政府は国民を切り捨てる意図で投資を奨めている。もう自力で生き残るしかない

政府は国民を切り捨てる意図で投資を奨めている。もう自力で生き残るしかない

日本政府はもう社会保障費で国民の面倒を見ることはできないとサジを投げた。その結果として「貯蓄から投資へ」といっているのだが、これは言い換えれば「投資でもして、自分の老後は自分で何とかしろ」という政府の意思表示に他ならない。国民はもう自力で生き残るしかない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

将来に不安と恐怖心に駆られて投資の世界に?

新NISAによって、日本政府が国民を「貯蓄から投資へ」と誘っている。

日本政府はあまりにも無能であったので、少子高齢化を解決することができなかった。国も成長させることができずに30年を無駄にした。結局、日本政府はもう社会保障費で国民の面倒を見ることはできないとサジを投げた。

その結果として「貯蓄から投資へ」といっているのだが、これは言い換えれば「投資でもして、自分の老後は自分で何とかしろ」という政府の意思表示に他ならない。

国民も、「もはや国にも会社にも頼れない、年金もアテにならない」と不安と恐怖心に駆られて、今まで投資に背を向けていた人も投資におそるおそる足を踏み入れるようになってきている。

そこにマスコミやインフルエンサーが待ち構えて、「あれを買ったら儲かる、これを買ったら儲かる、あの銘柄で10倍、この銘柄で20倍になる」と射幸心を煽り出して、投資に関心のなかった層がギャンブルみたいなことをやり出している。

中には、つみたてNISAなのに、買い値を割ったからといって早々に売り飛ばしてしまったり、選んだ投資信託が下がった瞬間に「儲からないじゃないか」と積み立てをやめてしまったりする投資素人も出てきている。

さらに、新NISAでは選択した投資信託も指数の二倍・三倍の値動きをするレバレッジ型のものが除外されたというので、課税口座でそうした金融商品を選ぶ人まで出てきている。

著名人を装った詐欺で「どの銘柄を買ったら10倍になるのか教えます」というのがあったら、そこに金を送って投資資金を詐欺師に持っていかれた人さえいる。

こういう投資狂騒曲の光景を見ていると、かなり危ういものを感じてしまう。

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市場が開いていればいつでもバクチができる

いうまでもなく、株式投資は「投資」にもなれば「投機」にもなる。投機とは要するにギャンブルのことなのだが、株式市場は毎日のように上げ下げがあるので、ここに着目すると市場で「丁半バクチ」ができる。

丁か半かは、上がるか下がるかに置き換えられるが、チャートを類推したり、出来高の増減を見たり、何らかのニュースを聞いたり、あるいは完全なる動物的なカンで、どちらか一方に賭けて自分の「運」をそこで試すことが可能なのだ。

自分の手持ちの金だけでは利ざやが取れてもたかが知れていると思ったら、信用で3倍の取引ができるようになる。危険度は3倍になるが、うまく当たれば儲けも3倍になる。

一日に何度でもバクチができる。市場が開いていればいつでもバクチができる。入場資格には学歴も経歴も性別も人種も人間性も問われない。金さえあれば誰でも参加可能だ。

だから、株式投資でギャンブルに明け暮れる人がいて、勝負運の強さで大金持ちになる人もいれば、逆に熱くなってすべての財産を注ぎ込んで何もかも失う人もいる。

こうした動きは派手で目立つので、だからこそ「株はギャンブルだ」と考えて、堅実な人は株式投資に悪いイメージを抱き、そこから遠ざかってしまう。

株価の上げ下げに着目して賭けていれば、たしかに株式投資はギャンブルと同様であり、勝てるかどうかは運に委ねるしかない。

そこで大当たりをしたとしても、その大当たりを再現することができない。ギャンブル的手法を長く続けていても、それが投資に転化することはけっしてない。ギャンブルはいつまでたってもギャンブルなのだ。

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上げ下げだけに着目するのは単なる運試し

株式市場でも、売って買ってを繰り返せばギャンブルになる。ギャンブルはたいてい負けるのが関の山だ。

ただ、このギャンブルは勝てる確率が非常に高い時期と、負ける確率が非常に高い時期があって、うまく入ってうまく出られた人はギャンブルしているのに投資をしたかのような結果を手に入れることができるようになる。

たとえば、1985年の日本の代表的な株式を相手にバクチ的な手法で売り買いして、1989年にそれに飽きて足抜けしていたら、その人は「もしかしたら自分は天才ギャンブラーなのか?」と勘違いするほど勝率が高かったはずだ。

なぜなら、この期間の日本株式市場は巨大バブルのまっただ中にあったので、何を買ってもそれなりに勝てたからだ。

しかし、バブルはいつ終わるのかは誰にもわからなかったので、1989年に足抜けできた人はほとんどいない。そのため、結局は1990年以後のバブル崩壊に巻き込まれて、それまでの運をすべて吐き出す結果になってしまっていた。

同じことが2000年に起きたITバブルとその崩壊、あるいはその後に起きた新興市場バブルとライブドラショック、あるいは2017年に突如として起きた仮想通貨バブルとその崩壊、2020年3月のコロナショックでもいえる。

ギャンブルは勝てる時期があるのだが、その時期が終われば一気に持ち去られていくのが世の常だ。バブルが崩壊して相場が下落していく最中は、何を買ってもいつ買っても負ける。相場はとにかく下げ続けるからだ。

勝ちやすい時期と負けやすい時期がある。しかし、上げ下げだけに着目していたら、それは単なる運試しであり、投資にはなりえない。

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投資は勝てた理由が説明できるし再現性がある

もし、株式投資がこのように「株価の上げ下げに賭けるもの」だけであったら、まともな人は株式投資などは公営ギャンブルかパチンコと同じだと思って近づかないはずだ。

しかし、株式投資が他のギャンブルと唯一違う点がある。それは株式というのは発行元が企業であり、その企業の事業や財務を分析すると将来の価値が見えてくることである。つまり、企業の内容をしっかり把握し、財務分析をすることで「将来価値」が読めることがあるのだ。

もちろん企業によって将来価値が読みやすい企業もあれば読みにくい企業もあるので、一概に分析すれば「将来が読める」とは言い切れない。それでも「読みやすい企業」というのがあるというのは事実だ。

これは、きちんと分析した結果として「将来性がある企業の株式を保有」しておけば、何も運やカンに頼らなくても勝てる確率があるということを意味している。

たとえば、将来性と継続性のある事業をしている企業があって、事業が人々に受け入れられていて、大きなブランドもあって、利益も毎年しっかり出していて、配当も継続して出していて、毎年のように増配している企業があるとする。

この企業に投資して株を保有しておけば、短期の株価変動に巻き込まれて買値を割ったとしても、事業が成長して利益も出し続けるのだから、いずれは株価も上がっていくと予測することが可能だ。

そこに金を張るというのはギャンブルではない。それは「投資」になる。ギャンブルはなぜ勝てたのか負けたのかが説明もできないし再現もできないのだが、投資は勝てた理由(場合によっては負けた理由)が説明できるし再現性がある。

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投資でうまく生き残る方法を私たちは身につける

直感で上がるように見えたとか、チャートの形を見て相場を張るとか、誰かが上がるといったから買ったとか、そういうのはギャンブルである。株式投資がギャンブルだという意識が抜けない人は、そういう意識で株を買っている。

しかし、株式投資は丁か半かのバクチではないし、ギャンブラーがするものでもない。ギャンブルしようと思ったらできないことはないが、理論と理性と常識と忍耐で勝負しようと思えば、それもまた十分に可能な世界なのだ。

日頃から理論的に考えて常識的に生きている人は、その人に合った株式市場のつき合いかたがある。まずは、それに気づく必要がある。株式市場全体の知見を深めていくと、ギャンブルとは違う世界が見えてくるはずだ。

株式市場は、企業の財務状況、経済の動向、政治的な出来事、技術の進歩など、多くの要因によって影響を受ける。理論的な考えかたを持つ人は、これらの要因を分析し、理解することで、投資対象を選べるようになるし、リスク管理もできるようになる。

そして、短期的な価格変動に左右されるのではなく、企業の成長や市場の成熟に伴って利益を得ることができるようになる。感情ではなく、論理に基づいて判断を下せるようになるのだ。

資本主義で生きているのに、資本主義の真髄である投資に関して、「金がない」「興味がない」「リスクが怖い」「知識がない」と避ける理由を考えて逃げていたら、ジリ貧になってしまうのは当然のことである。

だから、日本人は「株式投資はギャンブルではない」という事実を理解することから学習しなければならない状況だ。ここを乗り越えると、また新しい世界が広がっていく。

日本政府は国民を切り捨てる意図で投資を奨めているが、それならば投資でうまく生き残る方法を私たちは身につけなければならない。そういう時代になっている。明確に、資産サバイバルの時代に入ったのだ。投資に適応しないと、これからの時代は生き残れないだろう。

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