ロスチャイルドの情報で儲ける動きが、そのまま高度情報化社会の基礎になった

ロスチャイルドの情報で儲ける動きが、そのまま高度情報化社会の基礎になった

情報は「武器」であることを意識して、徹底的に情報網の構築を作り上げていった財閥こそがロスチャイルド一族であったとも言える。正確な経済情報そのものを先読みできれば、資本主義社会の中で凄まじく有利であるということがロスチャイルド一族の歴史で分かる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

銀行家・投資家であった彼らが諜報機関を設立した理由

CIA(米中央情報局)は世界最大の諜報機関である。CIAは特定のミッション(反米指導者の暗殺、左派勢力の弱体化、反政府組織の援助)を遂行する諜報機関としての側面が強調されているのだが、実際には全世界から生の情報を徹底的に吸い上げる「情報収集機関」である。

このCIAが吸い上げる情報は、もちろん各国の政治情勢であったり、軍事情勢であったりするのだが、その中でも重要な役割を果たしているのが「経済情報の収集」でもあるのはあまり知られていない。

なぜ経済情報の収集なのか。

このCIAの前身は「OSS(Office of Strategic Services)」という組織だった。日本語で言うところの「戦略諜報局」である。このOSSを設立したのはジェームズ・ウォーバーグやジョン・ピアポント・モルガンであったのは周知の事実だ。

彼らは銀行家であると同時に投資家でもあった。銀行家・投資家であった彼らが諜報機関を設立するのは奇妙なことにも思えるが、突き詰めて考えれば不思議でも何でもない。

銀行家としての政策立案や投資のストラテジーの構築にどうしても必要なのが「正確な情報」である。まずは銀行家・投資家にとって、「正確な情報」が手に入らないと正確で的確な決断が下せない。

彼らの戦略や投資にはアメリカ合衆国の未来もかかっていたのでなおさらだ。

だから、軍の精鋭を引き抜いて正確な情報を素早く手に入れる組織が必要だったのだ。それがOSSであり、後のCIAであった。銀行家・投資家であったから、諜報機関が必要だったということだ。

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「ワーテルローの戦い」でロスチャイルドがやったこと

ある時、ジョン・ピアポント・モルガンは、「これからの株式市場はどうなるのか?」と記者に尋ねられたことがあった。この時、モルガンはただ一言このように答えた。

「変動する」

株式市場は停止することはない。上か下かに必ず変動することになる。確率は上下ともに50%なのだが、それを見極めるのは至難の業だ。もし、その動向を正確に知ろうとするのであれば何か必要なのか。

それは言うまでもなく「正確な情報」である。

株式市場は情報によって突き動かされている。そのため、正確な情報をつかんでいる人間が莫大な富を手にいれることになる。これに関しては、世界最強の財閥であるロスチャイルド一族が最もよく知っていた。

ロスチャイルド一族の情報戦での劇的な勝利でよく引き合いに出されるのは「ワーテルローの戦い」での立ち振る舞いである。

1815年当時、フランス陣営とアメリカ陣営は激しい対立と衝突を繰り返していたのだが、フランス側の指導者がナポレオン・ボナパルトだった。

ナポレオンが勝てばイギリス国債(コンソル公債)は暴落する。イギリスが勝てば逆にこの国債は暴騰する。イギリスが勝つか負けるのかの情報をいち早く察した人間が投機に勝つことになる。

ネイサン・ロスチャイルドは、この当時から「情報通」として知られていたので、すべての投機家はロスチャイルドの動きに注目していた。ネイサン・ロスチャイルドはどうしたのか。最初にイギリス国債を売った……。

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正確な情報こそが投資家としてのポジションを守る

これによってすべての投機家が、「イギリスは負けたのだ」と察してイギリス国債を大量に投げ売りし始め、国債は紙くず同然になった。その時、今度は逆にロスチャイルドは猛然とイギリス国債を買いまくっていった。

ところが、イギリスは戦争に勝っていたのである。ネイサン・ロスチャイルドは自ら構築していた情報網を通して最初からそれを知っていた。そこで、まわりの投機家をワナにかけながら、自分ひとりでぼろ儲けをしたのだった。

正確な情報を手にれていたら、うまく立ち回ることができて最後に大儲けができる。1800年代にそれを理解していたのがネイサン・ロスチャイルドである。

この希有な事業家こそ情報の重要性を理解して、それを金に変えることができた事業家であったと言える。

そう考えれば、後にウォーバーグやモルガン一族が諜報機関を設立して自分たちがそこに居座った理由が分かるはずだ。正確な情報こそが銀行家や投資家としてのポジションを守るのだ。

実際、この国家レベルの諜報機関であるOSSを利用して、ウォーバーグやモルガン一族はより巨大な財閥へとなって一族の資産を爆発的に膨らませていく。

ところでロスチャイルド一族は、OSS・CIAと無縁だったのか? まさか。ロスチャイルド一族はウォーバーグ一族と血縁関係を結んで閨閥を作り上げており、ウォーバーグの利益はそのままロスチャイルド一族の利益にもなったということだ。

またロスチャイルド家の代理人であったジェイコブ・シフがモルガン一族とも連携してウォール街の銀行連合を作り上げている。ロスチャイルド一族は無関係どころか、むしろ銀行連合の中核にあったとも言える。

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だから現代社会はさらなる高度情報化社会になっていく

情報は「武器」であることを意識して、徹底的に情報網の構築を作り上げていった財閥こそがロスチャイルド一族であったとも言える。

正確な経済情報そのものを先読みできれば、資本主義社会の中で凄まじく有利であるということが分かる。

資本主義が「高度情報化社会」に向かっていったのは、勝手にそうなったのではない。ロスチャイルド一族の「情報で儲ける動き」が、そのまま高度情報化社会の基礎となっていたのだ。

1800年代からすでにロスチャイルド一族は、正確な情報をつかむためにドイツ、フランス、イギリス、オーストリア、イタリアの5カ国に拠点を置いて、一族に情報が流れ込む体制を作り上げている。

1. 一族をそれぞれの国に分散させる。
2. 多岐で正確な情報を手に入れる。
3. 情報を使って金融市場で儲ける。

この三点がロスチャイルド一族の富の源泉だったわけで、この手法が莫大な富を生み出していると分かった以上、現代の資本主義が「高度情報化社会」にひた走ったのは当然だった。

資本主義は「儲かる方向」に発展する。だから、現代社会はさらなる高度情報化社会になっていく。

情報を制するものが社会を制する。

新しい情報で「莫大な富」が転がり込んでくるシステムであるのは今も変わらない。新しい情報は、カネの匂いを放つ。だから、人々は新しい情報を手に入れようと躍起になっている。

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