長期投資があなたに向いているかどうかは分からない。あなたが最初に知るべきこと

長期投資があなたに向いているかどうかは分からない。あなたが最初に知るべきこと

知能に関係なく、せっかちで忙しいのが好きな人はいくら長期投資の良さを頭で知っても難しい。身体が動いてしまうので長期投資ができない。あと、頭の良い人は情報通であったり、知能が高いゆえの疑い深さがあったりする。長期投資が向かない性格の人は間違いなく存在する。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

頭がどんなに良くても長期投資できない人はできない

保有している資本を2倍にするには、7.2%のリターンと複利運用では10年が必要である。

アメリカ株式はだいたい平均で考えると期待成長率は約10%だが、それが今後少し陰って7%台になったとしても、長期で保有していれば資本は2倍になっていくのは「10年はかかるが」約束されていると言ってもいい。

それならば、今持っている資本をすぐにアメリカの株式のインデックスに投資すればいいのだが、ほとんどの人はそれをしない。なぜなら「10年かかる」からである。この10年が問題なのだ。

宝くじは一瞬で億万長者になる。ところが、7.2%のリターンでは資本を預けた上に、複利を運用し続けなければいけないので、途中でやめられないし途中で引き出せない。

10年というのは短いようだが実際には長い。いくら10年後に2倍になるからと言っても、そんな長い間ずっと運用し続けるのは「おもしろくない」と考える人が多いし、実際に始めたとしても続かない人のほうが多い。

資本は正しい投資先に投資すれば長期で増えていくのは予言でも何でもなく事実なのだが、多くの人は気が短いので長期が耐えられない。だから、宝くじを好んで売り場に並ぶ人は多くても、長期投資を好む人は少ない。

投資におもしろさや忙しさやスリルを求める人は、絶対に長期投資はできないはずだ。そういう性格の人たちが長期投資をはじめても、かなりの高い確率で失敗する。長期投資は保有しておくだけなのでヒマだし退屈だ。

ヒマと退屈に耐えられない人は、わざわざ「何か」をしてしまうのだ。

要するに、寝かせているカネを降ろして、そのときに自分の関心の向いた何かに使う。理屈で長期投資のメリットが分かっても、どうしても動いてしまう。自分を止めることができない。そういう性格だからだ。

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自分のほうが複利よりも賢く資金を増やせる?

見ていると、長期投資ができるかどうかは知的能力はまったく関係ない。頭がどんなに良くても長期投資できない人はできない。長期投資は忍耐強さと粘り強さが必要なのだが、頭が良くても忍耐強いとは限らないからだ。

むしろ、頭が良い人はせっかちであったりする。あらゆるアイデアが頭の中に湧き上がっていくからだ。

アイデアに溢れて行動力に溢れる知的能力の高い人は、何もしないで資金をじっと寝かせて1年間7.2%を待てない。「自分が動けば、7.2%以上の儲けが取れる。そういうアイデアがある」と思ったら、そちらにカネを注ぎ込む。

さらに頭の良い人は自信過剰でもある。自分のほうが複利よりも賢く資金を増やせると考える。だから、長期投資みたいなまだるっこいことをやっているより、自分に投資したほうが結果が早いと思う。自分が動かずにおられない。

だから、基本的に事業家と長期投資家は性格的に真逆であることが多い。それでも、皮肉なことに一部の成功した事業家であればあるほど、最後は長期投資家として莫大な資産を築き上げる。

事業家は「株式会社」を設立して、それを運営する。だから、自分の興した株式会社の最初の大口投資家になるのだ。そして、事業家は会社と一蓮托生となるので、結果的に自社の長期投資家となる。この自社の事業が大成功したら、最終的には成功した長期投資家になる。

ビル・ゲイツもそうだし、ラリー・エリソンもそうだし、ジェフ・ベゾスもそうだし、マーク・ザッカーバーグもそうだ。みんな事業家として自社の株式を保有していて、自社が超巨大企業になったので、大口株主となって、しかも長期投資家として果実を手に入れる。

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知能が高いゆえの疑い深さが意志の貫徹を難しくする

しかし、頭が良くても事業を興さない人もたくさんいるし、自分に賭けない人もいる。こうした人たちは事業家でもないので、株を買うとしてもひらめきで買い、ひらめきで売るのでだいたいは短期投資家になる。

そもそも、頭が良い人は投資すら関心を示さない人もいる。

私の知っている天才肌の経済アナリストのひとりは非常に成功していて、億単位の資産があることを豪語しているが、この人は「投資」にはいっさい関心を持たない。なぜなら、自分の力でカネは作れるし、ストックよりもフローを重視しており、フローがデカければストックは必要ないと言うスタンスを持っているからだ。

もし、彼が気まぐれを起こして長期投資をしようと考えても、彼の性格だと続かないというのもわかる。ありあまる知性のために、何かしようとして「動いてしまう」のである。

知能に関係なく、せっかちで忙しいのが好きな人は、いくら長期投資の良さを頭で知っても無駄なのだ。身体が動いてしまうので長期投資ができないのである。

あと、頭の良い人はあまりにも情報通であったり、知能が高いゆえの疑い深さがあったりするので、意志の貫徹が難しかったりする。

どういうことかというと、「これから悪い時代に入る」とか「将来は本当に今の成長が取れるのか」とか、さまざまな予測やシミュレーションをして、「将来は真っ暗だ」という結論に達することもある。

たとえば、アメリカの将来が真っ暗の可能性があると考えるならば、アメリカの株式の指数ファンドに長期で保有しておこうとは思わないだろう。アメリカが崩壊して消えてなくなると思うのであれば、長期保有よりも即時売却が正しい答えとなる。

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投資の手法よりも何よりも前に知るべきこととは?

こうした人たちを見ていると、長期投資は誰でも勧められるものではないし、「長期投資が唯一絶対の答え」でもないことが見えてくるはずだ。たしかに長期投資の理論は役に立つし、実際に人々を豊かにする。

しかし、せっかちな人、スリルが欲しい人、自分に自信がある人、将来に対する猜疑心の強い人は、知能の良し悪しにはまったく関係なく、総じて長期投資ができないし、無理してやっても続かない。

日本政府が進めている「NISA」や「iDeCo」にしても長期投資であることが基本になっているのだが、おそらく「長期に向かない性格の人」が、長期運用に苦痛を感じたり、解約したりしてしまうのではないか。

そういう人はバクチみたいな投資や投機には熱中するが、長期投資にはまるっきり関心を持たない。彼らにいくら長期投資のメリットを説明しても無駄であるのは間違いない。性格が受け付けないからだ。

私自身は気が長く、事業家タイプでもなく、別に投資にスリルを求めているわけでもないので、長期投資が非常に向いており、実際にこの手法で自分には分相応な資産が作れたと思っている。

しかし、長期投資に向かない人は間違いなくいて、彼らが長期投資をしたら逆に不幸になってしまうというのも把握している。

投資にはさまざまな投資手法がある。

投資を知る前に、まずは自分の性格をよく知っておく必要があって、そこを無視したら、どんなに理論的に素晴らしいものでもうまくいかないのだと常々思うようになっている。

結局、「自分を知る」というのが最初に必要で、ここを間違うと永遠に失敗し続けることになる。投資の手法よりも何よりも、まずは自分の性格をミリ単位で正確に知るほうが重要だ。

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