サントリー新浪社長の「45歳定年制」発言は、人材切り捨て時代が来たことを示唆している

サントリー新浪社長の「45歳定年制」発言は、人材切り捨て時代が来たことを示唆している

今後、外国人の大量流入やインターネットを中心としたハイテクの超高度進化によって現場の合理化は極限まで進んでいくと、いつでもサントリーホールディングスの新浪社長が言う通り、「45歳定年制」が当たり前になっていくだろう。すでにそういう時代に入っているのだ。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

今やホワイトカラーの仕事の大半は取り替えがきく仕事

サントリーホールディングスの新浪剛史《にいなみ・たけし》社長は、2021年9月10日の記者会見で「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」と述べたことで賛否両論の意見が噴出した。

「これは人材の切り捨てじゃないか!」と憤る意見もあれば、「今の雇用慣行を継続すれば企業が行き詰まるので、そうならざるを得ない。新浪社長は多くの社長の意見を代弁したのだ」という意見もある。

しかし、いずれにしても多くの日本人がこれで気づいたのは、やはり終身雇用は維持できない社会になりつつあり、企業は「切り捨て」を望み、それを行う決意があるということだった。

これは別に私だけが言っていることではないのだが、今後は「誰でもできる仕事」に就いている人は45歳どころか会社が必要ないと思ったら即クビを切られるようになっていく。

「自分が自発的な行動をしないでも回る仕事」に就いているのであれば、会社の都合でいつでも切り捨てられる。

自分が自発的に行動しなくても仕事自体が回っているというのであれば、命令されて動く要員であるということであり、そうであるならば、いくらでも取り替えが聞く要員であるということに他ならないからだ。

「そんなことを言えば、単純作業、ウエイトレス、ルーチンワークのホワイトカラーの仕事などは、ほとんどがそうではないか」と思うはずだ。その通りだが、それだけではない。今やホワイトカラーの仕事の大半も「取り替えがきく」仕事なのである。

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 従うだけで仕事が回るなら、日本人でなくてもいい

「自分が何も考えなくても仕事が回る」というのはリスクある仕事である。自分が何も考えないということは、他人がビジネスにおいて重要な決断をしているということでもある。そして、その他人の決断に基づいて動いているということである。

考える必要がない仕事であればあるほど、取り替えがきく要員となる。

取り替えがきくのであれば、低賃金でも悪条件でも働く人間と取り替えた方がいいと上層部は考える。たとえば外国から人を連れてきて、とんでもない低賃金でも働いてくれる人員がいるなら、そちらを選ぼうとする。

どんな仕事でもルーチンワークがある。ルーチンワークは考える必要はない。手順通りにやればいい。現場によっては一度指示を出せば、それに従うだけで仕事が回ることもある。

その指示は上司の口頭の指示であることもあるが、それに従うだけで仕事が回るというのであれば、従う人間には日本人でなくてもいい。せいぜい、言われたことをできるだけの能力があれば外国人でも誰でもいいということになる。

まわりと同じようにしていれば仕事が回ることもある。すでに仕事に対する流れができていて、見よう見まねで仕事が回る。

そういう仕事は別に日本語が堪能ではなくてもいいのだ。つまり外国人でも代替がきく。だから、日本企業は低賃金・悪条件で働く外国人を重宝して、大量にそうした低スキル外国人を入れているのである。

低賃金・悪条件で働かない日本人は用済みなのだ。だから、多くの日本人若年層が仕事を見つけることができなくなり、見つかっても非正規雇用で悪条件の仕事だけであったりする。

日本の底辺では、すでにそうした世の中にすでになっている。ホワイトカラーの仕事もITやDXでルーチンワークが増えていけば、やがて低賃金・悪条件の外国人に取って変わることもあるだろう。あるいは、AI(人工知能)が仕事を奪う可能性もある。

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企業にとってメリットは従業員にとってのメリットではない

分かりやすくまとめると、以下の仕事に就いている人がリスクを抱えることになる。

1. 自発的な行動をしないでも仕事が回る。
2. 自分では何も考えなくても仕事が回る。
3. 自分の意見をあえて持たなくても仕事が回る。
4. 何も言わなくても仕事が回る。
5. 新しいことは提案しなくても仕事が回る。
6. 新しいことをしなくても仕事が回る。
7. 指示書があってそれに従うだけで仕事が回る。
8. 上司に従うだけで仕事が回る。
9. まわりと同じ行動をするだけで仕事が回る。
10. 自分が責任者にならなくても仕事が回る。

上記のような仕事が大量に増えているのは、企業が意図的にそのようになるように工夫し、現場を改良してきたからである。

そうすることによって個人の力量が違ったとしても現場は混乱せず、なおかつ誰がいなくなっても速やかに別の人間を充当できる。

企業にとっては「誰がやっても同じ」「誰でもできる」「考えなくても仕事が回る」というのはメリットがあるのだ。それによって賃金が低い人間に入れ替えることも、機械化することもできるようになるからだ。

企業にとってのこのメリットは、従業員にとってのメリットではない。

企業がこれによって合理化とコスト削減ができるようになったというのであれば、従業員はリストラや低賃金化の危機にさらされることになったということなのだ。

今後、外国人の大量流入やインターネットを中心としたハイテクの超高度進化によって現場の合理化は極限まで進んでいくと、いつでもサントリーホールディングスの新浪社長が言う通り、「45歳定年制」が当たり前になっていくだろう。

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見捨てられた人たちは極限的な貧困に見舞われていく

多くの仕事は「誰かの指示待ち」「マニュアル通りの動き」で完結するように合理化が進められている。だから、多くの人々が切り捨てに遭うリスクにさらされているということができる。企業はいくらでも「代わりの歯車」を見つけてくる。

コスト削減になるというのであれば、その歯車は日本人でなくても構わないし、それどころか人間でなくてもいい。

低賃金・悪条件で働く外国人、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による合理化で、余計な人材が削減できるのであれば、企業はそれだけ利益を会社に残すことができる。それは、経営者にとっては素晴らしいことなのだ。

環境的にそれができる社会となった。だから、企業が合理化を推し進めて従業員を減らしていくのは、もう止められない流れに入ったと考えた方がいい。

今後、多くの企業が人員を切り捨てる。仕事が消えるので、見捨てられた人たちは極限的な貧困に見舞われていく。

自分が会社に淘汰されないためには、自分の仕事がマニュアル化できないか、できにくい仕事に就かなければならないということだ。生き残るためには、上記のリストの裏返しでなければならないのである。

突き詰めれば、自分の仕事は自分で作るか、高度なスキルを持って自分がいなければ生き残れなくなっているということである。

それができていないのであれば、今からそれを準備しなければならない。時代は急激に変わってきているのだが、まだ本格的に変化する前の今こそが自分の人生を変える最後のチャンスであると言える。

サントリー新浪社長の「45歳定年制」の発言は、人材切り捨て時代が来たことを示唆していると私は捉えている。

書籍
『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態(巣内 尚子)』

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