食料品の値上げや食料不足の深刻化から日本を守るために政府はさっさと仕事しろ

食料品の値上げや食料不足の深刻化から日本を守るために政府はさっさと仕事しろ

「外国から安く買えるのであればそれでいい」が通用するのは平穏な時代だけ。原材料の上昇、物流の混乱、取引国の輸出停止はいつでも起こり得る。混乱がやってきた時、自給率が低い国は真っ先に飢えて滅ぶ。日本を守るために、政府は自給率を上げて日本を守れ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

日本の食料品価格がどんどん上がっている理由とは?

2023年3月に入ってからも、日本の食料品価格がどんどん上がっている。冷凍食品も、スナック菓子も、缶詰も、食用オイルも、調味料も、肉も、魚も、卵も、牛乳も、何もかも値上げだ。3月だけで3442品目の値上げが確認されている。

まさに「食品値上げラッシュ」と言っても過言ではない。

私たちが覚悟しなければならないのは、これらの値上げは今後もしつこく続いていくということである。短期の一過性のものではなく、これからも値上げが続いて日本政府はそれを止めることができない。

いくつもの問題が複雑に絡み合っており、日本だけの問題ではないからだ。

まず言えるのは、国外から輸入する原材料価格がそもそも上昇していることがある。ロシアとウクライナの戦争や2022年までの中国のゼロコロナ政策や昨今の異常気象による収穫量の減少などで原材料・肥料代が全世界で上昇している。

原材料・肥料代だけではない。コロナ禍の影響によって、物流業界においては人手不足や運賃の上昇も生じている。2022年はここに原油価格の高騰まで重なった。これにより、食料品の輸送コストが上昇し、その結果、価格が上がるしかなかったのだ。

おまけに日本では円安の悪影響もかぶるような状況になった。ドル円レートは2022年2月頃までは110円台で推移していたのだが、それ以後は一気にドル高円安に触れて、2022年10月には140円台の後半にまで到達している。

さらに悪いことに、日本政府は「SDGs」とか言いながら原子力発電を止めて太陽光発電を進めるような政策を取ったので、電力が圧倒的に不足し電気代をも高騰させてしまったので、それもまた食料品の値上げの要因となった。

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意図的に自給率を下げて食品の輸入量を増加させてきた?

これまで食品メーカーは原材料の値上げや物流費の値上げを企業努力によってしのいできたのだが、これらの要因によって限界を突破、原材料費の上昇を消費者に転嫁するしかなくなってしまったのが今の状況である。

日本政府はこれまで意図的に自給率を下げて食品の輸入量を増加させてきた。自国で作るよりも効率的だという理由で、農業を潰すような政策ばかりを行なってきたのである。

減反もそうだ。畜産に関しても方針がめちゃくちゃで、酪農家は子牛を薬殺したり牛乳を廃棄したりするような憂き目に遭っている。

そんな中で「タンパク質が足りなくなるから、国民は昆虫を食え」とコオロギ食だとかうじ虫食なんかを進めているのである。これでは国民が激怒して当然だ。

日本の自給率が下がる一方だが、日本政府が無能だともっと悪化する。

日本は少子高齢化で大ダメージを受けているのだが、そんな中で日本の農業人口も減少しており、高齢化も進んでいる。農業従事者が高齢化した上に減少すると、生産量が減り、自給率も下がるのは当然である。

そんな中で日本政府は、「外国から輸入するから」と言って日本の農家に減反させ、食糧安保などまったく考えていないのか、肥料も中国製品でまかなうようにして、中国が輸出をストップしたら日本人が一瞬で飢えるような社会システムになっても何もしない。

原材料・肥料代が上がって、小規模農家の多くは赤字に見舞われることになっているのだが、それでも日本政府は手を打たないのだから、赤字に音を上げた農家が離農していくのは必然である。

ただでさえ農業は高齢化が問題になっているのに、離農が増えればますます日本の農業は衰退して自給率は下がる。日本政府は「もしかしたら日本を破滅させたいのか?」と邪推してしまうほど無能を貫いている。

無能でなければ、日本が滅亡させたいとでも思っているのだろうか? そう思ってしまうほど日本政府は農業を軽視し、投資を減少させ、生産量を減らすような政策を推し進めている。食糧廃棄も相変わらずひどいが政府は何の手も打たない。

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食糧を確保するというのは国防の重要な要なのだが……

日本政府は自国の自給率を上げようとしていない。食糧安保を軽視し、度の過ぎたまでのグローバル化を推し進めている。

日本人の食を確保し、食の安全を守るという当たり前のことをせず、「外国から買った方がコストパフォーマンスが良いから」という安易な理由で、食にも自由貿易主義を当てはめて自給率を下げてきた。自給率を下げるだけなく、農作物の国際的な競争力すらも削いできた。

また、外交的な配慮もあって、農業補助金の増額などの保護主義的な政策を積極的に取ることもしない。食糧安保よりも、外国の顔色の方が大事だというわけだ。「外国から安く買えるのであればそれでいいではないか」という意見が主流だったとも言える。

しかし、2022年になって「外国から安く買えるのであればそれでいい」が、単に平穏な時代だけ成り立つ論理であることを日本政府と日本人は思い知らされるようになったとも言える。

自給率が低い場合、世界的な農産物価格の変動や輸送コストの上昇で、場合によっては「生活が成り立たないほど食品価格が上昇することもある」という現実が目の前に現れてきたのである。

相手の国が食糧不足になると輸出は絞る。そうすると食品の価格が上がるだけではなく手に入らなくなる可能性すらもあり得る。手に入ったとしても品質の悪いものであったり、安全性に問題があったりするものになる。

最悪の場合は農作物のバーター取引(モノとモノの交換)ができればいいが、日本の農業が衰退してしまっているのであれば、それすらもできない。

日本の食糧安保を確保するためには、自給率を100%以上に引き上げる必要があるのは当然のことであり、それこそが日本という国を守ること、日本人を守ることなのである。食糧を確保するというのは国防の重要な要《かなめ》なのだ。

どこの国でもそれが分かっているから農業を手厚く保護する。それが分かっていないのは日本政府だけなのかもしれない。

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昆虫食の前にやらなければならないことがある

国防のためには食糧が足りていなければならない。少なくとも自給率を100%に引き上げ、それ以上のものを輸出する形でないと、全世界で食料不足が深刻化した時には一瞬で日本人は飢えて国が滅ぶ。

自給率を上げるために、日本政府は死に物狂いになる必要がある。

日本の農業生産性は低いのだから、とにかく日本政府は農業を守るために補助金による支援、農作物の買い上げ、備蓄や加工の支援、機械化の促進、最新の農業技術の導入支援、品種改良の支援、農家の若返り支援、農家の経済状況の改善など、やるべきことをすべてやる必要があるのだ。

そうやって農業で年間1000万円以上もの収入が上げられるような環境になったら、若者も喜んで農業に従事するだろう。そこに品種改良や最新技術による栽培などのイノベーションが持ち込めたら、日本の農業は一気に活性化する。それがひいては自給率の向上につながり、国家の基盤の強化にもなる。

それだけではない。農業を強化することによって、日本政府は地方創生をも成し遂げることができるようになる。自給率が上がり、食糧安保が成し遂げられるだけでなく、地方も活性化させることができるようになるのである。

国が衰退して死んでいく時は地方から死んでいく。

すでに日本の地方は少子高齢化によって荒廃しており、過疎によって限界集落が国土を覆い尽くしている。地方創生で復活させるためには、農業を甦らせるのが必要なのだが、日本政府はなぜかそこに思い至らない。

過度なグローバル化や自由貿易主義に邁進していて、国内の農業を見捨てたことによって日本は危機に陥るようになっている。あげくの果てに、国民に「コオロギを食え」とか「うじ虫を食え」とか言い出すようになっている。

別に昆虫食が絶対的に悪いというわけではないが、日本政府はその前にやらなければならないことがあるはずだ。農業の復活だ。それによって日本を守り、日本人の食を豊かにし、地方を再生し、日本を復活することができる。

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