すでに深刻な病状を抱えていた日本は、2023年の景気後退以後はもっとボロボロに

すでに深刻な病状を抱えていた日本は、2023年の景気後退以後はもっとボロボロに

日本の実質GDP成長率は24年に渡ってゼロ成長なのである。日本は戦争しているわけでも内戦が起きているわけでもない。にも関わらずGDP成長率がゼロである。これは、ひとえにこれまでの歴代政権はことごとく無能であったことを意味する。20年も30年も駄目だった政党は、今後もずっと駄目なのだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

日本も2023年の景気後退に巻き込まれるのは避けられない

2022年は経済環境が非常に悪かった年となった。ロシアは自らが仕掛けたウクライナ戦争で泥沼に落ち、中国はゼロコロナ政策と不動産業界の不振で経済停滞に、そして欧米はインフレ悪化によるダメージで株式市場はボロボロになった。

世界最強のアメリカの株式市場を見ると、NYSEはマイナス20%超、NASDAQに至ってはマイナス30%超にまで落ち込んだ。

FRB(連邦準備制度)はインフレの鎮圧に躍起になっており、いまや株式市場の下落もインフレの沈静化のために必要であると考えるようになっている。こんな状態で株式市場が好転するはずもない。

2022年の株式市場は一気に落ち込んだのではなく、1年をかけてずるずると落ちていったので、陰鬱な空気がずっと株式市場を覆っていた年と言ってもいい。

債券市場も異変をきたしており、いまや10年国債と2年国債の金利が逆転するという逆イールドも発生している。逆イールドが発生すると、かなり高い確率で景気後退《リセッション》がやってくる。

どういうことかというと、2023年は実体経済が景気の悪化でボロボロになっていくということである。日本もこの2023年の景気後退に巻き込まれるのは避けられない状態となっているのだ。

岸田首相は「令和の所得倍増」だとか「金融所得倍増」だとか「資産倍増計画」とか、あれこれ空虚なことを言っているのだが、所得も金融所得も資産も倍増する兆しすらも見えない。

不測の事態が起きても対処できそうにない岸田政権が続く中で日本人は2023年の景気後退を迎えなければならないのだから、実体経済は相当ハードなことになると覚悟しておいた方がいいのではないだろうか。

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岸田首相の脳天気な戯れ言(ざれごと)に付き合えない

すでにアメリカではハイテク企業のリストラが大きな流れになっているのだが、いよいよこれがペプシコのような景気ディフェンシブ企業にも波及する流れとなっている。企業の売上の低下とリストラという典型的な景気後退《リセッション》の兆候はすで現れているのである。

日本にもエネルギー価格の上昇や物価上昇が国民の生活を締め上げるようになっているのだが、それに合わせて実質賃金が下がる一方となっている。7ヶ月連続で実質賃金が低下しているのだから尋常ではない。

物価が上がるとモノは売れなくなる。さらに物価の上昇に賃金が追いつかなくなる。とすれば、業績不振の先にやってくるのは倒産やリストラや雇い止めや一時休業である。実は今も日本はコロナ禍による売上減で企業の倒産は増えている。倒産だけでなく、休廃業、解散もまた急増している。

2021年に関して言えば、休廃業・解散・倒産を合計した数字は4万4377件となっている。2022年は前年よりもひどい数字が出てくるはずだが、2023年はさらに倒産・休業・廃業・解散が増えるのは必至だ。

なぜなら、このタイミングで政府のコロナ対策の中で行われた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)が終了し返済のフェーズ、すなわち借金取り立ての局面に入っていくからである。

コロナ禍のダメージが拭えないうちに今度は物価上昇や景気後退の波が襲いかかるのだから、2023年の実体経済は「大嵐」に見舞われると言っても過言ではない。所得倍増や金融所得倍増や資産倍増みたいな、岸田首相の脳天気な戯れ言(ざれごと)に付き合っているヒマなど、事業者にはないのである。

それだけではない。今まで消費税の免税業者であった中小零細事業者や個人事業者からも消費税を取るということになるので、これに絶望してかなりのた中小零細や個人事業者がビジネスをあきらめるだろう。

事業者がビジネスをあきらめるのであれば、最終的には労働者が苦境に落ちる。一番最初にどん底に落ちてしまうのは言うまでもなく「契機の調整弁」として利用されている非正規雇用者である。

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一般国民は「奪われている」ということに気づいていない

岸田首相はそんな中で、ありとあらゆる税金を引き上げようとしている。日本はもう税金と社会保険料を合わせて国民負担が48%となってしまっているのだが、そんな中で岸田首相はもっともっと税金を引き上げようとしているのだ。

車を走らせたら走行距離課税を取るとか、投資しろと煽って一方では金融所得税を引き上げるとか、防衛して欲しかったら防衛増税するとか、10年前に贈与されたものも税金払えとか、国民健康保険をもっと引き上げるとか、ひたすら税金を引き上げることばかり実行している。

その結果、平均年収186万円のアンダークラスと呼ばれる低所得層も1200万人に激増し、貯金ゼロ世帯も増えている。

高齢者は貯金を貯め込んでいると考えている人もいるが、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(令和3年)」を見ると、それこそ金融資産非保有者は25.1%となっており、4人に1人は貯金ゼロだった。

それで岸田首相は何を言っているのかというと、「貯蓄から投資へ」である。「国民の皆さん、投資して下さい」というのである。

言うまでもないが、増え続ける低所得層は株式を買う余裕もなければ興味もない。貯金すらままならない環境なのに株式という金融資産を保有して資本主義に「乗る」という発想はまったくない。

国民を救うのであれば、とにかく日本という国を経済成長できる国にして実質賃金も上がっていく政策を取らなければならないのだが、日本政府はバブル崩壊以後20年以上にも渡って実質GDP成長率を引き上げることができていない。

日本の実質GDP成長率は24年に渡ってゼロ成長なのだ。

日本は戦争しているわけでも内戦が起きているわけでもない。にも関わらずGDP成長率がゼロである。これは、ひとえにこれまでの歴代政権はことごとく無能であったことを意味する。

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20年も30年も駄目だった政党は、今後もずっと駄目

2023年にやってくる景気後退《リセッション》がどれくらいの規模と深さと長さになるのかは分からない。ただこの景気後退もインフレが沈静化と共に、遅かれ早かれ収束していく。

しかし、収束した時は間違いなく「格差と貧困がもっと広がっていた」という光景になる。

2023年の景気後退は、もしかしたらバブル崩壊やリーマンショック以上に格差を広げるのではないかという懸念すらもある。なぜなら、日本はずっと陰鬱なデフレ経済の中にあって、すでに深刻な問題を抱えていたからである。

とっくの前から深刻な病状を抱えていた日本は、2023年の景気後退以後はもっとボロボロになるということだ。

少子高齢化も解決できず、経済成長もできず、政治に新しい風を入れることもできず、すべてが同時並行に日本を悪化させているのが今の日本だ。社会的劣化はもはや解決不能のところにまで来ていると見てもいい。

他の国は景気後退の後に、それを乗り越えて次の経済成長に備えるのだろう。しかし日本だけは、景気後退から脱することができず、ひたすら後退と停滞を続けていく可能性が見える。

本当のことを言うと、日本はもう「このまま今の状態を続けていたら終わり」なのである。20年も30年も経済成長できないような政党や政治家が、これから何かすごい転換をしてくれるようには思えない。

20年も30年も駄目だった政党は、今後もずっと駄目なのである。

喫緊の課題として、私たち日本人は2023年の景気後退を生き延びなければならないのだが、このまま日本の現状を放置していたら景気後退の後には悲惨な未来しか待っていない。

端的に言うと、今の与野党は1つ残らず失格であり、日本人は今の政治体制を変えないといけないくらいのレベルにまでになっているということだ。何も変えられないのであれば日本はこのまま先進国でも何でもなくなって急激な弱小国家となっていくのだろう。

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