国民の声を聞こうとしない岸田政権。そろそろ、新しい何かが必要な時代なのだ

国民の声を聞こうとしない岸田政権。そろそろ、新しい何かが必要な時代なのだ

自民党・公明党政権が日本経済を良くしようとは思っておらず、むしろ逆に日本経済を根底の部分から破壊しようとしているような動きをしている。では、自民党・公明党以外の野党がまともなのかと言ったらまったくそうではない。この状況を劇的に転換させるには新しい何かが必要だ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

苦しまぎれにゼロゼロ融資に飛びついた結果

借りたものは返さなければならない。政府は中国発の新型コロナウイルスの蔓延で国民に自粛を強いたのだが、それで売上が激減した企業に対してどうしたのかと言うと「無利子・無担保で融資してやる」と言って通称ゼロゼロ融資をはじめた。

「無利子・無担保で金を貸してくれるなんて優しい」と思うだろうか。いくら無利子・無担保でも、それはまぎれもない借金である。

当時、自民党の衆議院議員だった安藤裕氏は、「昨年実績の粗利と今年の粗利を比較して、その差額を政府が補填せよ」と主張していた。さらに「内需を喚起するために消費税を減税せよ」とも政府に突きつけていた。

この主張は真っ当なものだった。突発的な災害と政府の自粛方針で事業が崖っぷちに立たされていたのだ。その中で、政府が慢性的に自粛が続く中で「あとでカネを返せよ」と融資を行うと、どうなるのか火を見るより明らかだ。

ゼロゼロ融資を受けた事業体は、遅かれ早かれ借金で首が絞まるのだ。しかし、どの経営者も生き残りたいから苦しまぎれにゼロゼロ融資に飛びついた。

結局は、コロナ禍は想定外に長く続いたし、政府がゼロゼロ融資を打ち切った2022年9月には、コロナ禍よりもグローバル経済発のコストプッシュ型のインフレでもっと経済状況はひどいことになってしまっていた。

「1年か2年、融資で耐えればなんとかなる」と思っていた経営者にとっては、コロナ禍のあとの物価高は希望を打ち砕くものでもあったのだ。

結局、こうした社会情勢の中で、安藤裕氏が危惧したとおり、2022年から日本社会の裏側で最悪の事態が起こりはじめて現在はますます状況が悪化している。

2022年に入ってから体力のない企業がどんどん倒産していったのだが、日本政府がゼロゼロ融資を2022年9月に打ち切ってからは倒産件数がブーストされて、以後は毎月40件以上の勢いで倒産が続いていった。

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小規模な事業者から「免除」をはぎ取る

東京商工リサーチの調査では、現在、倒産件数は2020年からの累計で1000件を超えてしまった。粗利保障や消費税の減税や撤廃をしておけば、これほど悲惨なことにならなかった。

しかし、日本政府にはまったく反省がない。

反省どころか、2023年10月から「税率が上がらない実質的な増税」であるインボイス制度(適格請求書等保存方式)を強引に始めようとしている。

インボイス制度とは、簡単に言えば、これまで年間の課税売上高が1000万円以下の小規模な事業者から「免除をはぎ取る制度」である。

政府は「別に無理して適格請求書発行事業者になる必要はない」と言っている。しかし、実際には「ほぼ強制」になるのは目に見えている。

中小零細やフリーランスの大手取引先は、免税事業者との取引で支払った分の消費税は控除できないので、大手は容赦なく免税事業者を切り捨てることになるからだ。

実際、大手企業のほとんどは取引先に「インボイスを発行するように」と通達を出している。メーカーは下請けに、出版社はライターやマンガ家やイラストレーターやカメラマンに、デベロッパーは一人親方に、「適格請求書発行事業者になってくれ」と条件を出している。

「別に適格請求書発行事業者にならなくてもいいけれども、ならないんだったら取り引きを打ち切ります」と言われたら、中小零細の事業者やフリーランスはもはや拒絶できないのである。

かと言って、免税事業者が適格請求書発行事業者になったら、今度は10%増税されてしまうことになる。免税事業者のままでいたら仕事がなくなるし、課税事業者になったらギリギリでやってきたところがやっていけなくなる。

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受け取りを拒絶しておいて「届けられた事実はない」

こうした中、「インボイスで自分たちがつぶされる」と危機感を覚えたフリーランスの人々が立ち上がり、「#STOPインボイス」の運動をはじめていたのだが、この動きは多くの中小・零細・フリーランスに支持され、50万筆以上の署名を集まる巨大な反対運動となっていった。

ところが、「国民の声を聞く」を標榜していたはずの岸田首相は、50万人以上の人々が「やめてくれ」と叫んでいる現状を完全に無視して、まったく国民の声を聞こうとしないで今に至っている。

50万筆以上の反対の声は、日本のオンライン署名としては最多記録であるという。社会現象としても、凄まじいインパクトである。

しかし、岸田政権はその「大きな声」を聞こうとしない。

岸田政権の姑息なところは、50万筆の反対署名の受け取りを拒絶しておいて、「届けられた事実はない」と言い放つところだ。いかに国民の意見を聞きたくないのかという姿勢が見える。

こうした岸田政権の欺瞞ぶりは際立っているのだが、とにかく岸田政権は絶対に何が何でも増税したいので、こんなことになっている。

増税の旗を振っているのは財務省だが、岸田が所属する宏池会は創設者の池田勇人元首相ら大蔵省(現財務省)であったし、宮沢喜一元首相も財務省であった。

さらに、岸田総理の父親は経産省出身で、叔父は財務官僚で、「税金を上げろ」と主張している税制調査会長の宮沢洋一は親戚だし、側近として岸田が離さない木原誠二も財務省出身の政治家である。

岸田は増税ありきの人脈で固めて政権運営している。そのため、「ステルス増税」であるインボイス制度を反対する声は、いっさい聞きたくない。そのような状況になっている。

結局これは、岸田政権は中小零細やフリーランスが潰れようがなんだろうが「どうでもいい」ということを示している。自分たちの都合でやりたいようになっているだけなのだ。

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この状況を劇的に転換させることができるのだろうか

岸田政権は救いようがない。ただし、岸田政権以前の政権がまともだったのかというと、まったくそうでもない。

今の自公政権は意味のない自粛で中小零細やフリーランスを追い込み、「あとで返せよ」とカネを与え、物価高を放置し、そこに来てインボイス制度をはじめ数々のステルス増税をする政策を進めてきた。

自民党・公明党政権が日本経済を良くしようとは思っておらず、むしろ逆に日本経済を根底の部分から破壊しようとしているような動きをしている。

では、自民党・公明党以外の野党がまともなのかと言ったらまったくそうではない。与党が売国議員に支配されているのだとしたら、野党は反日議員に支配されているような状況だ。

売国する政党を取るか。
反日する政党を取るか。

国民が選ばされているのは、この二者択一の状況であった。これでは日本に未来が見えないのも当然のことだろう。

すでに自公政権はこの30年で経済政策に失敗し続けて、日本の凋落を激しいものにした。本来であれば、政権を担ってはいけないし、このままでは日本はますます凋落してしまう一方である。

そうしている間に、日本社会の裏側では日本経済を支えてきた本当の意味で重要な存在であるはずの中小零細企業やフリーランスがばたばたと潰れて消えていこうとしているのが今の段階だ。

私の目から見ると「大国としての日本はいよいよ終わりになりつつある」ように見える。この状況を劇的に転換させることができるのだろうか。冷静に見ると、今の情けない政治では難しい。そろそろ、新しい何かが必要な時代なのだろう。

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