貧困層が「切り捨て」になるから、やるべきことがあるのだ

貧困層が「切り捨て」になるから、やるべきことがあるのだ

2017年12月7日、厚生労働省は生活保護費を最大1割下げることを検討している。一般の低所得世帯の消費支出より支給額が多いとの調査結果を踏まえた上での見直しである。

生活保護については2013年も引き下げられているが、2回連続での引き下げになる確率は高い。

厚生労働省が2017年12月6日に出した『被保護者調査:調査の結果』の最新データを見ると、2017年9月時点で被保護世帯数は164万2273世帯、被保護実人員は212万5803人となっていた。

この「164万2273世帯」という被保護世帯数の数字は過去最多である。

では、2017年は景気が悪かったのか。いや、まったくそんなことはない。政治も経済も安定し、日経平均も2017年11月7日には終値は2万2937円60銭とバブル崩壊後の高値を更新するほど好調だ。

民主党政権の2009年から2012年の地獄の3年間、日経平均が8000円台をうろついていて日本は崩壊するのかと暗澹たる気分が日本を覆っていた時代とはまったく違う。

しかし、それでも生活保護受給世帯は増えているのである。

増大する社会保障費の出血を何とか止めたい政府

株式資産を持つ人間は、第二次安倍政権が発足した2013年から資産を2倍以上膨らませた人も多い。

単に日経平均と連動する指数を買っている人や、優良株を持っていた人は、2倍どころか3倍に手が届こうとしている人もいる。買い持ちしていた人は儲かっているのだ。

ところがこの最中に、日本の底辺ではどん底に落ちてどうにもならなくなった人が生活保護を受けざるを得ない状況になっていた。

これだけ生活保護受給者を見る目が厳しくなっている時代なのに、それでも受給者が増えていく。実は、生活保護受給者や世帯数はこれからも増えていくのは避けられない。

現在も生活保護受給世帯を増やしているのは圧倒的に高齢者なのだが、高齢者はこれからも増えていくのだから当然だ。蓄えを持たない高齢層は、身体も弱って働くこともできないので、生活保護から切れない。

その次に障害者世帯の生活保護受給世帯も増えているのだが、やはり高齢化が進むにつれて障害を持つ人々が増えていくのは必然でもある。

ということは、2018年以後、生活保護費を最大1割下げることによって増えるのは貧困に苦しむ高齢者であり、貧困に苦しむ障害者であるということが分かる。

収入を得ることが難しい人の生活が追い込まれる。

それを分かっていて厚生労働省が生活保護費をどんどん引き下げていくのは、もちろん増大する社会保障費の出血を何とか止めたいという切実な事情があるからだ。

ここで少子高齢化を放置したツケが回っていて、年金、医療、介護などの社会保障給付費がどんどん膨れ上がって財政を圧迫している。

これ以上の社会保障費の増大は国家財政を食い潰して破綻させる大きな要因と化す。つまり、現在の社会保障費の増大はもはや持続可能ではなくなっている。

だから、消費税も含めて各種税金をどんどん引き上げ、生活保護費を含む社会保障費の削減も同時に動いているのだ。

年収800万円以上のサラリーマンにもっと増税するという案も出ているが、これも「少子高齢化のツケ」であることに気付かなければならない。

少子高齢化を放置し続けてこんなことになっている

政府は年金の支給を段階的に60歳から65歳にシフトさせた。しかし、これで終わりではない。そのうちに70歳にしたいとか75歳にしたいと言い出すのは確実だ。

社会保障費の半分は年金なのだから、ここを削減できれば出血が止まる。だから、年金の受給年齢をどんどん引き上げているのだが、それにも限度がある。

そこで、政府は「生涯現役」を提唱している。

これは言ってみれば「死ぬまで働け」ということだ。死ぬまで働かせることによって生活保護受給世帯を減らし、社会保障費の出費を止めたいという意向がそこにある。

政府は医療費を削減するために国民の負担額を増やしているが、同時にジェネリック薬を使うことも国民に勧めている。これも、言うまでもなく社会保障費の出費を止めるためである。

こうした動きを見ても分かる通り、政府は必死で、なりふり構わず社会保障費の増大を食い止めようとしているのが分かるはずだ。

膨らむ一方の社会保障費に政府は悲鳴を上げている状態であると言っても過言ではない。

だから、これからの貧困層は「切り捨て」になる。

もう「ない袖は振れない」ところにまで追い込まれているのだから政府を当てにしても仕方がない。

年金生活者は年金がもっと減らされることを覚悟しなければならないし、生活保護受給世帯は生活保護費をもっと減らされることを覚悟しなければならない。

さらに就労者は税金がもっと上がっていくことを覚悟しなければならないし、場合によっては自分たちが老いた時は年金がもらえないか、年金が雀の涙ほどになっている可能性も考えなければならない。

少子高齢化を放置して「日本人は人口がもっと減った方が過ごしやすい」とか無責任なことを言っているマスコミに同調していたから、こんなことになってしまっている。

一部のマスコミが「日本人は多すぎる、減っても構わない」と言っているのは、もちろん裏側に日本を弱体化させるためであるということに気付いていない人も多い。

貧困層が「切り捨て」になるのは分かっている

これからの貧困層は「切り捨て」になるから、まだ働いて稼げる人は、自らの力で自分が老いた時の生活を支えるための財産を必要とする。

必須となる財産は貯金ではない。政府はインフレターゲットを2%と設定しているのを見ても分かる通り、何とかインフレを引き起こそうと努力している。

日本はデフレ圧力が強いのでインフレにならないと考える人もいるが、インフレにならないのであれば消費税を上げれば物価が上がってインフレになるのだから政府は消費税を上げて人為的にインフレを起こすこともできる。

インフレが起きれば現金はひとたまりもない。さらに現在の超低金利時代に貯金などしたところで得るものはたかが0.01%の利息だけである。

少子高齢化の日本では不動産の価値もよほどロケーションが良いところ以外はどんどん下がっていくので、人口が増えていた頃の日本と違って確固たる資産となり得ない。

現代の資本主義を制したのは「増え続ける全世界の地域で金を稼げる企業=多国籍企業」であり、現金を持った人間でも、土地を持った人間でも、現物資産を持った人間でもない。

そうであれば、莫大な利益を吸い上げる多国籍企業の株式こそが最も重要な資産となる。まだ稼げる人が増やさなければならないのは、まさにこれだったのだ。

多国籍企業の株式は、戦争、インフレ、国家破綻の時代になっても資産として耐えうることができる。つまり、これは資本主義社会が生み出した最強の財産である。

端的に言うと、この資産は大量に持てば持つほど良い。

貧困に落ちてからこのことに気付いても遅いのだ。貧困層は株式を持つ余裕もないし、まして生活保護受給者になってしまったら原則として株式を持つことは禁じられる。

貧困層が「切り捨て」になるのは分かっているのだから、なおのこと私たちは注意してやるべきことをしておかなければならない時期に来ているのだ。

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