高齢者が地獄に堕ちる時代。生活保護の51%は高齢者世帯だ

高齢者が地獄に堕ちる時代。生活保護の51%は高齢者世帯だ

2017年6月7日、厚生労働省は生活保護受給世帯数が164万1532世帯で過去最多となったと発表している。事態は刻々と悪化している。

この受給世帯数の中で圧倒的に増えているのが高齢者世帯で、すでに全体の51%を占めている。

昨今の生活保護受給の窓口は、不正受給の関係でどんどん厳しくなっている。そのせいで本来は生活保護を受けられる人でさえも窓口で断られ、追い詰められて死んだりしている。

たとえば、2015年8月6日、京都市右京区の民家で40代の姉弟が死んでいるのが発見されていたが、この2人の姉弟は精神的に問題を抱えていて働けない状況だった。しかし、生活保護の申請をしたが受給できなかった。

やがてこのふたりは、電気もガスも止められ、冷蔵庫もほぼ空っぽの状態になったまま死後数週間後に死体となった発見されている。

生活保護を不正受給できる人間たちもいる一方で、困窮化した日本人が申請を撥ね付けられて死んでいる。追い詰められているのは、圧倒的に高齢者である。

毎年のように生活保護受給世帯数が増える中で、この傾向はさらに強まっていくはずだ。

政治家も官僚も、まったく何も手を打たなかった

日本は高齢者が多くて若者が少ない「少子高齢化」が急激に進んでいる。少子高齢化は日本社会が抱える大きな問題であるが、誰もが問題を先送りにしてしまった結果、問題はどんどん深刻化しつつある。

高齢者の生活を支えているのは「年金」であり「生活保護」である。ところが、日本の財源はどんどん累積債務が膨らんでおり、年金も生活保護も危ういものとなっている。

それは徐々に、確実に削減されていこうとしている。2013年から実質的な削減は始まっており、2015年度からは住宅補助も冬季加算も削られた。

また、政府は円安政策を取っており、意図的にインフレを起こそうとしている。海外資産、海外株式を持っている人間にとって円安は望むところだ。

しかし、そうでない人にとって円安はなかなかメリットを感じにくい。特に年金受給者、生活保護受給者にとっては、インフレが起きれば、真っ先にデメリットをこうむる立場である。

だから、少子高齢化を解決するために日本は死にもの狂いで何か対策をしなければならなかったのだが、政治家も官僚も、まったく何も手を打たなかった。

そして、日本人自身もまた少子高齢化に関心がない。

子供を産んでも何らメリットはないと若者は強く考えている。そもそも、こんな不安な時代では自分が生きていくのに精一杯だ。子供どころではない。

また、子供以前に、結婚すらできなくなっている。仕事が見つからないし、見つかっても身分は保証されない派遣社員のような仕事だけだ。

グローバル化の中で、日本企業は日本人を雇わなくなった。だから、若者は今よりもさらに追い込まれていき、結婚も子育てもどんどん実現不可能な夢になっていく。

粗悪品のために賃金も仕事も失うのがグローバル化

グローバル経済というのは、企業が多国籍化し、コストの安い国や場所を見つけて、そこで低価格商品を大量に作って世界にばら撒く経済である。

モノの値段はどんどん安くなっていき、安いものが買えるので、人々は幸せになるはずだった。

ところが、ひとつ誤算があった。企業が安い賃金の国へ移動していくので、先進国が空洞化してしまったのだ。その結果、先進国の仕事が激減していくことになった。

働いている人たちの賃金が下げられ、失業する人がどんどん増えていった。そんな時代になって、やっと人々はグローバル経済の本質を知った。

グローバル経済とは、安いものが大量に出回って自分たちの賃金も安いところに合わせられるシステムだったのだ。

しかも、安いと思ったものは、単なる粗悪品だった。粗悪品のために賃金も仕事も失うのがグローバル化だったのだ。

1990年代まで、日本人はずっと高賃金だった。給料が下がっていくという社会を知らない人も多かった。

だから、グローバル化が語られることになっても、大部分の人がまったくの他人事だった。2000年代に入っても、まだグローバル化の真の意味を知らない日本人は山ほどいた。

そのため、非正規雇用の拡大やリストラは自分たちには関係がないと思って無理な住宅ローンを組んだり、給料が右肩上がりのつもりで人生設計を立てたりする人もいた。

しかし、2000年代に入ってから、このグローバル経済の毒は急速に日本に回り始めた。

ニート、フリーターが数十万人単位で現れるようになり、格差が問題になりはじめ、若者の失業が深刻になった。そんな中で団塊の世代の大量退職が始まっていた。

高齢者も、これから若者と一緒になって地獄を見る

すでに2012年以降から団塊の世代が「引退」し、年金生活に入るようになっている。今後は悠々と年金生活をして人生を楽しみたいと考えている人たちも多かった。

「日本がどうなろうが、あとは年金をもらって悠々自適だ。逃げ切った」

しかし、年金が削減されていくようになり、医療費の自己負担が上がり、さらにインフレも起きていくのであれば、高齢者は貯金を取り崩して生きていくしかなくなる。

団塊の世代は逃げ切っていない。むしろ、団塊の世代が追い詰められることになる。

現在、日本人の貯蓄率はマイナスとなっているのだが、その原因は高齢者が貯金を取り崩しながら生きているからだ。さらに若年層が貯金できなくなっており、この2つが同時並行で起きて貯蓄率がマイナスになってしまった。

1975年、日本人の貯蓄率は25%で世界で最も高い国だったことを考えると、これは衝撃的な結果である。

資産を守るとか株式を買うとか、それどころではない。日本人の金融資産の平均値は1101万円だが、実はその平均値に到達している人は半分もいない。

高齢者がいったん貧困に堕ちてしまうと、働けない以上、貯金か子供にすがるしかない。

しかし、子供にすがろうにも今は子供がニートになって親にすがっているような状態であり、貯蓄もそれを切り崩して生活していれば、遅かれ早かれ消えていく。

そうなると、年金や生活保護にすがるしかないが、それすらもすがれなくなっていくとすれば……。もはや、生きるか死ぬかの貧困の中で孤立するしかなくなってしまう。

誰も助けてくれない。助ける余裕がない。高齢者には絶望の時代が迫ってきている。

年金や生活保護にすがるしかないが、それすらもすがれなくなっていくとすれば……。もはや、生きるか死ぬかの貧困の中で孤立するしかなくなってしまう。

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