2022年。どんどん悪化・下落していく相場環境の中で助かるたった1つの考え方

2022年。どんどん悪化・下落していく相場環境の中で助かるたった1つの考え方

日本政府が「貯蓄から投資へ」と言って投資を奨めている? 政府があなたの財産に責任を持ってくれるわけがない。「バッド・ディールよりも、ノー・ディールの方がいい」という考え方が必要だ。うまくやる意味のないことは、どんなにうまくやったところで意味がない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

岸田政権のやっていることは無責任極まりない

岸田政権は「貯蓄から投資へ」と言いながら、しきりに国民の貯金を投資に向かわせようとしている。実は「貯蓄から投資」というのは資本主義で生き残るためには正しい政策ではあるのだが、同時にこの政策は危険な政策でもある。

国や企業がどんどん成長していくのであれば、投資の成功の確率は高まる。しかし、国が停滞し衰退する中では、企業も成長が困難になる。当然、そんな中での投資は失敗しやすく苦しいものになりやすい。

岸田政権が「貯蓄から投資へ」というのであれば、岸田政権は国を成長させて国民の投資がうまく行くように環境を整えるのが先である。状況の悪い中での投資は、失敗者を生み出す可能性が高まるからだ。

そこを何もしないで、まして国民の金融リテラシーを引き上げることもしないで、ただ「投資しろ、投資しろ」と言うだけでは国民を巨大なリスクにさらすだけだ。そういう意味で岸田政権のやっていることは無責任極まりないものであると言える。

2022年に入ってから、投資環境は非常に悪化している。欧米は激しいインフレに見舞われていて、利上げがこれからも続くことや、当面の間は高金利を維持する姿勢は決定的になった。

それは、間違いなく景気後退《リセッション》を引き起こすわけで、そうであれば株式市場は日々の変動の中で上に行くことがあっても最終的には下落を余儀なくされる。

もっと分かりやすく言おう。株式市場は良くて「下落」、悪くて「暴落」する瀬戸際にある。2022年からはすでに下落基調なのだが、これから20%以上もの下落もあり得るという見方に同意する金融関係者も増えた。

そんな中で、何を考えているのか知らないが、金融リテラシーに乏しい国民の貯金を投資に向かわせようとしている岸田政権は非常に罪深いと言える。本来は「景気後退も考えられる今は投資に慎重になって下さい」と呼びかけなければならない政府が投資を煽っているのだから、どうしようもない。

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それは悪い取引(バッド・ディール)になりかねない

こんな環境の悪い中では、投資はしない方が逆に良い。『ダークネス・メルマガ編』では、年初からずっと「投資には慎重であるべき」「今年は金融的冒険はするな」と言い続けてきた。岸田政権が悪徳セールスマンのように煽っても、それに乗らずにじっとしているのが一番いい。

「バッド・ディールよりもノー・ディールの方がいい」

という言葉が欧米にはある。deal(ディール)というのは「取引」という意味なので、この言葉を分かりやすく言うと、「悪い取引をするよりも、何も取引しない方がいい」ということになる。

が、この言葉がこれほど合う時代はそうそうない。

日本国民の大半は投資をビジネスにしていないわけで、それならばインフレが吹き荒れ、企業業績が悪化し、これからリセッションも危惧されている中で、あえて「取引」する理由なんかない。

それは悪い取引(バッド・ディール)になりかねない。そんなバッド・ディールで苦しむくらいならば、最初から何の取引もしない方が無理に成果を出そうと苦心惨憺するよりも最終的には良い結末になる。

これは客観的に見れば当たり前のように思えるのだが、実は成果を焦っている時には、なかなかできる判断ではない。

とにかく一刻も早く、それこそ明日にも金持ちになりたいと願うギャンブラーは、とにかく取引しないと何も始まらないので、どんな悪条件でも何らかの取引でもしてしまう。すなわち、それが悪い取引(バッド・ディール)であるとしてもやる。

だからこそ、ハイリスク・ハイリターンを狙う「投資家と称しているギャンブラー」たちは、バッド・ディールのワナに落ちやすい。

相場環境が悪化しているにも拘わらず、「ハイテク企業は大丈夫だ」と言いながらレバナスに突っ込んだり、「仮想通貨は別世界で絶対に上がる」と言いながらビットコインやアルトコインに全財産をぶち込んだりした人は、まさに悪い取引(バッド・ディール)のワナに落ちたとも言える。

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場に流されるように「悪い取引」をしてしまう人々

「バッド・ディールよりもノー・ディールの方がいい」というのは、今の相場環境ではよく覚えておいた方がいい。「良い取引ができる環境ではない」と感じているのであれば、「何もしない」というのが最適解になる。

基本的に「バッド・ディールよりも、ノー・ディールの方がいい」というのは、ビジネスや政治の現場だけではなく、生きる姿勢としても「正しい考え方」「正しい決断」になることも多い。

しかし、この正しいことが、いろんなしがらみがあってできない。それが現実の姿である。特に、日本人にはその傾向が強く出るのではないかと感じている。

日本人は、同調圧力がよく働く。まわりがレバナスをやっていると言えばレバナスをやり、仮想通貨をやっていると言えば仮想通貨をやり、貯蓄から投資と言われれば投資をするという具合に、ずるずると状況に流されて関わってしまう。

それがバッド・ディールであると途中で気がついても、同調圧力の現場の中で「場に流されるように」関わってしまう。そして、結果として自分が追い込まれてしまうのだ。

政治の世界でも、経営の世界でも、投資の世界でも、場に流されるように「悪い取引」をしてしまう人々が大量にいる。自分が後で苦しむと分かっていても、同調圧力から逃れられずにバッド・ディールを決断してしまうのである。

当たり前の話だが、バッド・ディールをすると後から後からトラブルが発生する。

バッド・ディールは無数のトラブルを引き寄せるからだ。そのため、トラブルの対処に追われるようになり、やがて状況悪化で自分の首が絞まることになる。ノー・ディールであれば、最初から高みの見物でいられる。

それはノー・ストレスにもつながる。

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このバブルに乗らなければ金持ち行きのバスに乗り遅れる?

2022年からほとんど相場にアクセスせず、定期定額積立投資で機械的に株式を購入する以外にはノー・ディールでいる私は、今のところ相場がどちらに転ぼうと、まったくのノー・ストレスである。

「トラブルは乗り越えるよりも、避ける方がたやすい」とも言われる。

トラブルというのは、乗り越えるものではなく最初から避ける方がずっといい。つまり最初からバッド・ディールには関わらないというのが最も効率的なのである。この考え方は、人生を効率的に生きるのに役に立つ。

たとえば私たちの目の前には、しばしば難しい場面や難しい環境がやってくる。

振り返れば1990年代のバブル崩壊の時も難しい環境だった。もがいても、あがいても、どうにもならなかった。2000年のITバブル崩壊に巻き込まれた人もいるだろう。あるいは2006年のライブドアショックで危機に瀕した人もいるだろう。

リーマンショックで長い冬を強いられた人もいるだろう。

実は、どのバブル崩壊や金融ショックも、その直前には「相場環境が悪化している、社会環境も悪化している、このままではマズい」と判断できる人もいたし、「ここで相場に関わるのは危険だ」と主張する人もいた。

しかし、バブルは興奮と高揚を巻き上がらせて「何か胡散臭い」と思っても関わってしまう。「このバブルに乗らなければ金持ち行きのバスに乗り遅れる」という気持ちになり、結局は激しい暴落に巻き込まれてしまう。

こうした時に「バッド・ディールをするくらいなら、何も取引しない」という姿勢が最初からあったら、トラブルを避けられたはずなのだ。

日本政府が「貯蓄から投資へ」と言って投資を奨めている? 政府があなたの財産に責任を持ってくれるわけがない。

「バッド・ディールよりも、ノー・ディールの方がいい」という考え方は、人生をうまく生きるためには必須の知恵であるとも言える。要するに「うまくやる意味のないことは、どんなにうまくやったところで意味がない」ということだ。

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