重要なのは「世の中を見通す能力」ではない理由と、代わりに必要な重要なもの

重要なのは「世の中を見通す能力」ではない理由と、代わりに必要な重要なもの

私たちは誰も「未来がこうなる」と予言することもできないし、「世の中を見通す」こともできない。こうなるかもしれないと予測することはできるが、その予測に賭けるのはギャンブルである。なぜなら、世の中はいつでも予期せぬことが起こり、軌道が変化するからである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

予測はできても、その通りになることなど絶対にない

私たちは誰も「未来がこうなる」と予言することもできないし、「世の中を見通す」こともできない。こうなるかもしれないと予測することはできるが、その予測に賭けるのはギャンブルである。なぜなら、世の中はいつでも予期せぬことが起こり、軌道が変化するからである。

権力者になっても、リーダーになっても同じだ。状況は見通せない。

たとえば日本で最強の権力者は「首相」である。しかし、岸田首相を見てみればいい。まったく世の中が見通せていないことがわかるはずだ。

岸田首相の支持率は、過去最低の27.8%、不支持率は62.8%で完全に「危険水域」に入り、自民党内でもいよいよ「岸田はダメだ」という声が上がるようになってきている。

このような事態になったのは、ひとえに岸田首相も世の中を見通せず、未来が見えなかったからでもある。もし、未来が少しでも見えていれば、これほどまで追い込まれていなかった。

何が起こるのかわからないし、どこからトラブルが発生するかもわからなかったから、政権がぐちゃぐちゃになってしまっている。

人間はまわりの状況をコントロールできない。これは、岸田首相に限らず、どんな権力者であっても同じだ。将来がどうなるのかなど、誰にも分からない。

世界に君臨する国家アメリカの、さらにそのトップにあるアメリカの大統領ですらもそうだ。大統領が信頼できると考える人間を集めて意見を聞いて決断しても、不確定要素が山ほどあって状況をコントロールできず、結果として最悪の事態に陥ったりする。

アメリカの巨大企業が、あるいは世界経済に君臨する一部の財閥が、世界を「こうしたい」という計画を作ってそれに邁進したとしても、やはり実現できないものも多い。

どれだけ有能で、どれだけ将来を見通す能力があっても、どれだけ実務能力があっても、AI(人工知能)がどれだけビッグデータを集約して結論を出しても、未来は思う通りにはならない。

データを分析して「将来どうなるのか」の予測はできる。しかし、その通りになることなど絶対にない。来年どうなるのかどころか、明日どうなるのかすらも分からないことが多い。約束されていることが実現できず、起きないと思っていたことが起きるのが世の中の常である。

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「反応」できる人はいるが「見通せる」人はいない

綿密な計画、万全の準備、抜群の才能、強大な資産と権力。何もかも持ち合わせていても、予想不能の出来事がすべてを狂わせていく。突発的要素があるから、世の中は常に自分の思う通りにはならないのだ。

誰の人生も順風満帆ではない。ある分野で頂点に達した人間であっても、その頂点が維持できるわけでも何でもない。予期せぬ事件や事態が重なって、計画を立てた時とはまったく違う状況になっていく。

妥協を余儀なくされ、末節の部分の一部は挫折し、一部は延期され、「こうしたい」という計画は最初とまったく違う形になってしまう。

だから、重要なのは「世の中を見通す能力」ではないことに気が付かなければならない。世の中に「反応」できる人はいるが、「見通せる」人はいない。

そもそも、将来を見通すことができれば、大学教授も評論家もアナリストも投資家も新聞屋も、全員まとめて超大金持ちになっているはずなのだ。

どこかの偉そうに御託を並べている評論家や新聞屋が誰も世界に君臨する大金持ちになっていないのは、世の中が見通せないからである。

日本では日経新聞がしばしば経済予測を書いていたりするのだが、当たることなどほとんどない。

そこに登場する専門家もひどいものだ。為替の予測にしても、誰ひとり当たらない。たまに「まぐれ」で当たることはあるが、その後は次々と外すのだからまったく当てにならない。

世の中で起きていることを分析し、予測を立てることはできる。大雑把に、「こうなるかもしれない」と考えることができる。しかし、どうあがいても絶対にその通りにはならない。

未来は何でもかんでも決まっていると思っているのは、子供とカルト教団の信者くらいだ。

現実を見ると、未来はどうでも変わるし何でも起きる。100%当たる預言も予言もない。だから、私たちが求めなければならないのは、間違えても「世の中を見通す能力」ではないのは確かだ。

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私たちが求めなければならない能力は何か?

正確に予測しようとしても必ず外れる。せいぜいできるのは「素早く反応する」くらいである。しかし、その反応も場合によっては裏目に出る可能性もある。将来はまったく何も決まっていないから、反応の方向もしばしば間違うのである。

そうであるならば、世の中がどうなるのかは正確を期しても意味がないわけで、せいぜい「大雑把に予測する」くらいが適当なところだ。さらに言えば、その予測すらも「当てにならない」と思うくらいの姿勢でいた方がいい。

その代わり、私たちが求めなければならない能力は何か。現実的なのは「想定外が起きても、そこから態勢を立て直す能力」でしかない。

私たちは、それなりに将来のことを考えるので、不測の事態に備えて何らかの準備をすることもできる。ところが、世の中は私たちの準備すらも上回る事件がしばしば起きる。すべての分野に関して、想定外は起きる。

だから自分の想定以上のことが起きても、そこから事態を立て直す能力が必要になって来る。追い込まれても、そこから粘り腰で生き抜く能力が必要なのだ。

想定外から事態を立て直す能力というのは、苦境の中でサバイバルする能力であると言い換えてもいい。

不意打ちを食らった瞬間であっても、自分の身に起きていることを客観的に見つめる。そして、その時点でベストの選択をする。これがサバイバルの能力だ。

現実を生きるというのは、まさに今の自分の逆境を切り抜ける能力を持つということでもある。今は順調でも、誰もが必ず逆境に落ちる。その中で、私たちは生き残る能力を持たなければならないのである。

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重要なのはアナリスト(予想屋)になることではない

予測できない打撃を食らうと、その瞬間に今までの順風が吹き飛ぶ。打撃が大きいと、今まで持っていた楽観も、予定も、計画も、何もかもが吹き飛んでしまう。

それこそ、人生における絶頂期に、突如として予測もしなかった打撃を受ける人もいる。最も幸せな瞬間が、一瞬にして崩れる瞬間だ。

あるいは、今まで何とか耐えてきたものが、不意の打撃によって崩れ、大きなダメージとなる人もいる。何とかしのげると思っていたものが崩れ去る瞬間だ。

世の中が予期できないということは、誰もがこの「不意打ちの打撃」を味わうということである。

これに対しては、準備することすらも不可能だ。準備できるというということは、予測できるということだ。予測できないというのは、準備すらもできないということなのである。

だからこそ「態勢を立て直す能力」が生きてくる。その能力があれば、受けたダメージを客観的に見つめ、そこから復活することができる。

今の私たちに重要なのは、アナリスト(予想屋)になることではない。そんな能力をどれだけ磨いても無駄だ。それは必要最小限でいい。

私たちが今の時代を生きる上で求められているのは、不意打ちのダメージからの「体勢立て直し能力」なのである。自分の受けた致命的なダメージさえも克服できる能力こそが、先の分からない時代に重要視される。

もちろん先を見通す能力を磨くのは無駄ではないし、ある程度の予測能力があっても邪魔にはならない。

しかし、予測を超える不測の事態が次々と起きる複雑化した現代社会においては、無駄に予測するよりも、受けた打撃から復活する能力の方を重要視した方が何かと役に立つ。それが、私たちを救う。

まさか、来年の動きが読めるとか思っていないだろうか。はっきり言おう。誰も来年に何が起きるのか読めない。運が良ければ予測通りになるかもしれない。しかし場合によっては起きないと思っていた想定外が起きて、手ひどいダメージを受けることもあり得る。

「態勢を立て直す能力」が予測するよりも重要だと考えるのが現実主義者の生き方だ。

『予測マシンの世紀: AIが駆動する新たな経済(アジェイ アグラワル, ジョシュア ガンズ, アヴィ ゴールドファーブ)』

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