株式市場の時価総額の上位リストは、この世で重要な企業が何なのかを示す一覧表

株式市場の時価総額の上位リストは、この世で重要な企業が何なのかを示す一覧表

アメリカは没落するだとか、もうアメリカの時代は終わったとか、アメリカは重要ではないと本気で思っているのであれば、試しにアメリカ企業とかかわらないで生活してみてほしい。きちんと現代社会を生きている人であればあるほど、それが「不可能である」ことに気づくはずだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

イノベーションを起こし続ける力を持っている国

株式市場の時価総額の上位リストは、この世で重要な企業が何なのかを示す一覧表である。現在が資本主義の世界であるならば、この一覧表に乗っている企業群が世の中を動かしていると考えるべきだ。

全世界でもっとも巨大で比類がない株式市場はニューヨーク証券取引所だ。凄まじい富と影響力はそのほとんどがここに上場されている企業が保持しており、これからもずっと続いていく。

「アメリカ企業」を中心にして見ると、アメリカは衰退しているどころか、堅実に成長し、しかもいまだにイノベーションを起こし続ける力を持っている。情報社会の中枢はすべてアメリカ企業によって押さえられており、その状況はこれからも変わることはない。

たとえば、今後はAI(人工知能)が社会を凄まじい勢いで変えていくことになるのだが、このAIをリードしているのも、Microsoftや、Metaや、Appleや、Amazonや、Googleなどのメガテックである。

このAIを支えているのが半導体企業なのだが、半導体の巨人も、NVIDIA、AMD、Intel、Broadcom、Qualcomm……と、軒並みアメリカ企業である。

これは別にアメリカが共和党の大統領になろうが、民主党の大統領になろうが、状況が変わるわけではない。たとえば、バイデン大統領は巨大企業の市場独占には非常に嫌悪を持つ大統領なのだが、それでもメガテックの勢いを削ぐことはできない。

アメリカはどの政権も「多国籍企業の利益第一」なのだ。

グローバル化の推進は、まさに巨大アメリカ企業の戦略でもあるわけで、そうであればアメリカのほぼすべての企業は、どの政権にも自分たちが損しないグローバル化をロビー活動で促進することになる。

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金融危機でも依然として優良企業が収益を上げる

アメリカはいってみれば100%「グローバル企業優先国家」である。ただ、アメリカの企業にとって良い環境は、必ずしもアメリカ人にとって良い環境ではない。

アメリカの多国籍企業は「非情なまでに自らの利益」しか考えないので、途上国の労働者のほうが安くこき使えると思ったら、アメリカ人の労働者なんか使わないで簡単に国外にいく。

また、アメリカ国内でも不法移民のような人間のほうが安く雇えると思ったら、迷わずそちらを選ぶ。多国籍企業にとっては「不法移民が大量にいて合法的に雇えるようになったら、人件費が下がるので得する」という論理でそれを歓迎する。

だから、アメリカの一般の国民はどんどん困窮していき、多国籍企業とそのステークスホルダーだけが儲かってアメリカ人そのものは貧困化していく光景が現れる。アメリカでは今もなお貧困層が増え続けているし、ホームレスも激増している。

しかし、そんな光景をよそに、アメリカの企業は合理的に経営され続けて今後も成長し続けることになる。爆発的に成長していくAIというイノベーションもまた、アメリカ企業をより合理化に向かわせるだろう。

また、アメリカの政治と、アメリカの企業も分離しているので、政治がいくら混乱しても、アメリカ企業の優位性が揺らぐこともない。

たしかに政治が混乱したら、株式市場も不安定になる。企業にもまったく影響が出ないわけでもない。しかし、長期的にみれば政治の混乱は一時的な現象として織り込まれ、アメリカ企業は何ごともなかったかのように稼ぎ、成長し、株式市場もまた上昇していく。

アメリカで貧困層が増えているから、あるいは政治が混乱しているから、アメリカの時代が終わったと見るのは無意味である。

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最後に果実をもぎ取ったのは誰だったのか?

「アメリカは終わった」と一番声高に叫ばれていたのは2008年だった。2000年代のアメリカは、バブルの時代だった。巨大なカネが不動産や、サブプライムローンのようなリスクの不明確な債権をも買い上げていった。

それが破綻したのが2008年9月15日だ。「リーマンショック」と呼ばれているこの金融市場の大崩壊劇は、資本主義をも崩壊させかねないほどのスケールと規模で全世界を覆い尽くしていった。

2008年9月15日以降、世界は絶不調に陥ってグローバル経済の雄であるアメリカですらも停滞を余儀なくされた。「アメリカは終わった」と多くのアナリストがいった。「アメリカの終焉」みたいな本も大量に出た。

ところが、ここで皮肉なことが起きた。

「もうアメリカが終わった」といわれたこの時期に、アメリカに資金を投じていた投資家が、その数年後に巨額の儲けを手中にしたのだった。

ウォーレン・バフェットやジョージ・ソロス、あるいは莫大な資金を持っていたビル・ゲイツなどの多くの投資家は、なぜこの不透明で危険な時期に莫大な資金をアメリカの株式市場に投じていたのか。

それは、リーマンショックでも人々が生活をやめるわけではなく、依然として優良企業が収益を上げ続けることを知っていたからである。

これは私たちの生活を振り返ってもわかる。私たちは2008年のリーマンショック以後も、マクドナルドでハンバーガーを食べ、ハインツのケチャップでポテトフライを食べ、コカコーラを飲み、たまにスターバックスでコーヒーを味わい、マイクロソフトのOSで仕事をしていたはずだ。

100年に1度の金融危機が来たからといって、今までの生活をやめた人はひとりもいない。だから、この時期にアメリカの株式市場に資金を投入していた投資家が、最後に果実をもぎ取ったのだ。

アメリカの没落に賭けるのは間違いだったことは、「100年に1度の金融動乱」と呼ばれたリーマンショックを振り返ってもわかる。

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「アメリカは没落する」と妙なことを信じる理由

アメリカは没落するだとか、もうアメリカの時代は終わったとか、アメリカは重要ではないと本気で思っているのであれば、試しにアメリカ企業とかかわらないで生活してみてほしい。

きちんと現代社会を生きている人であればあるほど、それが「不可能である」ことに気づくはずだ。

現代はインターネットが重要なインフラになっているので、インターネットを使わざるを得ない。インターネットにアクセスする機械も、インターネットの技術も、インターネットのOSもソフトウェアも、すべてアメリカが押さえている。

スマートフォンもOSを見ればアメリカ製である。現代社会を急激に変えようとしている生成AIにしてもまた然りだ。アメリカがリードしているのだ。

現実が見えない人は、インターネットもスマートフォンもAIも使いながら、かたくなにそれを認めようとしない。だから、「アメリカは没落する」と現実を無視して一方的に盲信していたりする。

現在は超高度情報化社会だが、彼らは大量の情報を得ながらもそれを否定する。いくら情報があっても、あまりにも思い込みが激しすぎて正しい姿が見えなくなっている。

しかし、アメリカ企業の影響力はもっと強くなる。AIファーストの時代になると、ますますイノベーションが加速する。半導体の技術が向上し、人工知能が進化して汎用化し、その次は現実拡張やロボット化が急激に進む。

このほとんどすべてはアメリカの最先端企業によって提供される。次の時代も人工知能の「頭脳」であるデータセンターで情報覇権を握ったアメリカがさらに強くなる。

アメリカの時代はこれから何十年も続いていくのは確実であり、そうであるならばアメリカの没落に賭けるのは人生で最悪の間違いである。もちろん、アメリカもいずれは没落する日が来るかもしれないが、それはずっと先の話だ。

「アメリカが衰退している」というのは政治的な混乱がそう見せているだけで、アメリカ企業に目を転じると、まったくその逆の姿が見えてくる。

アメリカの企業はいまだに世界をリードするイノベーションを起こし、強大な影響力を持ち、時代の最先端にある。政治的にアメリカが混乱しても、長期的にはアメリカ買いが正しいのはこういう理由からだ。

別に私はアメリカを愛しているわけでもなければ、アメリカの社会を理想としているわけでもない。しかし、現実を見るとアメリカ「企業」の強大さが現代の資本主義を支えているのだというのを理解しているだけである。

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