消費税を上げたので消費がダイレクトに減退した。企業がコストダウンの必要性に迫られて、結果的に人件費を減らした。正社員を非正規雇用者に置き換え、給料削減やリストラに走った。日本経済は税金を上げるしか能がない政治家のせいで低迷し、どん底に落ちている。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
しばらくは「崩壊した」と認めなかった人も多かった
日本でバブルが崩壊したのは1990年からだ。しかし、1991年のチャートを見ると、興味深いことが分かる。大幅下落を打ち消すように、株価は上昇機運に入っていたのだ。
1992年になると再び暴落の中に落ちていくのだが、1991年の上昇は何を意味していたのだろうか。それは、バブルが崩壊しても、しばらくは「崩壊した」と認めなかった人も多かったということだ。
つまり「これは一時的な踊り場で、すぐにまた右肩上がりになる」と勘違いした人が多かったのである。
当時、私も多額の資金を株式市場に投じていたのだが、私は不穏な感情を打ち消すことができず徐々に徐々に降りていた。しかし、1991年の一時的な上昇(デッドキャットバウンス)には翻弄された。
バブルが崩壊してもしばらくは惰性で社会がバブル時代のように振る舞う。だから、先が読めないのである。バブルに踊った日本人の多く1991年の段階でも「日本は強い。また戻る」と信じていたのだ。
書店でも「日本経済最強論」「バブルは終わらない」みたいな景気の良い書籍がズラリと並んでいた。一方で「バブル経済は終わった」という書籍もあった。バブルは崩壊したという論と、していないという論が入り乱れていたのである。
しかし、数年経って地価も株式市場も戻るどころか半値以下に落ちても止まらないのを見て、やっと強気派は自分たちがハシゴを外されたことに気がつく。多くの強気派は莫大な借金をして土地転がしをしていたから、買ったときよりも地価が下がると、それですべてを失って死んでいった。
私も借金まみれになって地獄に落ちていた親しい人を間近で見ている。車を売り、家を売り、借金の返済に追われ、バブル期の天国から突き落とされてそれはまさに地獄の惨状だった。
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人々はもう、それが当たり前だと感じて受け入れている
バブルが崩壊し、何もかも耐えきれずに日本経済の全面降伏が起きたのが1994年あたりである。「自殺」の急増も、そこから始まっている。自転車操業がそこで尽きた。
そして、国民が苦しみでのたうち回っている中、日本の苦境をどん底にまで突き落としたのが1997年の消費増税だった。
『1997年の増税は、戦後最大の経済危機をもたらし、その後の長期デフレーションをもたらした』とマクロ経済専門家の野口旭氏は言っている。
「自殺者の急増はバブル崩壊後、急速に景気が悪化した時期と重なっている。当時、雇用状況の悪化に伴ってリストラなどで失業者が増加した」
この当時から日本企業はグローバル化の波に洗われるようになっていき、終身雇用を捨てて非正規雇用を増やすようになっていくのだが、この中では今も続いている。
雇用が劣化し、リストラが当たり前の世の中になった。そして、消費増税が企業の売上を削ぎ、国民の可処分所得に響き、日本経済の荒廃を加速させた。
ただ、バブル崩壊から10年、20年、30年と経つうちに自殺者は減っていた。これは、希望が見えているから減ったのではない。以後は生まれながらに劣悪な就労環境なのが常態なので、それで自殺することがなくなっただけの話だ。
格差が広がり、持たざる層も増え、社会保障費も着実に微細に削り取られている。しかし、人々はもう、それが当たり前だと感じて受け入れている。消費税は、そんな中でどんどん引き上げられて、2019年にはとうとう10%にまで到達してしまった。
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橋本龍太郎は日本の災厄でしかなかった
一度上がった消費税はテコでも下がることはない。2020年のコロナ禍は歴史的な大ダメージを経済に与えたが、それでも消費税は下がらない。国民の生活の質はコロナのダメージと消費税で今後も悪化するのは間違いない。
ちなみに、景気が破滅的に悪くなって自殺者が急増した1995年以降に消費税をアップさせていたのは橋本龍太郎だ。バブルをハードランディングさせたのは1990年から1991年まで続けられた総量規制だが、この大蔵大臣も橋本龍太郎だ。
日本は経済的に暗転していた。にも関わらず、日本は敵対的言動に邁進する中国に莫大なODAをしていた。言うまでもないが、ハニートラップを引っかかって個人的都合でODAをしていたのも橋本龍太郎である。
橋本龍太郎は日本の災厄でしかなかった。
橋本龍太郎の時代に日本は1年間で3万人が自殺する自殺大国となり、その3万人の自殺が14年連続高止まりすることになったのだ。橋本龍太郎が総量規制をして消費税をアップしたことからすべてが起こっている。
消費税が数%アップしたところで大したインパクトではないと政治家は思ったのかもしれない。しかし、現実には社会が収縮して巡り巡って人々に悪影響を与えていたのだ。
消費税を上げたので消費がダイレクトに減退した。企業がコストダウンの必要性に迫られて、結果的に人件費を減らした。正社員を非正規雇用者に置き換え、給料削減やリストラに走った。
仕事は見つからない。そして給料は下がる。節約しながらつつましく生きている人たちには、それが死活問題となっていく。消費税みたいな悪税で日本経済は低迷し、自殺者も増え、どん底に落ちていった。
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この経済悪化のインパクトは甘く見るべきではない
愚かなことに不景気の最中に消費税を上げるという悪例を安倍政権は2014年4月に繰り返し、さらには2019年10月にも再度消費税をアップさせた。
消費税10%……。
この消費増税という失策にコロナ禍が重なったので、日本の内需はもっと減少し、成長率はさらに低下していくことになった。やっとコロナ禍から脱したと思ったら、今度は物価上昇が日本を襲いかかることになった。
これによって中小企業の首が絞まり、ゼロゼロ融資の返済も始まったので倒産も増え続けている。
本当に日本の景気を良くしたいのであれば、好き放題に税金を上げるべきではないのである。とくに消費税は景気回復の足かせになっている。消費税は段階的に引き下げていくべきなのだ。
そもそも、日本人が払っている税金は消費税だけではない。
所得税、住民税、固定資産税、国民年金、介護保険料、復興税、自動車税、ガソリン税、酒税、タバコ税、贈与税、相続税……等々、ありとあらゆる税金を取られている。過酷であり、明らかに取り過ぎだ。
国民負担率も五公五民のようになっていて、国民の負担はかなり重くなってしまっている。物価も上がっているのだが、賃金の伸びはそれに追いついていないので、実質賃金は20か月連続マイナスという有様だ。
しかし、歴代の政権と同じく、現在の岸田政権も増税をやめるつもりがまったくない。
岸田政権は、2023年10月からはインボイス制度で実質的に消費税を引き上げたも同然の措置を行ったし、「異次元の少子化対策をする」と言いながら、結局やったことは増税だった。
それも、子育て世代からも社会保険料を引き上げるというものだった。まったく少子化対策になっていないどころか、むしろより少子化を加速させるものだと激しく批判されている。
せめて消費税だけでも下げなければ日本経済は轟沈する。消費税を撤廃すれば、バブル以後の日本の失敗を巻き返すこともできる。
ただし、現実的には消費税が引き下げられる確率はかなり低く、むしろ将来的には引き上げられる確率の方が高い。そのため、日本経済は相変わらずじり貧から抜け出せない方向で考えていかなければならない。
今のままでは経済は良くならないし、日本は売国する政治家に蝕まれており、政府は機能不全になりやすい。
折しも、自民党も派閥が崩壊し、裏金づくり問題や、税金逃れ問題や、使途不明金問題などで追い込まれているわけで、すでに機能不全になっているのかもしれない。
そんな中で、私たちはサバイバルしていかなければならないということだ。この経済悪化のインパクトは甘く見るべきではない。場合によっては日本の致命傷にもなりかねない。