景気後退が来ても日本の光景は変わらないが、日本をあきらめる日本人が増える

景気後退が来ても日本の光景は変わらないが、日本をあきらめる日本人が増える

もともと日本は政府の無策が続いていて実質賃金はほぼ上がらない状況になっているので、多くの日本人は「不景気慣れ」している。しかし、生活水準はじわじわと下がっている。2023年のリセッションは、日本がいっそう貧しくなっていくスピードを加速させる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

足元ではアメリカの実体経済はどんどん悪化しつつある

2022年は年初から株式市場はずっと不調で、資本主義の総本山であるアメリカでは10月までにS&P500もNASDAQもマイナス25%から30%近くもずるずると下げてきた。

11月からはいよいよ利上げも最終局面に近づいて来ているのではないか、という推測から株式は復調基調なのだが、だからと言って危機が終わったわけではなく、今も下落のリスクを孕みながら一進一退を繰り返している。

アメリカのインフレはCPI(消費者物価指数)を見ると、6月の9.1%をピークにして、7月は8.5%、8月は8.3%、9月は8.2%、10月は7.7%と、じわりじわりと鎮静化に向かいつつある。

しかし、通常は2%程度が適温であるはずのインフレ率が6月から下がったとは言っても7.7%であり、まだまだ高いと言わざるを得ない。そういうこともあって、FRBも「危機が去った」とは考えていない。

インフレ率は再び上昇する可能性はゼロではないので、もしそうなった場合は利上げは再びアグレッシブになる。そうなると、今はやや平静を保っている株式市場も激しい乱高下に巻き込まれてしまうだろう。

そうしている間に、足元ではアメリカの実体経済はどんどん悪化しつつある。

2021年まで市場を牽引していたGAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)だが、どの企業も新規採用を見合わすだけでなく、大規模なリストラに踏み切るようになってきている。

GAFAMだけでなく、ハイテク業界はほぼリストラの嵐となっている。2022年11月23日には、米HPが業績悪化を受けて全従業員の最大約12%、人数にして最大6000人を削減すると発表した。

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2023年は景気後退《リセッション》がやってくる

2022年にアメリカのFRBが行った利上げは、かなり急激で思い切った利上げだった。そのため、この利上げによる悪影響が2023年に襲いかかるのは、もはや金融関係者の誰もが共通認識として持っている。

2023年は景気後退《リセッション》がやってくるのである。

アメリカがリセッションに陥ったら、当然のことながら全世界に問題が波及していくことになる。EU(欧州連合)は、もうすでにリセッションに入っているのではないかというほど景気が悪い。イギリスも同様だ。

中国はと言えば、ゼロコロナ政策を緩和しようとした瞬間に再びコロナ感染者が急増してしまい、再び厳格な隔離政策に戻ってしまっている。このような状況なので、もはや中国のこれまでのような経済成長は止まってしまい、2023年は間違いなく経済不振に見舞われる。

中国は経済を牽引してきた不動産もガタガタであり、2023年以降もGDP5%以上の成長を取り戻せるのかどうかも怪しい。アメリカとも激しく対立している。とすれば、中国は国内に巨大な格差を抱えたまま、このままずるずると萎縮していく可能性が強い。

欧米や中国がこのような状態なのであれば、日本もまた2023年に突如として経済が好転するということはあり得ない。

最近、岸田政権は朝鮮カルト問題、閣僚失言問題、増税路線で叩きのめされるようになってきており、支持率も30%を切って20%台に入っていった。

「所得倍増計画」だとか「金融所得倍増計画」みたいな景気の良いことを言ってたくせに、実質賃金は低下しまくって株価も上がらないので金融所得も増えないのだから、国民からは詐欺師とも思われるようになってきている。

支持率が20%台に入ると、政権が不安定化して崩壊していく。

これまでのパターンを踏襲するのであれば、2023年の岸田政権は生き残れるのかどうかという瀬戸際になってしまうだろう。そういう状態なので、日本も単独で2023年に経済成長の気運を取り戻すというのはない。

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このままでは「日本をあきらめる」日本人が出てくる

FRB(連邦準備理事会)は高止まりしているインフレ率を見ながら金利をどうするのか決めることになるのだが、2023年に入って金利上昇を打ち止めにしたとしても、しばらくは高い水準で推移させてインフレが再燃しないようにするはずだ。

そうであれば、金利が高いまま景気後退《リセッション》を迎えることになるわけで、不景気の物価高がやってくる可能性も指摘されている。不景気の物価高、これはすなわちスタグフレーションである。

フォーブスは2022年11月21日に「世界のファンドマネジャー、9割超がスタグフレーション予想」という記事を出している。『約92%のファンドマネジャーは、向こう1年の経済は成長率は平均以下で物価上昇率は平均以上というスタグフレーションに見舞われると予想している』というのだ。

実は私も2023年のアメリカはどこかの段階でスタグフレーションに入ると感じている。スタグフレーションに入るということは、2023年のアメリカの実体経済はひどいことになるわけで、ごく普通の人々が経済的苦境に堕ちていくのは来年が本番なのだ。

日本はすでに2022年にスタグフレーションに入っている可能性がある。

物価が上がっている上に、政府は税金や社会保険料を引き上げ、社会保障の質は低下させているわけで、日本経済の停滞はこれからも延々と続きそうだ。そもそも、日本は30年近くも経済の萎縮が続いている。

あまりにも与党も野党も揃ってあまりに政権担当能力が欠如してしまって、日本経済を浮揚させることができない。この30年の大半を担ってきたのが自公民なのだが、もはやその劣化は目を覆わんばかりである。

しかし、自民党のクビを切っても野党は自民党以上に能力がなく、しかも売国議員や反日議員ばかりなので期待すらできない。「自民党は駄目だ」というのは正しいのだが、野党もまた駄目なので日本は救いようがない。

このままでは「日本をあきらめる」日本人が大半になっていく。

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日本はもう何をやっても回復できなくなっていく?

そういうわけで、2023年に世界を覆い尽くすような景気後退《リセッション》がやってきたら、日本人は政府のサポートもなくじわじわと日常生活が景気後退に侵されていくと考えていた方がいい。

もともと日本は政府の無策が続いていて実質賃金はほぼ上がらない状況になっているので、多くの日本人は「不景気慣れ」している。そのため、2023年にリセッションがやってきたとしても、それほど日本社会の光景は変わらないのだと思う。

抗議デモや暴動が起こるわけでもない。政府転覆テロが起こるわけでもない。社会変革につながるような行動も起こさない。日本人はただ、不安に駆られながらも日々の生活を乗り切ることだけに汲々としている。

しかし、生活水準はそうやって不景気に耐えているうちに、じわじわと少しずつ下がっている。すでに平均年収186万円レベルのアンダークラスと呼ばれる貧困層が約1200万人にもなっている。

2021年の日本人の平均賃金をOECD(経済協力開発機構)での比較で見ると、日本人の賃金は韓国にも抜かれているし、イタリアにも抜かれている。

日本という国は、ある日ふっと気付いてまわりを見回せば、大量の貧困層が社会の底辺を覆い尽くして先進国でも何でもなくなっている可能性が高い。2023年のリセッションは、日本がいっそう貧しくなっていくスピードを加速させるものである。

私自身は日本の経済力を引き上げることが国防にもつながり、日本人の平和や尊厳を取り戻すことにつながると考えている。

そのためには抜本的に政治のカタチを変える必要があると思っているのだが、日本人の大半は変化を怖がっている。選挙があっても自公民一択で現状維持を望むだけで、自民党が搾取マシーンになっても相変わらず「肉屋を支持する豚」のように自民党に票を入れる。

景気後退がやってきても日本の光景は何も変わらないように見えるかもしれないが、「日本をあきらめる」日本人が大半になって、よほど奇跡でも起きない限り、日本はもう何をやっても回復できなくなっていくのだろう。

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