消費税10%引き上げで日本の景気が破壊されたら安倍政権も日本も終わり

消費税10%引き上げで日本の景気が破壊されたら安倍政権も日本も終わり

安倍政権は2019年10月に消費税率10%の引き上げを予定通り行うと言っている。それに対して、安倍政権のブレーンのエコノミストたちは「消費税を上げることでデフレ脱却が不可能になり、中小零細企業に深刻なダメージを与える」と警鐘を鳴らし始めている。

この声が安倍首相に届くのかどうかは分からない。届かないで消費税率10%の引き上げが行われたらどうなるのか。いくら軽減税率のような処理が行われても、日本の景気が戻らないことを私たちは覚悟しておく必要がある。

それもそうだ。何かモノを買うたびに消費税が10%もかかってくるのであれば、「消費したら政府に罰金を取られる」と考えるわけで、それで消費が増えるようなことは何がどうあってもあり得ない。

折しも、アメリカと中国は互いに相手の製品に25%もの関税をかけるような激しい貿易戦争を繰り広げており、激震地となっている中国の株式市場だけでなく、仕掛けた側のアメリカの株式も下落につぐ下落となっている。

米中の軋轢は、いまや「新冷戦」と言われるほど広範囲に広がっており、かつてのような関係に戻れるのかどうかすらも分からなくなっている。世界経済は失速するのが明白である。そんな中で、消費税が10%も引き上げられたら景気が良くなると考えるのは、まったく常識的な話ではない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

消費税を引き上げるのは愚策

米中の「新冷戦」は、中国が知的財産の窃盗をやめて民主的になれば立ちどころに終わる。

しかし、中国がフェアになると、中国の驚異的な発展は消える。中国は窃盗した技術で成長してきたのだから、知的財産の窃盗が封じられた瞬間に成長できなくなる体質だからである。

そのため、中国は体質を変えずに策略で乗り切ろうとする。しかし、それはアメリカが許さない。アメリカは徹底的に中国の体質を批判し続けることになる。そんな状況なので、グローバル経済の変調は今後も長く続く可能性は充分にある。

当然のことながら、グローバル経済と密接に関連している日本もまたこうした波に飲まれて徐々に危機に追い込まれていく。

安倍政権は、そんな中で消費税を引き上げようとしているのである。

消費税というのは、あまりにも消費が過熱しているような時に行うような政策である。そんな状況になっていない今の日本で、どんどん消費税を引き上げるのは誰がどう見ても愚策だ。

そんなことをすると消費が完全に消えて企業の利益が悪化し、それによって株価が売られて景気は確実に悪化する。つまり、消費増10%引き上げがきっかけで、日本経済は負のスパイラルに落ちる。

エコノミストたちは「日本の景気を悪化させないためには、国民は消費を増やすべき」という話をしばしばする。

しかし、私たちは経済学に奉仕するために生きているわけではない。

給料も上がらないのに、消費税だけが上がって消費を増やせるわけがないのだ。エコノミストが何を言っても、国民は生活防衛のために消費を減らさないと生活できなくなるのだから、きっぱりとそうする。

常識的に考えれば、「物価が上がっているのに、なぜ消費活動を増やさないといけないのか」と言う話になる。それこそ、経済学に反した行動だ。消費税を上げれば消費が減るのは、給料が減れば消費が減るのと同じことである。

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悪いのは国民ではなくて政府

誰もが消費を控えると、景気が悪化して巡り巡って自分の首が絞まる。それは、以下のメカニズムが働くからだ。

(1)全員が生活防衛のために消費を控える。
(2)景気がどんどん悪化する。
(3)自分の勤めている会社も経営悪化する。
(4)自分の首が絞まる。

誰もが正しいと思ったことをしたら、それが全体に悪影響を与えて逆に問題を悪化するという現象を「合成の誤謬」という。

上記の例で言うと、消費を控えるというのは個人個人にとっては正しい行動なのだが、結果を見ると自分の首が絞まる。したがって、全体から考えるのであれば、消費を控えるのは良くないというのが「合成の誤謬」だ。

しかし、この合成の誤謬は避けることができない。個人は自分の生活を守らなければならないからである。

どうすればいいのかは、

答えは、簡単で単純な話だ。上記のような結果をもたらす消費税の引き上げを止めればいいだけなのである。そうすれば、消費を控えるという行動が生まれないのだから、合成の誤謬を招くような結果にならない。

それをわざわざするのであれば、悪いのは国民ではなくて政府であると言える。正確に言えば、政府に消費税アップを執拗に求める財務省であると言える。

しかし、消費税をアップしなくても、グローバル経済が失速して景気が悪くなるのは分かっている。私たちは消費税がどうなるかの前に、もうすでに生活防衛をしなければならない状況になっている。

景気が悪くなるのは分かりきっているのだから、合成の誤謬が発生するのを分かっていても、個人は余計な部分の消費を減らして蓄えるしかない。

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「食っていけること」を切に求めている

誰でも景気が良くなって欲しいと考える。景気が良くなれば収入が増えるし、収入が増えると土地や株式も値上げするし、そうなれば消費も増えるし、政府も税収が増える。景気が良くなれば、国も企業も国民も三者共に幸せになる。

政府がしなければならない最も重要な政策は、最終的には「景気を良くする」ということに結びついていなければならない。

実のところ、どこの国の国民も、保守政権だろうが、中立政権だろうが、リベラル政権だろうが、国益のために尽くして景気を向上させることができれば政権が拠り所とする思想が何であれ支持する。

場合によっては独裁政権ですらも、それで景気が良くなって食っていけるのであれば国民は支持する。

日本もそうだ。事実、日本国民は保守なのかリベラルなのかよく分からない自民党政権を長年に渡って支持しているし、自民党政権が大失敗したらリベラル政権を選ぶようなこともしている。

経済政策をしっかりとしてくれて、景気を向上させることを約束して動いてくれる政権であれば国民は何でも支持するし、そうでなければ支持しない。

これは考えてみれば当然のことである。いくら立派な理想があっても、国民を食わせられないような政権は意味がない。国民は「平和」を求めているのではなく「食っていけること」を切に求めているからだ。

安倍政権が長期に支持されているのは、別に安倍首相が独裁者だからではなく、安倍政権が民主党政権時代の日本の混乱を収束して、経済的な安定を取り戻してくれて、なおかつ株式市場も二倍以上に引き上げてくれたからだ。

日本経済の安定と成長に安倍政権は曲がりなりにも寄与してきた。だから、安倍政権は支持されているのだ。そんな中で、消費税を10%に引き上げて日本の景気を破壊してしまうような「見て分かるような失策」をしてしまうと、安倍政権の命運もこれまでになって政治は混乱していく。

そうなるのか、ならないのか。日本も令和の時代に入って、いよいよ正念場を迎えるようになっている。安倍首相の判断を注意深く見つめていきたい。(written by 鈴木傾城)

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安倍政権が長期に支持されているのは、別に安倍首相が独裁者だからではなく、安倍政権が民主党政権時代の日本の混乱を収束して、経済的な安定を取り戻してくれて、なおかつ株式市場も二倍以上に引き上げてくれたからだ。

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