グーグルは、秘密プロジェクト「ドラゴンフライ」で邪悪になるのか?

グーグルは、秘密プロジェクト「ドラゴンフライ」で邪悪になるのか?

グーグルは、従業員のほとんどに秘密で「ドラゴンフライ」というコードーネームの中国向け検索エンジンを用意し、中国に進出しようとしていた。

「ドラゴンフライ」とは何だったのか。これは中国政府が決めた検閲を取り入れた「偏向検索エンジン」が正体だった。

中国政府は厳しい言論規制を国内に敷いている。そのため、グーグルの検索エンジンをそのまま中国に持っていっても中国政府の許可が得られない。

そこで、グーグルは、中国政府の意向に沿った形で、当局に不都合な単語・画像・サイトをブロックするフィルター機能が付いた検索エンジンを開発していたのだった。

これを暴露したのは、アメリカのニュース・メディア「インターセプト」だったが、この記事を元にアメリカの公共放送である「ボイス・オブ・アメリカ」中国語版が伝えて、世間に知られることになった。

それによると、グーグルのCEO(最高経営責任者)であるサンダー・ピチャイ氏は2017年頃から中国の高官と接触し、秘密プロジェクトである「ドラゴンフライ」を進めていた。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

2017年からグーグルは中国市場を取りに行った

グーグルは2010年に「中国の全体主義的な情報規制は容認できない」として、中国市場から撤退した過去を持つ。

そのため、中国ではグーグルのサービスはほとんど使えない。検索エンジンだけでなく、グーグル・マップも、Gメールも、ユーチューブも使えない。

あれから8年経ったが、この間に中国のインターネット環境は大幅に加速して、中国の内需だけでアリババやJDドットコムやバイドゥなどが大躍進するようになっていた。

グーグルは、さらなる成長を遂げるために「中国」という巨大な市場を見過ごすことができず、何とかして中国の敷く防火長城(グレート・ファイヤーウォール)の中に潜り込みたいと考えていた。

兆候はあった。

2018年5月。グーグルは中国の低価格スマートフォン企業である小米(シャオミ)と提携して拡張現実開発キットである「ARCore」を中国に持ち込むことに決めている。

アップルもiPhoneでAR(拡張現実)機能を次世代の技術として強力に推進しているのだが、グーグルも猛追しており、そのソフトウェア開発の基盤として用意したのが「ARCore」である。

これを中国のソフトウェア企業、スマートフォン企業に取り込んでもらったら、それだけで一気に14億人の市場を制覇することができる。それは、アンドロイドの存在価値をより強化することに役立つ。

さらにグーグルは2018年6月、中国インターネット通販2位のJDドットコムとの提携も決めた。クラスA普通株2710万株、金額にして5億5000万ドルの出資だった。

こうやって見ると、中国は2017年から明確に中国市場に戻り、市場を積極的に取りに行っていることが分かるはずだ。その流れの中に秘密プロジェクト「ドラゴンフライ」の動きがあったのだ。

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暴露したのは、グーグルの匿名スタッフだった

しかし、「ドラゴンフライ」の正体は、中国政府の意のままに検閲をする検索エンジンであることから、グーグルはその姿勢に大きな嫌疑を持たれることになっている。

このプロジェクトは、グーグルの中でもほんの少数の高級幹部と開発者のみによって進められていたものだが、これを暴露したのはグーグルの「匿名スタッフ」である。

グーグルは企業理念として公正であり中立であることを企業理念としており、これを「Don’t Be Evil(邪悪になるな)」という言葉で表現していた。

中国政府は自分たちの独裁に歯向かい、自分たちの独裁を脅かす存在に対しては、苛烈な弾圧を持って対応してきた。

最近も、独裁の象徴である習近平国家主席のポスターに墨をかけた若い女性が当局に拉致されて行方不明になった事件があったが、不当で不正な弾圧は今も続いている。

さらに2018年8月10日に、国連が「少数民族のウイグル人ら100万人を新疆ウイグル自治区で拘束している」と指摘したように、中国はウイグルやチベットでも徹底的な宗教弾圧を大規模に行っているのである。

そのため、中国では中国共産党を批判する単語や、習近平に都合の悪い単語、あるいはウイグルやチベットの弾圧を批判するようなものについては、一貫して言論封鎖の対象にしてきたのである。

これを中国は「敏感用語」という言い方でブラックリストに載せているのだが、グーグルはこうした「敏感用語」を取り入れて検索エンジンを提供しようとしている。

これが実現すれば、もはやグーグルは中国政府の手先になろうとしているも同然だと「ドラゴンフライ」の実態を知ったグーグルのスタッフは考え、それを暴露したのである。

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中国におもねって金を稼ぎたいという邪悪な本音

グーグルの理念「Don’t Be Evil(邪悪になるな)」はいったいどこにいってしまったのか。

2018年5月。グーグルは新たな行動規範を配布しているのだが、そこには「邪悪になるな」という文言は消えていた。

折しも、グーグルが中国共産党におもねった「ドラゴンフライ」の開発が進んでいるその最中、「邪悪になるな」という理念は意図的に消されたのだ。

まるで「これからは中国の金を取り込むために我々は邪悪になる」と言わんばかりの姿勢である。だから、グーグルの社員は大きなショックを受けて、グーグルが突き進んでいる道に疑念を抱くようになっているのだ。

この「ドラゴンフライ」をマスコミに通じて知ったグーグルの従業員は、このプロジェクトに反対する1400人で「倫理と透明性に関する緊急呼びかけを求める」と声明を発した。

この動きが出ると、グーグルのCEOであるサンダー・ピチャイ氏はすぐに「中国で検索商品を出す状況に近づいていない」と今までの前のめりの姿勢を否定する発言をしている。

しかし、メディア「インターセプト」の報道では「もう導入寸前にまできている」とあるので、まったくニュアンスが違う。

これは「ドラゴンフライの計画が途中でバレたから、とりあえず止めておく」ことにしたのではないかと従業員に受け止められている。

つまり「中国におもねって金を稼ぎたいという邪悪な本音を隠して、邪悪でないフリをした」と思われるようになっているのだ。

グーグルが邪悪になって、理念を捨ててでも人権侵害政府の中国におもねって金儲けに邁進するのか、それとも正気を取り戻して中国に一定の距離を置くのか分からない。

もし、グーグルがドラゴンフライで中国市場を取りに行ったら、グーグルは莫大な利益を手に入れるのかもしれないが、世界中で「邪悪な企業だ」と思われて、グーグルの持つ企業ブランドやカリスマ性は消えてしまうことになる。

グーグルがどちらに転ぶのかは分からないが、舵取りを間違うと、グーグルはもう人々が憧れる企業ではなくなっていくのは間違いない。(written by 鈴木傾城)

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もし、グーグルがドラゴンフライで中国市場を取りに行ったら、グーグルは莫大な利益を手に入れるのかもしれないが、世界中で「邪悪な企業だ」と思われて、グーグルの持つ企業ブランドやカリスマ性は消えてしまうことになる。

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