政治家たちはパーティーを開いて酒でも飲みながら裏金づくりをしつつも、国民には「もっと税金を取りまくれ」という政策を押しつける。そういうわけで、私たちはどれだけ収入が増えたとしても、税率もどんどん引き上げられる。手取りは今後も減るばかりだ。(鈴木傾城)
プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)
作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com
出費だけではなく、税金も多くかかってくる
どれだけ年収が高い人であっても、彼ら全員が大きな貯金を持っているわけではないし、老後は悠々自適になるわけではない。
日本では年収1000万円は年収が高い部類だが、彼らも「貯金ない」としばしば報道されるのを目にする。なぜ、そうなってしまうのかというと、彼らは年収が高いということもあってかなりの出費をしてしまったり、べらぼうな税金がかかったりするからでもある。
高い家賃のマンションに住み、高級車を買い、何度も贅沢な海外旅行に行き、高級な店で外食し、趣味に金を注ぎ込み、子供がいるのならば教育費を湯水のようにかける。そんなことをしていたら貯金なんか貯まるわけがない。むしろ、赤字になってしまうことすらもある。年収と貯蓄額は比例しないのだ。
出費だけではなく、税金も多くかかってくる。
税金に関して言えば、多くの人々がきちんと納税しているから日本社会は成り立っているし、それによって日本は住みやすくなってる。社会保障を維持していく上では必要なものでもある。
しかし、日本の国民負担率はすでに5割となっており、厳密に計算すれば6割近いのではないかというのが現状だ。はっきり言って「取り過ぎ」なのだ。とくに高所得層などは、がっぽりと税金を取られることになる。
とにかく、稼げば稼ぐほど取られていく。最高税率までいくと住民税と合わせて半分近くは税金で取られる。この所得税は段階的に高くなっていく仕組みになっており、だから税率が一定にするために法人化を考える高所得者も多い。
法人税だったら最高税率が23.4%で抑えられるからである。しかし、起業するにしても経営リスクもあれば運用費もかかるので、法人化すれば支払いが絶対に減るわけではない。何をしても「支払い」から逃れられない。
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私たちの手取りは「もっと」減っていくのは避けられない
社会保険料も今後はさらに増えていく。それは、もはや止められない。
昨今の日本の政治家は無能としか言いようがないので、日本を30年近くも経済成長させることができなかったし、今後も日本を成長させる能力なんかない。少子高齢化の解決もすることができない。
少子高齢化について言えば、10年も20年も前から「このまま放置していたら社会保障が成り立たなくなる」と激しく警鐘が鳴らされていたのである。にもかかわらず、政治家はこれを本気で解決しようとしなかった。
その結果として、社会保障費が増大し、経済成長が低迷し、労働力が不足し、地域の活力の低下するという問題が顕著になって日本社会を瓦解させようとしているのだ。
昨今の外国人の大量流入による文化的軋轢や外国人犯罪にしても、少子高齢化を放置したから労働力の不足が発生して、経済界が「外から安い労働力を連れてくればいい」と考えた結果として起こっている問題だ。
地域の活力の低下も、人口がどんどん減って高齢者ばかりとなるのだから共同体が維持できなくなっていくのだから、起こるべくして起きている現象である。すべて、少子高齢化がもたらした問題なのである。
政治は、もう30年も何もできなかったのだから、これから何かできるとは思えない。絶望的なのは、与党である自民党・公明党が無能なだけでなく、野党はもっと無能極まりないことである。
もはや政治に期待しても無駄な状況になっているのが今の日本だ。政治的に言えば「詰んだ状態」なのである。この「詰んだ状態」の中でも、着々と働く世代が消えていき高齢者が増えていく。そのため、社会保障費はもっと逼迫していく。
だから、社会保険料も今後はさらに増えていき、私たちの手取りは「もっと」減っていくのは避けられない。稼いでも稼いでも、税金で取られていく。
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国民からは「もっと税金を取りまくれ」という政策
2022年の統計で見ると、日本の総人口は前年に比べ82万人減少している一方で、65歳以上の高齢者人口は3627万人となり、過去最多となっている。日本の人口ピラミッドのいびつさは今後もずっと続いていくのだ。
昨今は医療の発達も進み、高齢層も「死にたくても死ねない人生100年時代」に突入していくことになる。高齢者の増加は止まらない。そして、私たちの社会はもっと多くの社会保険料を要求することになる。
政治家たちは、自分たちはパーティーで酒でも飲みながら裏金づくりをしつつも、国民からは「もっと税金を取りまくれ」という政策で押し切る。その方針を「骨太の方針」とか気味悪い比喩で言うのである。
そういうわけで、私たちはどれだけ収入が増えたとしても、税率がどんどん引き上げられるので手取りは減るばかりとなるのは間違いない。
岸田首相は「令和の所得倍増」とか言って首相になったのだが、手取りが上がっているのは政治家だけなのである。国民はすでに19か月連続で実質賃金がマイナスなのだ。「明日は今日よりも良くなる」とか能力のない政治家に言われても「ふざけるな」と言うしかない。
岸田政権があまりにも搾取政権なので、国民も呆れ果ててすでにこの政権の支持率は20%台に転がり落ちてしまっている。空虚な言葉だけで国民の所得を減らすばかりの政権には、もはや未来がない。
しかし、岸田政権の次は何か期待できるのかと言われれば、何も期待できそうにない。政権が変わっても、少子高齢化も日本の経済停滞も変わらないからだ。さらに言えば、こうやって政治が停滞・混乱すればするほど、日本の現状はますます解決不能になっていくということだ。
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現金はどんどん消えていくが、どんどん残ることはない
結局どうすればいいのかというと、税金を取られて取られて取られまくって少なくなった手取りを、自分で貯めていくしかないという単純な結論にいきつく。
もちろん、出世するとか副業をするとか起業するとかの手段で手取りを増やしていける人はいいのだが、そういう才能やゆとりがないのであれば、「手元にある現金を貯める」しか手段は残されていない。
現金はどんどん消えていくが、どんどん残ることはない。
ここ数年の動きを見てもわかるとおり、世の中は想定外の出来事で予期せぬ経済的ショックが訪れることがしばしば起こる。
2019年まで私たちは数年に及ぶパンデミックで経済活動が止まるなど予測もしなかった。コロナ禍が終わったら物価上昇の波に飲まれて実質賃金が減るというのも想像しなかった。
消費者物価指数を見ると、物価上昇は2022年1月から急激に上がっている。予期せぬ経済的なショックがきて収入や賃金の低下があったとき、多くの人にとって頼りになるのは間違いなく「貯金」であったはずなのだ。
自分が貯めようと思わない限り「貯金」は増えていかない。だから、時代が悪くなればなるほど「貯金を増やしておく」という考え方をしておかないと、いざとなったときに生き残れない。
政治家の無能は、日本人をじわじわと経済的苦境に落とし、あるとき一瞬にして底が抜けて全員をまとめて極限に落とす。
残念ながら日本がもっと経済環境・社会環境が悪化するのは確定してしまっているので、日本がもっと悪化したときに、自分が取れる選択肢を増やしておくしかない。そのとき、貯金が多ければ多いほど採れる選択肢が増える。