日本はハードに強い国だ。軍産複合体こそが日本の復活の狼煙(のろし)となる

日本はハードに強い国だ。軍産複合体こそが日本の復活の狼煙(のろし)となる

中国は200発超の核弾頭を保有し、今後10年間で少なくとも倍増させる見通しなのに、日本はと言えば岸田首相が率先して「核兵器のない世界」とか子供みたいな理想論を言っている。日本では首相すらもお花畑の空想家なのである。政治家すら子供っぽい。これは背筋が凍る現実である。


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

日本では首相すらも、現実主義ではなくお花畑の空想家

中国は凄まじい勢いで防衛費を積み上げており、年間の国防費は約24兆6577億円となっている。日本の防衛費は約5兆4000億円なので、防衛費は日本の4倍以上になっている。しかも、中国のこの国防費は「公称」であり、実際にはもっと巨大であるというのが米国防省は分析している。

さらに中国政府は、民間の機微技術や大学の研究などを軍事に転用する「軍産複合」も積極的に行っている。中国政府が各国に放っている工作員も、それぞれの国の軍事機密の入手に血道を上げている。

一方、日本はというと、防衛費を捻出も増税の口実くらいにしか思っておらず、やることと言えばアメリカのトマホークミサイルを購入するくらいである。本気で自国の防衛を考えているのかどうか疑わしい。

大学も軍事研究に難色を示し、民間も軍事と関わりたがらない。日本人は「軍事」と聞くとアレルギーを引き起こすほど自虐的な平和主義に洗脳されてしまっているので、誰も現実を直視しようとしない。

日本人の中には、いまだに「憲法第九条を守っていれば戦争は起きない」みたいな滑稽な平和主義を訴える人もいるくらい現実が見えていない人もいるくらいだ。「平和、平和」と言っていたら平和になると思っているのだから、知性がかなり劣化しているというのが見て取れる。

「そんなのは一部の左翼だけだ」と考えている人もいるが、そうではない。中国は200発超の核弾頭を保有し、今後10年間で少なくとも倍増させる見通しなのに、日本はと言えば岸田首相が率先して「核兵器のない世界」とか子供みたいな理想論を言っているのだ。

日本では首相すらも、お花畑の空想家なのである。恐るべき光景だ。

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日本が戦争を回避できていた要素がことごとく消えた

中国の「軍事大国化」に対する日本人の反応は驚くほど鈍い。戦後78年。日本人にとって戦争はもう「自分たちの身近に起きるとは想像することすらもできない出来事」になっているのかもしれない。

しかし、中国が軍事大国化して戦争の準備をしているのであれば、日本も例外なく巻き込まれ、侵略戦争の舞台になってもおかしくない。日本人も中国を仮想敵国として「次の戦争」を意識しておく必要がある。

日本は今もなお第二次世界大戦の終わりである1945年を起点に「戦後」を語っているのだが、世界を見回すと第二次世界大戦が終わってすぐに次の内戦や戦争が、世界のあちこちで起きていた。

朝鮮戦争、イスラエル・パレスチナ戦争、ベトナム戦争、カンボジア内戦、アフガン侵攻、ボスニア紛争、イラク戦争、チェチェン紛争、フォークランド紛争、アメリカのアフガニスタン侵攻、イラク侵攻、シリア内戦と、枚挙に暇がない。

戦争の合間にはアフリカでは民族大虐殺が次々と起きており、南米でもクーデターと内戦で戦火の嵐が吹き荒れていた。2022年からはロシアによるウクライナ侵攻でウクライナが壮絶な荒廃に見舞われているが、これは現在進行形の話である。

この78年で、日本人が関わらないところで戦争が世界のあちこちで勃発している。日本は「戦後、戦後」と今も1945年で意識が止まっているが、世界は戦後どころか「戦中」であるとも言える。

人類の歴史は血まみれであることを否定できる人はどこにもいない。私たちの生きている世界は大量虐殺に見舞われている。これが意味するのは「戦争に巻き込まれない民族はどこにもない」ということだ。

日本は確かに78年間も戦争に巻き込まれなかったが、それは、たまたまこの間はアメリカに国防を預けることができて、周辺国が脆弱であり、日本は経済成長だけ考えることができたという僥倖がうまく絡み合ったからである。

現在、中国が軍事的に台頭し、日本の国力も1990年以後から下り坂になった。日本が戦争を回避できていた要素がことごとく消え去っている。日本も戦争に巻き込まれやすい状況になりつつあるのに、日本人の意識だけが変わっていないのだから、これは危険なことでもある。

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侵略を仕掛けられ、内戦を仕掛けられ、戦争を仕掛けられる

日本は中国・韓国・北朝鮮・ロシアと反日国家に囲まれている。日本が軍事的に脆弱化してしまうと、日本が騒乱の舞台になる可能性は非常に高まる。侵略を仕掛けられ、内戦を仕掛けられ、戦争を仕掛けられる。

そうなると、平和主義だろうが何だろうが巻き込まれるしかない。

戦争が起きたら、女性だから、高齢だから、子供だから、障害者だからと言って配慮されるわけではない。人権はない。保護もない。戦争という大量虐殺の世界では、誰もが等しく殺されていく。

現代は情報化時代なのだから、戦争に巻き込まれるとどのような地獄が生まれるのかは、インターネットでいくらでも映像を見ることができる。

第二次世界大戦やベトナム戦争のときの凄惨な戦闘と破壊と虐殺の場面も、その気になれば一日中見続けることができる。それほど圧倒的な量の映像が残されており、記録されている。

撃たれて死んでいく兵士。破壊された建物。死体の山。死んでいった子供たち、殺されていった老人たちの死体も、そこには冷徹に記録されている。

現在の日本の「団塊の世代」は1960年代後半から1970年代前半にかけて学生運動の渦に巻き込まれていたが、この学生運動の中心は「ベトナム戦争反対」のカウンター・カルチャーが生み出したものである。

当時、ベトナム戦争の悲惨な戦争の映像が大量に流されていたのだが、この映像こそがカウンター・カルチャーを支えていたもうひとつの柱でもあった。

戦争で疲労困憊する米兵の姿、撃たれて死んでいくベトコンの若者、ガソリンをかぶっての投身自殺で戦争に抗議する僧侶の姿、ナパーム弾を浴びて逃げる少女、路上で処刑されるベトコン……。

こういった映像は、今でもその多くを見ることができる。

戦争が人類にとっていかに破滅的なものであるかは、これらの映像を見ているとよく分かる。映像は現実を映している。次から次へと現れる死と暴力の映像は圧倒的だ。これが、弱国化した将来の日本を舞台に起こり得る可能性がある。

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軍産複合体こそが日本の復活の狼煙(のろし)となる

侵略国家である中国が脅威となるのであれば日本も自主防衛を余儀なくされ、これからは否が応でも戦争に関わらなければならなくなる。「戦争から逃れられない」という現実に、そろそろ日本人も本気で考えなければならない時代になっている。

世界は密接に関連しているのだから、局地戦争も全世界を巻き込んでしまう可能性もあるのだ。たとえば、南シナ海で中国とベトナム、あるいは中国と台湾などで戦争が起こると日本も間違いなく巻き込まれる。

日本自身も尖閣諸島や沖縄問題で中国と対峙して中国の侵略を受けている。中国は何度も何度も日本の領海を侵犯して日本を挑発し続けているが、中国の爆撃機が沖縄を通過して自衛隊がスクランブル(緊急発進)対応するケースも目立つ。

あるいは日本は韓国とも竹島問題で対峙している。2019年の自衛隊への火器管制レーダーの照射事案は記憶に新しい。そして北方領土とその先にある北海道を巡って、ロシアと対峙している。日本もまた十分にきな臭くなってきている。

戦争は起こらなければそれが一番いいのだが、日本が平和を願っても、すべての国が平和を願っているわけではない。戦争は必ず起こる。

だからこそ、日本もまた「平和を叫んだら平和になる」みたいなお花畑路線は捨てて、政府も民間も国防意識を高め、しっかりと軍事を強化していく現実路線に転換しなければならない時が来ている。

日本は長らく政府も民間も軍事から目をそらして来たのだが、今後は日本こそが急いで軍事部門を整備していく必要がある。

そろそろ空想的で現実逃避的な平和主義は捨てて、国防を強化するために政府と民間は密接に協力し合って「軍産複合体」を創設すべきだ。そのような政策転換の時期がやってきている。

政府は民間の軍事産業を興し、補助金を出し、技術的に支援し、育成していく。民間は技術を蓄積し、人材を育成し、国防的な成果物を製造・備蓄していく。そして、軍事技術で得た知見を民間にも活用していく。日本はハードに強い国だ。軍産複合体こそが日本の復活の狼煙(のろし)となる可能性が高い。

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