「紙幣・通帳」のこだわりが日本の銀行を滅ぼす元凶になる

「紙幣・通帳」のこだわりが日本の銀行を滅ぼす元凶になる
日本人は紙幣(紙のお金)に価値を置き、それを管理するのに銀行に預け、自分がいくら貯金しているのかを「紙」の通帳で管理するスタイルに馴染んで、そこから離れようとしない。

しかし、デジタルがすべてを制して効率化と合理化とスピード化に向けて突っ走っている現代、「紙で管理する」という方法は時代遅れも甚だしい。

紙は汚れる。紙は破れる。紙はなくす。数えるのも大変であり、保管も大変であり、持ち運びも大変だ。さらに、預けた紙幣は、いちいち銀行を探してATMでそれを引き出さなければならない。

紙という媒体のために、人間が右往左往しているのである。

それしか手段がない時代であれば、人間は紙の不便さに我慢するしかなかった。

しかし、インターネットが重要なインフラとなって、すべてがデジタル化に向かって収斂している今、もう不便さに我慢する必要はなくなっている。

現代社会は、現金を紙で管理するという非効率さを捨てることができるようになりつつあるのである。いずれ、紙にこだわっている人は、その管理費を負担せざるを得ないようなシステムに変わっていく。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

紙の通帳の発行や維持、口座維持は有料になる?

日本は今のところ銀行口座の残高がゼロであっても手数料はかからない。しかし、これは国外から見るとかなり珍しい部類である。今まで銀行が口座維持の負担をかぶっていたのだ。

しかし、銀行の収益環境が悪化している今、いよいよこうした部分にメスが入ろうとしている。

2018年1月18日、全国銀行協会の会長であり、三菱UFJフィナンシャル・グループの社長である平野信行氏は、「手数料の形は理屈としてはあり得る。お客さまにとっての価値を十分考えた上で今後も検討する」と記者会見の中で述べている。

三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行の3メガバンクは口座手数料、あるいは通帳発行の有料化に向けて動いているのだ。

「紙の通帳の発行は有料になる」
「紙の通帳の維持は有料になる」
「口座の維持管理は有料になる」

3メガバンクがこうした動きを実現させると、今後は地方銀行もまた横並びで同じ動きを見せるようになるのは必至だ。

マイナス金利で収益環境が悪化していることや、企業の資金調達方法が多様化したことや、すでにインターネットを駆使して口座を管理している人たちが増えていることが背景となって、すべての銀行は店舗網や窓口業務を維持する経費に苦しんでいる。

さらに日本の銀行は、小銭なども計算できるような高度で高額なATMの購入と維持メンテに莫大な金を使っている。

つまり、日本の銀行は紙幣や通帳を維持するのに莫大なコストをかけている。だから、銀行は今後の収益悪化の時代を見越して、今からコストを削減したいと痛切に考えているのだ。

コストを削減するには、例の如く「人件費を削減する」のが最大にして最高の効果が見込めるのは言うまでもない。

実際、銀行はすでにコスト削減策を2017年から本格化させている。三菱UFJ銀行は9500人の削減、三井住友銀行は4000人の削減、みずほ銀行に至っては1万2000人の削減を発表している。

旧態依然とした世界にこだわって前が見えない?

紙の通帳の発行・維持費が有料になることで、多くの預金者が「今まで無料だったのにどういうことだ」と怒りを爆発させているのだが、日本人は眼を覚まさなければならない。

全世界の銀行が「紙幣・通帳」を排除し、窓口業務を縮小し、ATMを削減し、インターネットにシフトして生き残りをかけている。

欧米の人々はとっくに、紙幣からも紙の通帳からも離れて、インターネットでのやり取りにシフトしている。

そして、その延長にフィンテックやブロックチェーンという巨大なイノベーションがある。すべての銀行、すべての企業が、生き残りをかけてフィンテックやブロックチェーンの取り込みに必死になっている。

そこでサバイバルできないと、企業はあっと言う間に時代遅れになって淘汰されてしまうからである。

個人も同じだ。利便性・合理性・スピードは、すべてインターネットに集約されており、それが使えない人はどんどん時代遅れになり生きていけなくなる。

ところが、日本人は頑なに時代遅れの「紙のお金、紙の通帳」にこだわって、銀行にもそれを維持するように強く要求し続けている。

そして、日本の銀行そのものに世界でも類を見ないほどのコストを負担させ、企業体力を奪い、時代遅れにさせている。

はっきり言おう。日本人はどうかしている。

日本人が、自分たちだけでなく、グローバル化した世界で熾烈な生き残り競争をしている日本企業の足を引っぱって競争力を削ぎ落としているのである。

これは、銀行だけではない。日本人は折り畳み携帯電話からスマートフォンの移行でも頑なに携帯電話にこだわって日本の家電メーカーに折り畳み携帯電話を作らせて時代遅れにして凋落させた前科もある。

このままでは、日本人のみならず、日本企業までもがイノベーションを採り入れることができず、全部まとめて次の世代に凋落してしまうのは想像に難くない。

日本人はイノベーションを拒み、旧態依然とした世界にこだわって前が見えなくなってしまっている。また、未来に向かって突き進む気概も好奇心も能力も失ってしまっている。

要するに日本は最先端から遅れつつある。ところが、ほとんどの人が「日本が時代遅れになっている」ことに気付いていない。これこそが亡国の道だ。

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「次の時代のために、日本人は紙から脱却せよ」

フィンテックやブロックチェーンという次世代のイノベーションが全世界を変えようとしつつある。

その結果、欧米の人々はすでに紙幣から脱却しつつあるのだが、さらにアメリカの巨大ハイテク企業の経営者たちは、「銀行そのものも消える」と予測している。

すでにアップルやグーグルは「アップル・ペイ」や「グーグル・ペイ」でスマートフォンを使った巨大な決済システムの構築と運営に成功しており、次には必ずブロックチェーンに乗り出していく。

アマゾンもブロックチェーンの研究を秘かに進めており、いずれはブロックチェーンで構築されたデジタル・マネーで買い物ができるようにするはずだ。

これは、巨大ハイテク企業が「通貨・決済・管理」のすべてを世界規模で掌握するという意味である。

すでにビル・ゲイツは「銀行機能は必要だが、今ある銀行は必要なくなる」と発言している。それは現実になっていく。

銀行業務は預金だけでなく、貸付や金融商品の営業もあるのだが、こうしたものも対面が消えてウェブや人工知能に取って変わるのは確実だ。

そうなると、現在のハイテク企業が銀行というビジネスをハイジャックすることになる。紙幣・通帳がなくなるどころか、銀行がなくなるかもしれないのだ。

だから、欧米の銀行はこの重要なイノベーションの前に、生き残りの足がかりをつかもうと莫大な研究費を投じて生き残りをかけている。

ところが、日本人は相も変わらず紙幣や通帳という「紙」にこだわって前が見えておらず、ガラパゴス化の落とし穴に自らはまろうとしている。

もし、「紙」にこだわることが日本のためにならないと気付いたのであれば、個人は自ら率先して「紙」から脱却し、「紙を使わないライフスタイル」を構築し、それが成り立つ社会に向けて動かなければならない。

そして、すべての実業家は「次の時代のために日本人は紙から脱却しろ」と強く訴えなければならない。

ここで日本をガラパゴス化させたら、次の時代の日本は致命的なまでに凋落してしまう。古臭い意識の中で生きている日本人を説得すべきだ。(written by 鈴木傾城)

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日本人は相も変わらず紙幣や通帳という「紙」にこだわって前が見えておらず、ガラパゴス化の落とし穴に自らはまろうとしている。

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