メディカルダイエット・バブルはすぐに弾けるのか、それとも長くつづのか?

メディカルダイエット・バブルはすぐに弾けるのか、それとも長くつづのか?

今、相場は人工知能バブルにあるのだが、それと平行してメディカルダイエット・バブルでもある。このバブルはすぐに弾けるものだろうか。私自身はこのメディカルダイエット・バブルは、よほど致命的な副作用が報告されない限り、かなり長く続くのではないかと思って見ている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

革新的なメディカルダイエット時代の到来している

人々は楽に痩せたいと思っている。肥満は万病のもとであり、より健康的に生きたいのであれば、痩せるのが一番だ。しかし、痩せるのが難しい。とくに年齢がいけばいくほど新陳代謝が落ちるので痩せにくくなる。

しかし、いまや新しい時代がきている。メディカルダイエット時代の到来だ。

これを主導しているのが、イーライリリーやノボノルディスクである。マンジャロやゼップバウンドやオゼンピックやウゴービのような糖尿病・肥満症の治療薬はまさに革新的な薬である。

従来のダイエット薬とは異なり、食欲抑制や血糖値コントロールに加え、体重減少、心血管リスクの低減、腎機能改善など、肥満治療における包括的な効果が期待でき、欧米ではすでに広く使われており、飛ぶように薬が売れている。

マンジャロは、週に1回の皮下注射で、食欲抑制と血糖値コントロールを促し、持続的な体重減少を実現する。複数の臨床試験において、マンジャロはプラセボと比較して、体重10%以上の減少、HbA1c 1%以上の低下、LDLコレステロール10%以上の低下など、非常に優れた結果を示してた。

ゼップバウンドもマンジャロと同様の効果に加え、より速やかな体重減少と生活習慣病の改善効果が期待できる。ゼップバウンドを週1回15ミリグラム服用した場合、72週間で体重が22.5%減少することが確認されている。

これらの薬によって、持続的な体重減少が可能となり、肥満が引き起こすさまざまな病気を予防することになる。心血管リスクが低減し、腎機能改善が改善し、死亡リスクも32%減となる。

これらの肥満治療薬は、まさに新たな時代を切り開く薬剤として、今後ますます注目されていく。

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メディカルダイエット・バブルは長く続く可能性

もちろん、メディカルダイエットも薬(メディカル)である限りは、副作用の可能性もあれば、長期的に何らかの問題が発生する可能性も捨てきれない。

しかし、それはどの薬でも言えることであり、医師や専門家と相談しながら自分に合った治療方法を選ぶことでリスクを軽減できる。

この革新的なメディカルダイエット薬が売れまくっていることによって、イーライリリーやノボノルディスクの時価総額は爆発的に増えており、とくにマンジャロ・ゼップバウンドで最先端を走っているイーライリリーは、7424億ドル(約111兆円)にまで膨れ上がっている。

その結果、MicrosoftやNVIDIAやGoogleなどの人工知能銘柄と比して語られるほどの巨大企業となった。今、相場は人工知能バブルにあるのだが、それと平行してメディカルダイエット・バブルでもあるのだ。

では、このバブルはすぐに弾けるものだろうか。

さまざまな見解があるが、私自身はこのメディカルダイエット・バブルは、よほど致命的な副作用が報告されない限り、かなり長く続くのではないかと思って見ている。その理由は莫大な肥満人口があって、需要は途切れないからだ。

世界中で肥満人口は増加している。2021年の段階で、世界の約20億人が過体重となっており、対策が取られなければ、世界人口の半分以上が過体重となると警告されている。これは、世界規模の健康危機であるとも言える。

肥満は、心臓病、脳卒中、糖尿病、一部のがんなどの慢性疾患のリスクを高める主要な要因の一つである。これらの疾患は、個人の健康を損なうだけでなく、医療費の増加や生産性の低下など、社会全体に大きな負担を課す。

肥満人口を減らせることは、政府の社会保障費の削減にもつながる。個人も痩せたいと思っているが、政府も国民が痩せることに意味を見い出している。

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メディカルダイエットの頂点にいるイーライリリー

政府はこれまで食事制限や運動によって体重を減らすことを推奨してきた。しかし、これらのダイエット方法は継続が難しく、リバウンドのリスクも高いため、多くの人にとって効果的とは言えない。

しかし、メディカルダイエット薬は、意志の力を必要としない。GIP/GLP-1受容体作動薬は、食欲抑制や血糖値コントロールなど、さまざまなメカニズムによって体重減少を促す効果が期待できるので、自然に食欲を抑え、満腹感を持続させ、基礎代謝を上げて脂肪を分解しやすくする。

メディカルダイエット薬によって、現代社会は「本当の意味で肥満人口を減らせる可能性を手に入れた」のだ。

メディカルダイエット薬の顧客は莫大な数で存在している。それだけ考えても、メディカルダイエット薬の需要は途切れず、メディカルダイエット・バブルもかなり長く続くと考えるのは自然だと思うはずだ。5年のスパンで見ても、市場規模は2倍になっていくのではないかという予測もある。

しかも私が素晴らしいと思っているのは、この薬を切実に必要としているのは「先進国」の国民が多いということだ。

したがって、メディカルダイエットの頂点にいるイーライリリーに投資するのは、長期投資としては無理のない選択肢ではないか。

他の製薬企業もこの「金脈」に乗り出しているのだが、今のところイーライリリーのマンジャロとゼップバウンドは、競合他社の医薬品と比べて高い効果と安全性を備えている。しかもイーライリリーは、これらのメディカルダイエット薬を大量に供給できる工場も持っている。それでも、需要急増で製造が追いつかない状況だ。

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これによってダメージを受ける業種も出てきている

すでにイーライリリーの株価は相当上がっている。年初は600ドル付近だった株価はすでに782ドルとなっているから、30.33%も上がっているということになる。PERで見ると113倍であり、かなりの過熱感がある。

誰もがイーライリリーの将来性に賭けている。そのため、今からイーライリリーに投資するのは高値づかみになるのではないかという懸念もある。

さすがに将来性があるとしても、連日のように高値更新しているときに飛び乗るのもどうかと思うので、相場が何らかの変調をきたして優良株ですらも叩き売られる局面がきたら、ハイエナのように食いつくのがいいのかもしれない。

私自身はリーマンショック時にコカコーラやペプシのような超優良企業が爆下げしたときに買って今もずっと保有しており、これらの銘柄は増配によって私の配当率は8%を超える事態になっている。株価もよく上がった。

しかし、これらの銘柄はメディカルダイエット薬によってダメージを受ける業種でもある。とくにペプシはスナック菓子でも大きな収益を上げているのだが、メディカルダイエット薬によって買われなくなるのは、まさにスナック菓子のようなジャンクフードなのである。

今後、ジャンクフードを提供する企業は、変化を迫られる可能性が高い。もし、変化できないのであれば、場合によってはメディカルダイエットによって淘汰されるかもしれない。

メディカルダイエット薬はそれくらいの巨大変化を社会にもたらし、それぞれの企業にも大きな影響を与え、相場さえも変えてしまおうとしている。いろんな意味で、私はメディカルダイエット薬とバブルに注目している。

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