悪いことが起きている時は、トレンドとして悪いことが続くと考えるのが自然

悪いことが起きている時は、トレンドとして悪いことが続くと考えるのが自然

不確実性が増している時、どのように生きればいいのか。最も最適な答えは「自衛に徹する」ということではないか。世の中はすべて関連して動いているので、社会が混乱したら、その混乱から玉突きのように別の混乱が生まれ、さらにその混乱が別の混乱を生み出すという負のスパイラルが起こる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

2020年1月1日の段階で混乱は分からなかった

パンデミック、原油高、資源高、戦争、インフレ……。2022年に入ってから、日本を含めて世界の混乱がいよいよ目立つようになってきた。

2022年はそれほど楽な年ではない。インフレは今も続いているし、ロシアとウクライナの戦況は膠着しているし、アメリカは利上げが始まっているし、中国はオミクロンでロックダウンが大規模になっている。

2022年当初、「オミクロンは大したことがないし、グローバル経済も再開するし、これからやっと明るい時代になる」と誰もが思っていたはずだ。「株も今が買い時」と言っている人もいた。

しかし、現実に起きている出来事を見て欲しい。世の中は一筋縄では動かない。人々の思うように動かない。世の中は予期しない事件に満ちている。

振り返ってみれば新型コロナウイルスにしても、2020年1月1日の段階で「今年は悪性のウイルスで世界が大混乱する」と言っていた人はひとりもいなかった。

何が起こるのか分からなかったのである。では、新型コロナウイルスの問題がなければ世界は何もなかったのか。

それも分からない。

何しろ74億人以上もの人間が世界にいて、それぞれが世の中を構成している。74億人がどのように行動し、どのように社会を動かし、何がどれくらいの影響力を及ぼすのかは誰にも読めない。

だから、予言や予測はいつでも外れるし、専門家が何を言っても当てにならない。世の中は過去の統計通りにも予測通りにも動かない。

今、世界を激震させているロシアのウクライナ侵攻も、それがいつ終わるか、どのような決着を見せるのか、それすらも誰も分からない。

プーチン大統領がウクライナ侵攻を仕掛けるということを、2022年の始めに言っていた人は誰もいない。誰もプーチンの心の中を読めなかった。当たり前だが、予言者なんかひとりもいないということだ。

だから人々は不確実性に翻弄される。

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不確実性を一番実感するのが株式市場の世界

人々が不確実性を一番実感するのが株式市場の世界だ。たとえば、私たちが何かの株式を買うとする。この時点で、世の中を「自分とは真逆に見ている人」を見つけることができる。なぜなら、自分が「上がる」と思って買った株は、恐らく誰かが「下がる」と思って売った株だからだ。

持っている株がこれから上昇するのが分かっていたら、誰も売らない。持っていた方が儲かるからだ。だから、あなたが株を買ったというのは、すなわち誰かが「下がるからもう手放したい」と思ったものであることが多い。

自分が「上がる」と思って買った株は、誰かが「下がる」と思って売った株だ。自分が「下がる」と売った株は、誰かが「上がる」と思って買った株だ。

これが意味するのは、世の中は常に自分とはまったく逆のことを考えて、そちらに人生を賭けている人が山ほどいるということなのである。金がかかっているから誰もが真剣だ。それぞれに思惑を持って動いている。

そして、これらは「お遊び」ではない。自分の生活がかかっている。

それぞれの立場の人間が、自分の信じる方向にカネを賭けている。時には人生を賭けて勝負している。そして、結果を自分のほうに引き寄せようと人生をかけて「誘導」している。だから、経済の世界では激しい舌戦が繰り広げられて、互いに壮絶な叩き合いになっていく。

たとえば、どこかの企業の株を保有している人間は、自分の株を上げてくれる政治家なら誰でも歓迎する。クズの売国奴でも日本の株式市場を暴騰させていたら、日本人の投資家はこの政治家を絶賛する。

自分の持っている株を上昇させられる政治家は、どんな政治家でも素晴らしい政治家なのである。これが世の中の仕組みだ。

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日本もスタグフレーションが発生しているのはないか?

不確実性は日に日に増している。石油高騰、資源高騰、グローバルなサプライチェーンの寸断、中国のロックダウンによる半導体不足、ロシアへの強力な金融制裁による世界経済の悪影響、アメリカの利上げなどが同時並行で世界に襲いかかっており、こうした波は日本にもやってきている。

日本人は長らくデフレの中でぼんやり生きていたのだが、2022年に入ってからいよいよ物価高の脅威に震え上がるようになってきている。4月から起きているのは「怒濤の値上げラッシュ」と言ってもいい。

コーヒーも、紅茶も、しょうゆも、ケチャップも、マヨネーズも、ハムも、ソーセージも、ティッシュペーパーも、アイスも、チーズも、タイヤも、生麺類も、食用油も、アルコール類も、建設用素材も、ビールも、魚介類も、肉類も、すべて上がったか、これから上がる。

照明器具も、家電製品も、白物家電も、衣料品も、値上げした。鉄道運賃も、路線バスも、高速道路も、タクシー運賃も、値上げされたか、される予定だ。

しかし、税金は変わらない。考えなければならないのは、物価が上がるとその「上がった物価」に対して消費税がかかるので、値上げが消費税によってブーストされることである。

さらに、火災保険も、雇用保険も、上がる。

日本は消費税だけでなく、所得税、住民税、固定資産税、復興税、自動車税、ガソリン税、酒税、タバコ税、贈与税、相続税……等々、あらゆる税金を国民に科しているのだが、車を大切に乗って13年経ったら自動車税率を増税するという法律もこれから始まる。増税だらけなのだ。

そこに物価高が襲いかかってきているのだから、2022年はすべての人が悪影響を受けることになる。しかし、賃金はおいそれと上がっていかない。日本もスタグフレーション(不況にもかかわらず、物価が上昇すること)が発生しているのはないか。

そうなれば、ますます不確実性が世の中を覆い尽くす。

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悪いことが起きている時は悪いことがずっと続く

不確実性が増している時、どのように生きればいいのか。最も最適な答えは「自衛に徹する」ということではないか。

今、世界中で混乱が混乱を招く事態に突入している。世の中のすべては、自分に関係ないように見えて、何かしら関連して動いている。社会が混乱したら、その混乱から玉突きのように別の混乱が生まれ、さらにその混乱が別の混乱を生み出すのだ。

たとえば、ウクライナ侵攻がまた別の戦争を引き起こしても不思議ではない。

1. 戦争で世界経済が混乱したら貧困層が増える。
2. 貧困層が増えれば暴動が起きやすくなる。
3. 暴動が起きやすくなったら政権批判が起きる。
4. 政権批判が高じると政権が倒れる。
5. 政治が混乱すると社会全体が無秩序になる。
6. すべての国がその方向に向かっていく。
7. 暴動・内戦・侵略・戦争が起きやすくなる。

このような動きが起きたとしても不思議ではないのだ。

もちろん、楽観的な何かが起こり得るかもしれない。たとえば、世界各国が連携し、政治的指導力を発揮し、あっと言う間に諸問題が解決して、それを好感して株式市場が大暴騰し、実体経済でも人々が以前のように買い物したり、平和を分かち合う生活が戻るかもしれない。そういう出来事も起こり得る。

しかし、悪いことが起きている時は、トレンドとして悪いことがずっと続くと考えた方が確率が高い。とすれば、「時代が悪い時は防御に徹する」という姿勢を堅持するのは合理的な判断である。

私自身は「まだ最悪のピークが来ていない」と思っている。世界の諸問題は解決していないし、経済的混乱も始まったばかりだ。物価高で、これから人々の経済的な苦境が本格化するのだから、まったく楽観していない。

だから、私は2020年は無理なことは何もせず、防御に徹することが大切な生き方であると考えている。悪い時はじっと待つ。悪い時はじたばたしない。ダウングレードも受け入れる。今はそうやって生きた方が楽ではないだろうか……。

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