」と思ってしまうのだが、今の社会はそもそも無理して学歴を手に入れること自体が一種のワナになっている。

学歴がないと就職できないと煽り立て、学生に多額の借金を背負わせて大学と消費者金融が儲けるのである。学歴をエサにして学生をカモにしている。学歴が身を助けるどころか、学歴を取るための莫大な借金が学生を自滅させていく。

企業は学歴がないと雇わない。かと言って、学歴にすがりつく者を徹底的に食い物にする。現代はそんな邪悪な世界である。

では、いざとなったら「家族」が助けてくれるのか。それも期待できなくなりつつある。若年層だけがこうした社会環境に巻き込まれているのではなく、親世帯もまた安定を失いつつあるからだ。

ニートやフリーターや引きこもりをしていた人間たちは親に依存し、寄生して生きていた。しかし、現在はその親世代が困窮化しており、いつまでも自立できない子供の面倒を見られなくなりつつある。

このように見ると、社会は非常に厳しい方向に変質したことが分かるはずだ。

今まで安定した生活を保障してくれていたはずの、さまざまなセーフティーネットが機能しなくなった。自分を守るのは、もう自分自身だけでしかなくなった。

放っておけば誰かが助けてくれるどころか、食い物にされていく。自分で自分を何とかしないと、容赦なく叩き落とされる社会と化したのだ。

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自分に必要な専門知識を貪欲に吸い込んでいく

誰も頼りにできない中で生き残るためには、何が自分に必要なのかを常に考えておかなければならない。それがジョブ型雇用の社会なのだ。

重要なスキルを持つスペシャリストが高賃金・好待遇で雇われて、残りは使い捨ての非正規雇用である。スペシャリスト自身も仕事がなくなれば終わりだが、必要なスキルを持っていると、すぐに次の高賃金・好待遇の仕事が見つかる。

そうであれば、生き残るために必要な武器、すなわち専門知識を必死で手に入れるしかない。ジョブ型雇用が主流の社会ともなれば、高度に専門化・体系化された知識がないと未来がなくなる。

ちなみに、テレビのお遊びのクイズ的な雑学は、単なる暇つぶしだ。専門化も体系化もされておらず、ビジネスにおいて何ら関連性もなく、従って成果も収入も生み出さない。

テレビのクイズ番組を見ても、優秀な人間になることは決してない。むしろ、脳が思考停止状態になって馬鹿になる。現代社会でサバイバルするためには、テレビの雑音をシャットダウンして、自分に必要な専門知識を貪欲に吸い込んでいかなければならない。

ジョブ型雇用の社会で生き残るためには、そういった社会の変化を読み、自分で自分を助けられるように動くしかない。言ってみれば、自分で動いて業界の深い専門知識を手に入れることができるかどうかで、人生が大きく分岐していく。

自分で自分の適性を良く見極めて、何とか専門知識を身につけるしかない。それが持続してできるかどうかで、現代社会で生き延びられるかどうかが決まっていく。

ジョブ型雇用の中では企業は必要な時だけ専門家を使う。人があって仕事を割り当てるのではなく、仕事があって人を割り当てるのである。仕事がなくなったら、人も要らないという世界だ。

ジョブ型雇用に変わったら、今までのように社内の人間を教育して育てるのではない。要らない人間を捨て、高度な知識を有した人間を雇い直す。

激甚な競争に晒されている企業は、もはや昔のように人を育てている暇も金もない。さっさと即戦力を雇う。単に学歴があっても仕事に合致する高度なスキルがなければ役に立たない人間なので切り捨てられるだけだ。

企業はすでに「従業員を捨てること」を前提に動いている。そのため、自分で自分を助けられない人は、どんどん使い捨ての最低賃金かそれ以下にされる。

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ジョブ型雇用が加速すると格差はさらに開く

今後は、国も企業も家族も頼れないことを見越して、自分で自分を助けるしかない。誰も助けてくれないのだから、そんな社会では「スペシャリストになる」以外では生き残れない。

これからやってくるのは、凄まじいまでの技術革新だ。

インターネットのさらなる進化、人工知能の促進、ロボット化、フィンテックの浸透、メタバース等によって、社会は極度な高度情報化社会に移行するのだ。

そのため、ほとんどの人はハイテク分野への知識と対応がどこまでできるかで自分の将来が決まると言っても過言ではない。

ハイテク技術の基本的な部分が理解でき、高度に使いこなし、次々と生まれるイノベーションで自分のスキルを適用できなければならない。

社会が一段も二段も高度化するのに自分が高度化しないのであれば、それは次の時代に取り残され、生きていけなくなるということだ。待ったなしだ。

現在、大きな格差社会になっている。ジョブ型雇用が加速すると、この格差は自分で自分を向上できる人とできない人との間で、さらに大きな差となっていく。

自分を自分で向上させることに成功した人は、これからの格差社会の中で有利なポジションを手に入れることができる。そして、豊かな生活を送ることが可能になっていく。

その逆に自分を助けられなかった人は、まわりも助ける余裕がなくなっているので、そのうちに捨てられて社会の底辺に落ちていくことになる。

誰も頼りにならないのだから、自分自身でどれだけ自分を引き上げることができるのかが生き残れるかどうかの鍵になる。

もう「頼れるのは自分だけ」になっている。ジョブ型雇用が社会を変えていく中で、自分で自分を引き上げないと、個人も国も容赦なく時代に見捨てられて下手すれば為す術もなく死んでしまう。

新しい時代は、もうすぐ目の前にある。

『邪悪な世界の落とし穴』。もう今の世の中で生き延びるためには、「頼れるのは自分だけ」になっている。「超高度情報化社会」が社会を変えていく中で、自分で自分を引き上げないと、個人も国も容赦なく時代に見捨てられて下手すれば為す術もなく死んでしまう。

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