中国が経済的苦境に落ちると日本攻撃が起こる。処理水問題で騒ぐのもその一環だ

中国が経済的苦境に落ちると日本攻撃が起こる。処理水問題で騒ぐのもその一環だ

中国の国内経済が停滞し、不動産業界も苦境に落ちた。住宅価格の下落は、個人にとっては保有資産の大幅な目減りを意味している。中国人は大きな不満を習近平政権に持つようになった。それで中国政府は人民の不満を日本をそらそうとしている。それが処理水の問題だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

中国政府に国民の不満が向きはじめたとき

東京電力福島第一原子力発電所で発生した汚染水は徹底浄化され、人間や環境に与える影響を無視できる程度にまで処理された。この「処理水」を、日本は2023年8月24日より太平洋に放出しはじめている。

これによって中国・韓国では激しい日本批判が湧き上がり、中国に至っては日本産水産物の全面禁輸を発表し、さらに北京を含めた中国各地で塩の買い占めが起こるなどの大騒ぎとなっている。

現在、中国では不動産セクターが苦境に落ちているのだが、不動産セクターは中国にとっては巨大な成長エンジンである。何しろ中国のGDPに占める割合は不動産セクターだけで25%ほどあるわけで、このセクターが減速すると中国の成長そのものが減速する。

折しも、中国不動産開発大手である中国恒大集団の株式売買が2023年8月28日に再開されたのだが、その瞬間に一気に87%下落するという凄まじい状況になっている。他にも碧桂園(カントリー・ガーデン)が債務危機に陥っているのだが、その背景にあるのは開発物件の販売減少であった。

中国は2020年のコロナショックによって大ダメージを受け、習近平政権はゼロコロナ政策にこだわって中国経済を完全に萎縮させてしまった。そうした中で不動産市況が停滞するようになっている。

住宅価格の下落というのは、個人にとっては保有資産の大幅な目減りを意味しており、今の中国人には大きな不満が習近平政権に向いている。国民の不満が政府に向きはじめたら、中国が何をするのかは歴史的によく知られている。外に敵を見つけて不満をそちらにそらすのだ。

その矛先は、太平洋に処理水を放出はじめた日本に向けられた。

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「やられたらやり返す」ような度胸はまったくない

中国政府が声高に日本の処理水を攻撃する理由が「自分たちに向かってくる不満を日本のそらすため」であるならば、いくら日本が「処理水は適性に処理されている」と言っても問題は収束しない。

そもそも、中国が問題にしているトリチウム濃度にしても、日本の処理水は中国の原発から放出される水の半分以下の数値であり。トリチウム濃度を問題にするのであれば中国自身のほうが問題なのだ。

しかし、そういう「現実」は意味がない。中国の日本批判は別の意図があるからだ。「人民の不満を外にそらす」のが目的なので、処理水でなくても、歴史問題だとか半導体問題だとか、他にも何でも理由をつけて日本を攻撃してきただろう。

なぜ不満の矛先を日本に向けたのかというと、言うまでもなく日本は「弱腰国家」であり、岸田政権も例に漏れず「やられたらやり返す」ような度胸はまったくないからである。要はナメられているのだ。

ナメられていると言えば、中国はこれに乗じて日本を分断する工作を行っているようにも見える。処理水は危険だと煽ることによって、「問題ない」と考える国民と「問題だ」と考える国民の分断を日本国内でも煽る。

そうやって日本が分裂すればするほど日本社会が脆弱になっていき、中国が利することになる。

日本には共産主義になびく左翼も暗躍してマスコミに潜り込んで公然と活動しているし、そういう左翼に感化される一般人(デュープス=左翼に利用されている人々)も大勢いるので、中国の分断工作は影響を持ちやすい。

本来であれば、こうした工作を分かった上で対処されなければならないのだが、日本の政権は愚鈍な上に弱腰なので何もしないで放置したままだ。かくして、処理水問題で日本は後手後手に回っている。

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中国に媚びを売って事態を収めようとする日本政府

中国共産党に煽られた中国人たちが、福島県のレストランチェーンに「死ね、バカ」と罵倒の電話を入れまくっている。対日感情は悪化して、インバウンドにも影響している。「処理水を放出する日本に観光なんか行けない」と中国人観光客が日本に行くのをやめている。

中国人観光客が大挙してやってくると、またコロナ前のように醜悪な観光公害が発生するのが懸念されていたのだが、中国人が向こうから「日本はお断りだ」というのだから、本来であれば朗報ですらある。

中国は反日国家で価値観も共有していない国なのだから、日本政府もこれを奇貨として積極的に中国と縁を切っていけばいいのだ。

中国自身が「日本の海産物を全面禁輸」みたいな処置を取って日本切りしているのだから、日本は「今後30年、日本は処理水を放出し続けるので中国人は日本の海産物をいっさい食べるな」と宣言して、中国切りすればいい。

中国人を日本から排除し、日本の食も中国ではなく日本で消費する。

そうすることで中国に海産物を奪われるのを避ければ、日本にとっても将来は良い。そもそも、なぜ日本の豊かで旨い海産物を中国人に食わせて、日本人が中国の輸入品を食わなければならないのか。そちらのほうが異常である。

中国政府がそれをやっているのだから、日本はむしろ中国切りのために積極的にそれを手伝って、完全に縁が切れるように努力していけばいい。「中国という市場は大きい」とか言っていないで、内需を拡大するとか、中国以外の市場を開拓していけばいい。そういう時期に入っているとも言える。

しかし、弱腰の日本政府は中国に戻ってきてほしいのか、やたらと中国に媚びを売って事態を収めようとしている。

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「敵性国家」とはなるべく関わりを減らしておく

中国共産党政権は傲慢であり、アンフェアでもある。中国のハイテク企業がしばしばバックドアを利用して意図的にユーザーの個人情報を抜いたりしているのがよく報道されるのだが、そのハイテク企業の内部には中国共産党のグループがあって、政府の意向に逆らえないようになっている。

そして、バックドアを利用して、他国や他者の知的財産や重要技術を片っ端から盗んでいく。中国企業は海外企業の特許、商標、著作権などの知的財産権を侵害することにまったく何の躊躇もない。

国外の企業や行政や大学にスパイを送り込んで極秘技術や最先端研究や企業秘密を盗んでいくようなこともしている。

西側諸国が中国を見限って、グローバル経済から分離させ、中国から脱出しようとしているのは当然のことなのである。「中国という市場は大きい」とか言って、中国に媚びれば媚びるほど、中国をつけ上がらせて最後には情報も財産も何もかも盗まれて泣きを見る。

「中国を切る」のは正しい動きなのである。

だからこそ、日本政府は処理水の問題で中国から日本を切ろうとしている動きを逆に利用して中国を切り捨てていくように動く必要がある。

「中国人がやってこない」「爆買いが起きない」ということで、日本国内ではインバウンドを当て込んで買われていた企業が軒並み売られている。百貨店各社、ドラッグストア各社、化粧品各社、ディスカウント店各社がすべて、処理水問題の件で株が売られた。

そういうのを見ると、経団連などは「やっぱり中国と仲良くしないと損する」と恐れおののくのだが、こういう中国依存を断ち切るところから「中国切り」をやっていかなければ先に進まない。

価値観を共有しない「敵性国家」とはなるべく関わりを減らしておくのは、長い目で見ると日本にとっては国益となる。果たして、岸田政権がそこまで頭が回るかどうか疑問だが……。

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