マイナンバーカード。国民はそれによってリスクが高まるが政府はゴリ押しだ

マイナンバーカード。国民はそれによってリスクが高まるが政府はゴリ押しだ

日本政府がマイナンバーという「国民監視のシステム」をゴリ押しする「真意」は、私たち国民にはまだ見えていない。国民にとって最悪のケースは、邪悪な政権が誕生した時だ。政府は自分たちにとって邪魔な言動をする国民の個人情報を簡単に入手して攻撃できるようになる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

次々と問題が発生するマイナンバーカード

政府が勝手に進めているマイナンバーカードなのだが、次々と問題が発生している。

本人名義ではない誤って登録されていたケースが748件、家族内で同じ口座を登録していたケースが約13万件で、これは「発覚したものだけでもこれくらいの数」であって調査すればもっと大量に出てくる可能性があるという。

誤登録されたらどうなるのか。

ある人がマイナンバーカードに紐付けされた自分の保険証を調べたら、なんとまったく赤の他人の情報が出てきて、住所・氏名・年齢どころか、その人の個人の医療情報まで出てきた。

それだけではない。他のケースでは、マイナンバーでコンビニの証明書交付サービスを使って戸籍謄本を印刷したら、他人の戸籍謄本が印刷された。誤登録によって信じられない個人情報の漏洩が起きていたのである。

印鑑登録証明書を印刷してみたら、なぜか登録を抹消したはずの印鑑登録証明書が出てくるというミスもあった。

さらに、公金受取口座で他人の銀行口座が誤って紐付けされるという致命的なミスも発生しているので公金が自分の口座に入らない。凄まじいミスであると言える。

しかし政府は、このマイナンバーカードを保険証に紐付けして、来年秋にこれまでの保険証を廃止し、原則すべての国民がマイナ保険証に切り替えることを目指すと言い出している。

【金融・経済・投資】鈴木傾城が発行する「ダークネス・メルマガ編」はこちら(初月無料)

マイナンバーは国がやっているので国民は逃れようがない

デジタル庁の河野太郎は「起きているのは人為的なミス」と言って何でもないようなそぶりを見せている。そして、こうした誤登録などのミスや安全性がまったく片付かないうちから、逆に次々といろんなものを紐づけていこうとしている。

しかし、紐づくものが増えれば増えるほどシステムは不安定になり、脆弱化し、信頼性がなくなっていく。しかも危険な話がある。「このシステムはもっと不安定化する」というのである。

政府はマイナンバー関連システムを作ったが、財務省が指摘するには、このシステムは構成が古く、毎年数百億円規模の経費が発生して関連予算は増える一方であるというのだ。

・2021年度は113億円
・2022年度は290億円
・2023年度以降も費用増加予定

財務省はデジタル庁にシステム刷新を求めている。しかし、システム設計に関わった人間なら誰でも分かることなのだが、古いシステムを稼働しながら新しいシステムをイチから設計するというのは、また莫大な予算がかかり、その新システムもまたバグを発生させるのでぐちゃぐちゃになる。

その良い例がいくつかの銀行が合併して基幹システムを作り替えて何度もシステムが止まって大ひんしゅくを買った「みずほ銀行」である。

みずほ銀行の相次ぐシステムダウンに呆れて、メインバンクをやめるどころかみずほ銀行そのものを解約した個人・法人が続出したが、マイナンバーは国がやっているので国民は逃れようがない。

政府のやっていることは、すさまじく性急で稚拙であるという印象が拭えない。しかし、政府はこのマイナンバーカードをどんなに問題が発生したとしても絶対に普及を止めることはなく、ゴリ押ししている。

【ここでしか読めない!】『鈴木傾城の「ダークネス」メルマガ編』のバックナンバーの購入はこちらから。

国民はそれによってリスクが高まるが政府はゴリ押し

政府はマイナンバーを作って、当初は「任意です」と言いながら、いつの間にか保険証を統合すると言い出した。これによって、国民は絶対にマイナンバーカードを取得しないといけなくなる。

保険証に統合されたら使いやすくなるわけではない。高齢者はパスワードを忘れることもあるし、紛失するリスクもある。第三者に使用や保管を任せると、悪用される恐れもある。当然、個人情報の漏洩のリスクもある。

街の医者もマイナンバーに統合された保険証を扱うには、それなりの機材を揃えなければならずコスト増になるし、機材を揃えないと割り切った場合、マイナ保険証にした患者は場合によっては利用できないかもしれない。

紛失のリスクはかなり深刻で、身分証明も保険証も運転免許証もすべてマイナンバーで代用していたら、紛失してしまった瞬間に社会生活のあらゆることができなくなる。自分が自分であることを証明できなくなるのである。

しかも、マイナンバーカードは再発行にもかなり時間がかかる。即日発行ではない。身分証明も保険証も運転免許証も即日で使えないとマズいのに、再発行で2週間かかりますとか1ヶ月かかりますとかになったら、それこそ1ヶ月病院に行けないとか運転できないということになる。

そういう問題を知りつつ、政府はあらゆるものをマイナンバーに統合してしまおうとしてる。保険証がマイナンバーに統合されたら、次は免許証も統合されることになる。

もちろん、すでに印鑑証明書も統合されているし、戸籍謄本も統合されているし、住民票も統合されている。さらに銀行口座も統合されている。証券口座も統合されている。個人事業主は法人の決算書にも統合されている。

ありとあらゆるものがマイナンバーに統合される。国民はそれによってリスクが高まるのに、政府はとにかくゴリ押しだ。

ダークネスの電子書籍版!『邪悪な世界の落とし穴: 無防備に生きていると社会が仕掛けたワナに落ちる=鈴木傾城』

「国民が便利になる」という怪しい大義名分

マイナンバーによってすべてが統合されたら、どうなるのか。政府は「国民監視」を完全に完成させることができることになる。政府はマイナンバーのシステムをのぞき込みさえすれば重要な個人情報のすべてにアクセスできるのだ。

そうやって日本政府が「国民監視のシステム」を完成させて、何をやりたいのかは私たち国民にはまだ見えていない。

国民にとって最悪のケースは、邪悪な政権が誕生した時、その政府は自分たちにとって邪魔な言動をする国民の一元管理された個人情報を調べて、「何か」をすることができるようになるということだ。

たとえば、重箱の隅を突いて脱税で締め上げることもできる。それこそ政府が悪意を持ってマイナンバーカードの使用を停止したら、その対象者はすべての公的機関にアクセスできなくなって社会的に抹殺されることになる。

保険証も免許証も銀行も証券もそれに紐づいてるのだから、ある日、突如としてマイナンバーが使えなくなったら、社会生活ができなくなってしまうのである。

さらに政府はこの個人情報を自由に民間業者に提供することができるようになるわけで、意図的な情報漏洩で個人を破滅させることすらもできる。

「まさか、日本政府がそんな途上国みたいなことをするわけがない」と思うかもしれないが、そういう政権が日本にできないとは誰も言えない。将来は、政府と国民は分離して、敵対するかもしれないのである。

マイナンバーは「国民が便利になる」という怪しい大義名分で進められているが、本当に便利になるのかどうかは分からないままゴリ押しされているわけで、その怪しさは半端ではない。

亡国トラップ─多文化共生─
『亡国トラップ─多文化共生─ 隠れ移民政策が引き起こす地獄の未来(鈴木 傾城)』

鈴木傾城のDarknessメルマガ編

CTA-IMAGE 有料メルマガ「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」では、投資・経済・金融の話をより深く追求して書いています。弱肉強食の資本主義の中で、自分で自分を助けるための手法を考えていきたい方、鈴木傾城の文章を継続的に触れたい方は、どうぞご登録ください。

テクノロジーカテゴリの最新記事