将来的に日本円がアメリカドルよりも価値のある通貨になると思わない理由とは?

将来的に日本円がアメリカドルよりも価値のある通貨になると思わない理由とは?

ドル高・円安が一気に加速しているので、これを見て今まで手をこまねいてじっとしていた普通の日本国民が急に「外貨預金」に興味を持って円をドルに転換する動きを引き起こすようになってきている。しかし、私自身は逆に10年ぶりにドルを円に戻そうと準備をしているところだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

「弱気派は間違えていた」とか能天気なことを思うな

2022年に入ってから株価が下落していく一方なのだが、そういう中でもたまに株価が何気なくすっと上がる局面がある。それを見ると「もう株価下落は終わったのではないか?」とか「弱気派は間違えていた」とか能天気なことを言い出す人がいる。

本当にそうなのか、よくまわりを見回した方がいい。

ロシアとウクライナの泥沼の戦争は終わっていないし、これによって起こっているエネルギー危機はEU(欧州連合)のみならず、世界中をインフレという形で悪影響を及ぼしている。

さらにコロナ禍は東アジアでは収束しておらず、中国は強烈なゼロコロナ政策で今も国内を封鎖し続ける。中国は信用できない統計を出し続ける捏造国家なのだが、それでも経済減速を隠蔽することができず、国内経済の悪化を報告せざるを得ないような状況になってしまっている。

アメリカはと言うと、コロナ禍の経済ショックを救うために行った異次元の金融緩和が今になって怒濤のインフレを引き起こして、FRB(連邦準備制度)のパウエル議長は「物価の安定を回復するには、景気抑制的な政策スタンスを一定期間維持することが必要となる可能性が高い」と述べるほどになっている。

要するに「利上げを押し進めて高金利を維持する」というタカ派の姿勢を明確に打ち出しているのである。これによってアメリカの景気後退(リセッション)はほぼ避けられない見通しとなった。

なぜ、利上げが景気後退を生み出すのか、それはダークネス・メルマガ編の『2022年は生活をダウングレードし、安いジャンクフードでも食って寝ていればいい』の中で詳しく書いた。

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「2022年は金融的冒険は何もするな」と言い続けてきた

日本は日本で利上げができない状況になっているので、円安が加速しても日本政府は何もできないまま、ぼーっとしているので、止められない物価上昇で景気は完全に萎れてしまうだろう。

円安については、通常であれば「輸出に有利になるので日本企業においては大きなメリットがある」と主張する人もいる。しかし、すでにイノベーションを失った日本企業に海外に売れる商品がないのであれば、それも砂上の楼閣である。

むしろ円安の中で輸入価格が上がることによってあらゆる商品の価格が高騰して日本国民にダメージを与える弊害の方が大きい。実際、日本では賃金がそれほど上がらないのに物価だけがどんどん上がっていく「巻き込まれ型」の物価上昇がひどくなっている。

このような状況になると当然のことながら貧困層も増えていくわけだが、日本政府は国民から税金を取ること「だけ」は積極的だが、国民を救済するのは消極的なので、極限まで放置される。

現に、これだけ円安が進んでも日本政府は「注視する」というだけで何もしないで状況を悪化させている。そういうこともあって、アメリカも中国も欧米もロシアも、みんな駄目になっているのに日本だけ無傷というのはあり得ない。

2022年は先進国「すべて」が問題を抱えている最悪の年なのである。

これらの状況を網羅的に見ると、ちょっと株価が上がったくらいで「もう株価下落は終わったのではないか?」と考えるのは大間違いであるというのがよく理解できるはずだ。

株価下落が終わったどころか、大嵐はこれからやってくると考える方が正解である。こういうひどい状況はしばらく続きそうなので、私はダークネス・メルマガ編の中では2021年末から「2022年は金融的冒険は何もするな」とずっと言い続けてきた。

この考えは今も継続してる。だから、私は株価下落の中でも悪影響は最小限にとどめられており、かつドル高の恩恵を大きく受ける立場となっている。

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世の中の動きとは反対にドル資産の一部分を円に戻す

ドル高・円安が一気に加速しているので、これを見て今まで手をこまねいてじっとしていた普通の日本国民が急に「外貨預金」に興味を持って円をドルに転換する動きを引き起こすようになってきている。

しかし、私自身は逆に10年ぶりにドルを円に戻そうと準備をしているところだ。

私は2012年に「もうアメリカの覇権は終わってドルは紙くずになる」としきりに言われていた頃、すなわち1ドルが70円台だった頃にほぼ全資産をドル資産にしていた。この頃、全資産をドル資産にしたことを嘲笑する人も多かった。

当時は「もうアメリカの時代は終わって、これから中国の時代がくる」とか言う人が多かったのだ。

しかし私は中国の時代が来るなど1ミリも思ったことはない。どちらの国がイノベーションがあるのか、どちらの国が資本主義に則って動くのか、どちらの国に信頼できる企業が多いのかを考えると、どう考えてもアメリカであるのは明白だった。

日本とアメリカを比べてもアメリカの方が資本主義をリードする力があるというのは常識で考えると誰でも分かることだった。

だから、円が強い状況の時にドルを買っておくというのは理になかった動きであり、その動きは10年経った今、まさに私の資産を二倍に膨れ上がらせるという心地良い結果となって返ってきている。

そういうわけでドル高円安が続いて140円を突破するようになった今、一区切りとして逆にドルを円に戻してもいいのではないかと思っている。ドル圏から見ると安くなった日本円や日本企業を買っても悪くない。

最終的には日本円は日本の衰退と共に価値を喪失するので、どこかでドルに戻すのは間違いないが、今は安くなった円をドルで買うという発想は悪くない。そう思うので、私は世の中の動きとは反対に、ドルの一部分を10年ぶりに円に戻す。

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また「馬鹿なことをしている」と嘲笑されるのだろう

今のドル高円安はアメリカの利上げがもたらしている現象だ。アメリカが利上げして
日本が利上げしないのであれば利上げされている通貨が買われることになるので、アメリカの通貨が上がる。すなわちドル高になる。

ドル高円安は金利を通して見ると、典型的な動きが起こっているということになる。

ということはアメリカが景気後退(リセッション)に突入して急激に社会情勢が悪化すると、そこから利下げが起こることになる。アメリカの「景気後退ー利下げ」の動きになると、間違いなくドル安円高になる。

2023年のどこかで、そのような動きが鮮明になっていくのではないだろうか。

ただ私は予言者ではないので、ドル円がどこのタイミングで逆流するのか分からない。しかし、そういう時期は必ず来るので、そのタイミングで手に入れた円をまたドルに転換していこうと思っている。

言うまでもないが、その頃のアメリカは不景気の真っ最中である。FRBが「景気を犠牲にしてもインフレを止める」というので、景気はズタズタに悪化した中でやっとインフレが止まるような状況になる。

景気が悪化するという状況がFRBの利上げによって意図的に作り出されるわけなのだから、アメリカはこれから100%景気は悪化するのである。ドルが円に比べて相対的に安くなるのは「その時」である。

たぶん、来年のどこかでそうなると思うが、その頃には再び日本で「アメリカの時代は終わった」論が拡散されるようになり、誰もドルが欲しいなどと思わなくなっているのだろう。

私がその頃に円をドルに戻すと、また「馬鹿なことをしている」と嘲笑されるのだろう。しかし、10年後にはまたもや私のドル資産は倍々的に増えているはずだ。

普通に考えて欲しい。少子高齢化も解決できず、イノベーションも引き起こせず、ひたすら税金や社会保険料を引き上げるだけで国民を搾取するような日本が高度経済成長するとはまったく思えない。

とすれば、将来的に見て、日本円がアメリカドルよりも「価値ある通貨」になっていると私には想像もできない。そういうわけで、今はトレードで一時的に円に戻したとしても、ずっと円資産を持っていようとは思わない。

日本政府は野良犬のように生きる私のような人間を助けてくれるとも思えないので、私は自力で金融防衛するしかない。私と同じように考える人も増えるはずだ。そのうちに日本円を捨てる日本国民も増えていくだろう。

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