AI関連銘柄が下がっているが、これらの企業が成長し巨大化するのはむしろこれから

AI関連銘柄が下がっているが、これらの企業が成長し巨大化するのはむしろこれから

AIというパラダイムシフトの中で起こっているのは、「一時的な現象」でもなければ「単なるブーム」でもない。この調整を指して「AIバブルも終わり」みたいなことを発言している有識者も一部にはいるが、そう結論づけるのは早計である。宴は、はじまったばかりだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

AIが凄まじい成長を見せる点に関しては揺るぎがない

AI(人工知能)関連銘柄が現在下がっている。これまで株式市場を牽引してきたエヌヴィディアも、AMDも、ブロードコムも、マイクロンも、マイクロソフトも、アマゾンも、グーグルも、軒並み値を落としている。

AI関連に関しては、ChatGPTの能力の凄まじさが理解されるようになって、2024年の初頭から爆発的に投資資金が流れ込んできていて、あまりにもバリュエーションが高くなりすぎていたという点がある。軽いバブル的な動きが起きていたので、やっとその調整がやってきた。

この調整を指して「AIバブルも終わり」みたいなことを発言している有識者も一部にはいるが、そう結論づけるのは早計である。

株価の調整はあるが、基本的にそれは一時的な現象であり、将来はここからさらに上にいくと見たほうが賭けに勝てる確率は高い。なぜなら、AIというパラダイムシフトの中で起こっているのは、「一時的な現象」でもなければ「単なるブーム」でもないからだ。

銀行界の大物であるJPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOは、景気に関しては非常に慎重な見方をしている人物だが、そのジェイミー・ダイモン氏でさえも、AIが今後は非常に重要な役割を担うことを否定せず、「この技術は銀行業界にとって信じられない可能性を秘めている」と強調している。

AI市場は今後も膨れ上がる。アーク・インベストのターシャ・キーニー氏はイノベーションに関連する株式時価総額は10年後まで220兆ドルにまで急増して、その大部分は「AIによって牽引される」とCNBCで述べている。

アーク・インベストはエヌヴィディアが上がる前にこの銘柄の株を手放して手痛い失敗をしているのだが、AIが凄まじい成長を見せる点に関しては揺るぎがない。ハイテク業界のどこのCEOもAIがバブルだとは思っていない。

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AI関連企業はさらに巨大化する可能性が高い

アップルもEV(自動運転車)の開発を中止してAI(人工知能)に焦点を向けて、今後は全力で遅れを取り返しにくるはずだ。

ティム・クックCEOも、2024年2月の年次株主総会では「2024年にジェネレーティブAIで新境地を開拓する」「ユーザーにとって革新の機会が開かれると信じている」と述べて、今後はありとあらゆるアップル製品にAIを組み込むことを示唆している。

アップルは今年AR(空間コンピューティング)の境地を切り拓くApple Vision Proを出したばかりだが、アップルは現状にまったく酔っていない。ARよりもAIに乗り遅れたことに強い危機感を抱いており、株価もアップルのAI出遅れを反映してずっと遅れたままである。

フォーチュン500(全米上位500社)も、ほぼすべてがAIで事業の生産性をあげようと動いており、ビジネスの照準をAIにロックオンしている。今どきAIを過小評価しているのは一部の評論家くらいしかいない。

将来的にはAI関連企業は、さらに巨大化する可能性が高いといえる。AIの進化はこれからであり、AIによるイノベーションは入口に立ったばかりである。機械学習やディープラーニングなどの分野での進歩は著しく、今後もAIシステムの性能向上は私たちの想像以上のスピードで進んでいく。

現在、AIは「機械学習」にリソースを使っているのだが、今後はそこから「推論」のほうに比重が移っていく。どういうことかというと、インターネットにある莫大な情報をこれまでひたすら吸収してきた作業から、今後は正しい答えを導き出すための能力がより磨かれていくフェーズに入る。

AIの「答え」がより正確に、信用できるものになっていく。専門的な分野に関しても、人間が分析しきれないほどの莫大な情報から「答え」を見つけ出すので、現代文明はより効率的に高度化していくことになる。

あらゆるジャンルの企業が、ジェネレーティブAIの新たな技術を導入して業務プロセスを効率化し、新たなサービスや製品を開発することができる。これが企業の成長につながり、長期的な投資価値を高めていく。

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AIは確実に企業や社会の中心的な要素となっていく

AIが浸透していく分野はハイテク業界だけではない。さまざまな産業がAIを取り込むことによって、デジタル変革を遂げ、競争優位性を手に入れることになる。

製造業、金融、ヘルスケア、小売業など、あらゆる分野でAI技術が活用されていく。AIを高度に取り込んだ企業はデータの解析や予測分析を通じて意思決定を強化し、市場競争において優位性を築くことが可能となる。

AIのイノベーションに対応できる企業が、将来の爆発的成長を手に入れる。

科学・化学の分野でも、製薬・創薬の分野でも、ありとあらゆる業界で「新規発見」や「新規革新」が相次ぐことになるはずだ。それがAIによってもたらされたことが理解されるようになると、AIは確実に企業や社会の中心的な要素となっていく。

今後、このような事柄が起こるのは100%確実なのだ。

とすれば、AI関連企業はさらに重要な存在となり、その価値が認識されるのはいうまでもない。AI企業にとっては、これらの市場での需要拡大は約束されているのも同然であるといえる。

AIの驚異的な重要性について理解している中東でも、アブダビは半導体のディールに焦点を合わせたテクノロジー投資会社「MGX」を設立し、そこに1000億ドル(約15兆円)という途方もない金額を政府がぶち込むことになった。

巨大投資企業「MGX」が、具体的にどの企業に投資資金を割り当てていくのかは不明だが、エヌヴィディア、AMD、ブロードコム、マイクロン、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタなどの企業にも投資資金が入っていくのは間違いないだろう。

さらに、まだフォーチュン500に入っていない企業や、設立されたばかりのAI関連企業にもひろく投資資金がまわるはずだ。

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AI関連銘柄は「売り」なのだろうか?

こうした観点から考えると、2024年からの上昇ピッチがあまりにも急激だったために起こった下げは一時的なものであって、バブルが崩壊したわけではないというのが見えてくるはずだ。

株式市場のボラティリティは正確には予測できないので、下落がどこまで続くのか、底はどこなのか、いつ上昇に転じるのかはまったくわからない。近々上がるかもしれないし、下がるかもしれないし、横ばいになるかもしれない。

株式市場の不確実性を正確に読み取る努力は徒労に終わる。

それよりも投資家が重要なのは、このAIの分野は「非常に巨大な潮流(メガ・トレンド)」であり、それがはじまったばかりであるという点である。

AIが幅広い分野でイノベーションをもたらす状況になるのか確実なのに、AI関連銘柄は「売り」なのだろうか。AIが社会全体の効率化、生産性の向上、新たな価値創造に貢献するのが確実なのに、AI関連銘柄は「売り」なのだろうか。

まさか……。この分野の巨大な成長性を考えると、株価のベクトルはまだまだ上にあるという認識を持つほうが大切であるといえる。「売り」どころか「買い」ではないのか。

もちろん、株価は常に変動がつきものである上に、個別の企業でも競争力の強い企業や弱い企業があるので、個別企業の株式を買うのであれば将来性の高い企業を吟味する必要がある。しかし、全体をみるとAI関連銘柄は今後もかなり強いはずだ。

私自身はAI関連銘柄が一時的な調整や下落があったとしても、まったく心配しておらず、AIが引き起こしているメガ・トレンドに信頼を寄せている。少なくとも、AI関連は今後5年から10年は成長につぐ成長になっていくと考えている。

今後、AIがどのように社会を変えていき、株式市場がAIによってどのように様変わりするのか興味が尽きない。

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