ワルは「平和を守れ」と言って相手に平和を押しつけて、自分たちは暴力を振るう

ワルは「平和を守れ」と言って相手に平和を押しつけて、自分たちは暴力を振るう

平和など鼻から馬鹿にしており、欲しいものを奪うためには戦争をも辞さない国が中国であり、そんな国が虎視眈々と日本を狙っているのに、『戦争を知らない子供たちさ』などと能天気に歌っていたら「こいつらは馬鹿なのか?」と世界から思われるだけである。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「平和を守れ」「戦争はしません」という誰も否定できない言葉

「美しい言葉」は犯罪者の手にかかったら一瞬で乗っ取られる。日本人は良くも悪くも「人が良い」ので、無邪気で、無防備で、相手を疑うこともなく簡単に信用し、影響される。

だから、そのような「お人好し民族」には美しい言葉を「乗っ取る」ことでコントロールすることが可能になる。

どういうことか。

たとえば「平和を守れ」「戦争はしません」と戦後の日本人がずっと唱えてきたこの不戦主義の言葉はとても美しいものであり、すべての国のすべての人が心がけて欲しい誰も否定できない言葉である。

1971年に大流行したフォークソングがある。ジローズというフォークバンドが歌った『戦争を知らない子供たち』という歌だ。

現在の団塊の世代が青春時代に皆で唱和していた歌であり、ある意味では彼らの思想を象徴するものなのだが、この歌も「平和を守れ」「戦争はしません」の精神が貫かれている。

「平和の歌をくちずさみながら歩き始める」とか「青空が好きで花びらが好きでいつでも笑顔の……云々」と歌詞にはある。この時代、日本は灰燼と化した国土から高度成長期で蘇り、アメリカがベトナムで大量殺戮に等しい戦争を繰り広げてアジアが騒然としていた頃だった。

「日本はもう悲惨な戦争はしたくない、平和が一番」という感情が子供から大人にまで横溢していた。「平和を守れ」「戦争はしません」という言葉は、誰も否定できないものであった。

この時代から50年経った現在、まだ日本人は「平和を守れ」「戦争はしません」という言葉に酔っている。

特にひどいのが団塊の世代だ。『戦争を知らない子供たち』みたいな世界観を青春の時に味わった彼らは、もはやこうした言葉を疑うことすらもない。洗脳されている状態だと言ってもいい。

実は、歌の世界は危険なのだ(ブラックアジア会員制:無意識を自覚。自分が何に洗脳されているか一瞬で知る方法

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自国民を周辺国の外側に送り出して領土を拡張していく

当時の団塊の世代の若者たちが肩を組んで『戦争を知らない子供たち』を歌っていた熱い時代から50年経つと、世の中は激変していた。

最も大きな動きだったのは、1990年代から日本はバブル崩壊で苦しむようになり、それと軌を一にして中国がグローバル経済の中で台頭していくようになったことだ。

中国の台頭はアメリカの巨大多国籍企業が「中国を市場として育てることに決めた」ので成し遂げられたものだ。

しかし、いざ中国が巨大な国家になっていくと、今度は国際社会のルールなど無視で傲慢な振る舞いをするようになり、軍事的にも危険な国家へと変貌して手が付けられなくなっていた。

特に習近平が国家主席となったあたりから、中国は世界に対する野望を隠さなくなっていった。

中国は膨張主義である。大量の人口を背景にして、自国民をどんどん周辺国の外側に送り出して領土を拡張していく。その犠牲になっているのが、チベットであり、ウイグルであり、モンゴルであった。

中国共産党政権はそこに住む民族から文化を奪い、ありとあらゆる方法で民族を虐殺・抹殺し、漢民族を入植させて土地も文化も資源も奪っていく。国際社会がどんなに批判しても「内政干渉するな」と逆ギレして取り合わない。

この中国の膨張主義はチベット・ウイグル・モンゴルで止まっているわけではなく、インドの国境でも問題を起こし、一帯一路でアフリカや東欧の侵略まで狙っている。

さらに東側では台湾の侵略を視野に入れており、南沙諸島や尖閣諸島や沖縄も虎視眈々と狙っている。

香港はすでに中国に奪われてしまった。(ブラックアジア:香港はすでに中国に侵略された。香港の自由や民主主義はもう二度と戻らない

中国は膨張していき、「弱い箇所」からどんどん奪っていく。「香港の次は、台湾が侵略される」と思っている人もいるかもしれないが、別に中国共産党政権は侵略に順番を付けているわけではない。中国は「弱いところ」から奪っていく。

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「これから俺は暴力を振るうが、お前は平和を守れ」

当たり前だが、日本が弱ければ日本も侵略の対象となる。中国は「侵略の意図」を持って尖閣諸島や沖縄を獲ろうとしているのだが、日本は国防として自衛隊を抱えているので、まだ手足が出せない状態にある。

しかし、もし日本が自衛隊を持っていたとしても「動かせない」のであれば、中国はさっさと尖閣諸島や沖縄を獲ってしまうだろう。そして、全世界に向けて「元々これらは中国の領土だった」と歴史プロパガンダを全世界に垂れ流して実効支配する。

日本に自衛隊があるとしても、手出しをさせないためにはどうするのか。

その手段として「平和を守れ」「戦争はしません」という言葉を侵略の目的で使用するのである。暴力を持った者が、これから侵略する相手に「平和を守れ」「戦争するな」と言い聞かせる。

通常、「平和を守れ」「戦争するな」というのは自分自身に言い聞かせる言葉である。しかし、悪人はこの言葉を乗っ取り、自分ではなく相手に押しつける。それによって、相手を殴りつけて奪うのだ。

「美しい言葉を乗っ取る」というのは、そういう意味である。本来は自国の戒めにすべき言葉を、侵略のために使う。悪意を持って、その美しい言葉を相手に押しつける。そして、自分は傍若無人に暴力を振るう。

「これから俺は暴力を振るうが、お前は平和を守れ」

このように言われたら誰でも「何を都合の良いことを言っているのか」と激怒するはずだ。こんなことを言っているワルは「まぎれもなく犯罪者である」と認識するはずだ。

しかし、ワルが「これから俺は暴力を振るうが」という部分を言わなければ、このワルの言っている言葉は「平和を守れ」という美しい言葉になるので、ワルがあたかも平和主義者のようになる。

美しい言葉を暴力のために使う。「平和を守れ」「戦争はしません」という言葉を相手に押しつけるというのは、ワルにとっては侵略を容易にするための策略でしかない。「騙された方が馬鹿」なのだ。

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他にも「日本人だけが押しつけられる美しい言葉」がたくさんある

日本人は策略を好まない民族だ。策略を考えることもない。策略で儲けることも考えない。日本人は「誠心誠意」「真心」「お客様は神様です」的な精神で物事に当たり、「騙してやる、騙された方が悪い」という行動は取らない。

しかし、孫子みたいな他人を騙すためのノウハウの古典をバイブルように読んでいる中国人は「騙された方が悪い」のであって、騙せる相手ならとことん騙す。

そんなわけで、日本民族が「お人好し民族」で、美しい言葉で簡単に騙せるのだと分かったら、いくらでも美しい言葉を日本人に投げかけて日本人を都合良くコントロールしようとする。

「平和を守れ」と日本人に押しつけて、武力を領土を奪う。
「戦争するな」と日本人に押しつけて、武力を領土を奪う。

平和など鼻から馬鹿にしており、欲しいものを奪うためには戦争をも辞さない国が中国であり、そんな国が虎視眈々と日本を狙っているのに、『戦争を知らない子供たちさ』などと能天気に歌っていたら「こいつらは馬鹿なのか?」と世界から思われるだけである。

日本人は無邪気で、無防備で、相手を疑うこともない。日本人と日本人の間ではそれでも良かったのかもしれないが、日本vs他文化との関わりの中では、そんな美しいものは通用しない。

だから、日本人が最も気をつけなければならないのが「美しい言葉」なのである。

(俺は暴力を振るうが)お前は平和を守れ。
(俺は戦争を仕掛けるが)お前は戦争するな。

日本はいつまでも「道徳の時間」なんかやっている場合ではない。他にも日本人を思考停止にする「美しい言葉」のワナがいくつもある。こうした言葉が乗っ取られたら、日本人は容易に騙されて国を失うことになる。

今の私たちが気をつけなければならないのは、このような「美しい言葉」なのだ。それはワルによって、いともかんたんに乗っ取られ、都合良く使われるからだ。

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