2019年7月22日。安倍首相は「最大の課題は少子高齢化への対応だ」と認識を述べた。「少子高齢化は国難である」とも発言したこともある。私は自分の選挙区の人口を増やせない知事や地方議員にはペナルティを与えるべきだと考えている。また、少子高齢化問題に真剣に取り組まない政権は、解散すべきだと思っている。それくらい、この問題は危機的だと憂慮している。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)
2020年の日本は経済成長しない。ますます落ち込む
2019年。金融庁が「年金だけでは足りないので2000万円用意しろ」という内容の報告書を出して「2000万円なんか用意できない」と国民から袋叩き状態になってしまったのは記憶に新しい。
しかし、年金で生活できないのは自明の理なので「年金をアテにするな」という金融庁の指摘は奇異なものではない。むしろ、「貯金がなければ大変なことになる」という一種の警鐘だったとも言える。
そして、2020年2月4日。日本政府はさらに「高年齢者雇用安定法などの改正案」を閣議決定している。これは、従業員の70歳までの就業確保に努めるように企業に求めるものである。
この2つの動きをよく考えてみれば、政府が何を言っているのかその真意が見えてくるはずだ。政府は国民にこのように言っているのである。
「年金では生活できないから2000万円は貯めろ」
「それができなければ死ぬまで働け」
「2000万円貯めろ」とか「企業に70歳まで面倒みろ」と言ってくれているのだから優しい政府だと勘違いする人もいるかもしれない。しかし、政府が本当に優しいのであれば、消費税を引き上げるような無謀なことをするだろうか。
日本政府はアンダークラスに堕ちた国民がより困窮することを知っていながら、2019年10月から消費税を10%に引き上げるという愚行に走った。消費税は「消費したら罰金を取る」というものなのだから国民は消費を控える。
結果として日本はますます景気悪化に苦しむことになる。2020年の日本は経済成長するどころか、ますますマイナスに落ち込むのは、もはや決定的な事項になった。
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本当の意味の貧困は、ここからスタートする
景気が悪くなれば、当然「減税」をして少しでも消費を増やすべく、政府が先頭にたって音頭を取らなければならない。
しかし、日本政府に減税の意思はまったくない。
政府は日本の少子高齢化対策の無策と赤字国債の増大で首が回らなくなっており、もはや国民からの収奪で生き延びるしかないからだ。今後も、炭素税や携帯電話税など、ありとあらゆる新税が検討され、取り入れられるはずだ。
さらに政府はこれからも粛々と医療費負担も引き上げ、年金も減額し、年金受給年齢も引き上げていくことになる。
消費税の引き上げ。医療費の引き上げ。年金受給年齢の引き上げ。しかし年金受給額の引き下げ。こうした政策が波状的に続くと、もう高齢者自身も助かるかどうか分からないところまでいく。
日本は3人に1人が高齢者の国なのだから、本当の意味の日本の貧困は2020年代からスタートすることになる。高齢者は増税・年金減額にはこぞって反対するだろうが、今のままでは増税も年金減額も避けがたい。
これは高齢者たちにとっては死活問題になるはずだ。
始めは小さく始まるだろう。しかし、一度組み入れられた増税・年金減額は理由をつけてそれが拡大されていく。増税はどこまでも過酷になるし、それでも社会保障費が賄い切れないのであれば、年金はいくらでも減らされていく。
直撃を受けるのが団塊の世代だ。数年前まで団塊の世代は「逃げ切り世代になる」と言われていた。しかし、もうそんな楽観的なことを考えている人はどこにもいない。団塊の世代はまとめて貧困に落ちる確率が高くなった。
そもそも、今でも生活保護申請件数を膨れ上がらせているのは高齢者なのである。年金以外の収入がない高齢者から、国民年金で細々と生きて行く高齢者までが追い詰められている。
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カネもなく、行き場もない高齢者が増え続けている
日本政府は企業に「70歳まで就業の面倒を見よ」というのだが、いまや人生100年時代である。貯金もわずかで年金でも暮らしていけない高齢者は、経済苦を何とかしようにも、もう働くこともできない。
老人ホームに入るにしてもカネがいる。安いアパートに入るにしても断られ、介護施設にも入れない。今現在も、そうやってカネもなく、行き場もない高齢者が山のように増え続けている。
かつては、子供が親の面倒を見るのが当然だった。今はそうではない。そんな時代ではなくなってしまった。
日本人は1990年のバブル崩壊から、少しずつ少しずつ経済的な苦境に落とされ続けてきた。日本人は「金持ち」だと言われていたのだが、ふと気が付くと国民の多くが中間層から貧困層(アンダークラス)に落ちて苦しんでいる。
若年層を貧困に追いやり、中年層をリストラに追いやってきた社会は、逃げ切ったと思っている高齢者に襲いかかっていき、大量の困窮者と困窮による死者を生み出していく。
もうすでに、高齢者の孤独死を見ても分かる通り、そういう時代に突入してしまったのである。
少子高齢化は日本を亡国に導くものであると20年以上も前からずっと言われてきたのに、歴代の政権は少子高齢化問題に対してまったく危機感を抱くこともなく、日本の未来に想像力が働くこともなく、ただ「票にならない」というだけで放置してきた。
日本の国民も「若者が結婚しない、子供を産まない、老人が増える、人口が減る」ことに対して、何ら危機感を抱くこともなかった。
「少しくらい人口が減ったくらいでなんだ」「人口が減ったらロボットで代替したらいいじゃないか」という浅はかな想像力しかない日本人が大勢いて、結果的に少子高齢化は解決されることもなかった。
その結果、日本は徐々に衰退の道を歩むようになり、自分の首が絞まるようになり、今になって「日本はおかしい」と言い出し始めている。
気づくのが20年遅い。
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2020年以降から、一気に社会的劣化が進む理由
65歳以上人口は3515万人となっている。総人口が27万人減少する一方で、高齢者は44万人も増加していく。日本の高齢者の比率はもっと増えていく。
この高齢者人口の26%の相当数が困窮し、人口の20%近くを占める若年層も経済的な体力がなくなって困窮する。日本社会は、経済的自立ができない層が爆発的に増える。
しかも、社会の劣化と福祉の劣化も進んでいくので、どう考えても、孤独死、困窮死、餓死と言った壮絶な社会現象が続出するのは避けられない。こうした現象は、社会を劣化させ続けることになる。
地方を見ればいい。すでに、こうした劣化の兆候は、地方という日本の末端から生まれている。
地方は人口が減ったことによって、共同体が維持できずにどんどん崩壊しているのだ。(日本人は地方を見捨てるのか。2024年、少子高齢化で認知症が這い回る地獄絵図となる=鈴木傾城)
本来であれば、今からでも「生めよ、増やせよ」の社会を作り出さなければならないのだが、まったくそのような社会現象は起きていない。むしろ逆に、若年層の貧困化によって結婚も出産も減っていくばかりだ。
しかし、日本政府は為す術もなく、この少子高齢化問題を放置している。
2019年7月22日。安倍首相は「最大の課題は少子高齢化への対応だ」と認識を述べた。「少子高齢化は国難である」とも発言したこともある。
本当にそう思っているのであれば、日本を自滅させてしまう少子高齢化を解決するために一刻も早く動かなければならないのだ。もはや残された時間はほとんどない。
私は自分の選挙区の人口を増やせない知事や地方議員にはペナルティを与えるべきだと考えている。また、少子高齢化問題に真剣に取り組まない政権は、解散すべきだと思っている。それくらい、この問題は危機的だと憂慮している。