日本で貧困のニュースが減っているが、この問題は必ず顕在化して爆発する

日本で貧困のニュースが減っているが、この問題は必ず顕在化して爆発する

会社組織はピラミッド型になっている。代表取締役社長はひとりで、その下の重要なポジションも数人である。役職が下になればなるほど人数が増えていく。

ところで、現在の日本の人口動態は若年層が減っており、中高年以上が多いという逆ピラミッド型の構造であるのはよく知られている。組織はピラミッド型で、人口構造は逆ピラミッド型であるというのは何を意味しているのかは一目瞭然だ。

働く中高年は多いのだが、重要なポジションは限られているので、そのほとんどが重要な地位に就くことができず、組織のピラミッドから弾き飛ばされるのだ。

重要な地位に辿り着けなかった中高年は、日本の組織では40代から50代のどこかで「棄てられる」ことになる。

すでに日本では大企業でも終身雇用が崩壊しているので、50代になると退職が強要されて、子会社に出向させられたり、リストラされたりする。そうなると、当然のことだが、賃金は極端に低下してしまう。

昨今は、大手銀行でも家電メーカーでもこのような「いらない中高年」がことごとくリストラされている。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

あぶれた中高年は急激に組織の「お荷物」に

内需が拡大して社会が活性化している時期であれば、リストラはあまり問題にならない。企業は大量に人材を募集し、転職が容易で給料も下がらないどころか上がることもあるからだ。

しかし、今の日本は違う。少子高齢化の対応をまったくせず、内需は停滞して新しい仕事は消えていき、知らないうちに外国人労働者が大量に入り込み、消費税も上がっていく。

企業は停滞する内需に不安を覚えて内部留保に走り、株主にも突き上げられて利益確保のためにコスト削減で正社員をリストラする。

日本企業も、2000年代からすでにドライな経営に転換しているのだ。(フルインベスト:労働の価値が下がり、ますます働く者が報われない社会になっていく理由

そうであれば、必然的に「要らない中高年」が切り捨てられる。そうならざるを得ないのである。なぜなら、組織はピラミッド型で、誰もが重要なポジションに就けるわけでもないからだ。

あぶれた中高年は急激に組織の「お荷物」になる。特に50代で役職がない人間が、最も組織の邪魔になる。

50代と言えば、体力や知力が急激に衰えていき、踏ん張りが利かなくなると同時に、知的な柔軟性も失っていく人が多い。しかし、長く仕事を続けてきたためにプライドだけは高く、会社から見ると、非常に扱いにくい。そして、仕事量とは裏腹に、給料だけは高い。

「働かない中高年」は、今やその存在が問題視されている。だからリストラ計画が持ち上がったら、中高年は必ず標的になる。景気が下を向くたびに、中高年は切り捨てられていく。

そして、いったんリストラされた中高年のほとんどは再就職が困難で、低賃金の仕事を余儀なくされていく。

中高年の再就職が困難なのは、やはり体力的にも長く勤められるかどうかも疑問で、命令しにくいということがある。新しく何かに取り組むには柔軟性にも欠けている。そして中高年のスキルは時代遅れになっていることが多い。

雇う側は、体力もあって従順で使いやすい若年層を雇った方がいいに決まっている。若くて熱意に溢れた若い新人は命令しやすく使いやすいが、自分よりも年配の新人は心情的にはとても使いにくい。

そのため、企業は人を雇うにも最初から年齢制限を付けるので、中高年の再就職はますます困難になる。

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中高年の貧困層は確実に増えていくことになる

企業は利益を確保するために、コスト削減と効率化を徹底している。そのために若年層を非正規労働者にして50代以上の中高年をリストラするという策をどんどん推し進めている。

しかし、日本は高齢化社会となり、しかも寿命は80歳まで延びている。

40代から50代で職にあぶれた人たちは、大した仕事が見つからない不安定な状態のまま数十年を生きなければならないのだから、中高年や高齢者の貧困層が増えていっても不思議ではない。

それが、今の日本で「起きている現象」なのである。

これまで貧困は若年層の問題であると捉えられてきたが、もうすでに貧困は若年層だけの問題ではない。中高年にも高齢者にも貧困化が忍び寄っている。

中高年で失業してしまうと、今後もまともな職が得られる可能性は低い。そうすると、貯金を食いつぶしながら生きていくか、もしくは生活保護になる。

しかし、生活保護は申請者全員にそう簡単に支給されるものではなく、まだ働けると見なされる中高年は真っ先に門前払いされることになる。

結局、中高年でリストラされた多くは、低賃金のプライドが打ち砕かれるような仕事をしながら生きるしかなくなるのだ。そして、低賃金の労働はどんなに頑張っても高賃金化することはない。

そんな中で、中高年は今まで無縁だと思っていた貧困の中に一気に転がり落ちていくことになる。

いくら数百万円を上乗せされても、早期退職は自分の首を絞めるものであることを知っているので、どんなに会社が傾いても今の中高年は必死で会社にしがみつく。

そこで、企業側は「追い出し部屋」のようなものを作って、強制的に辞めざるを得ないような状況に追い込むような陰湿な手段を取るようになる。

2018年10月26日には富士通が5000人規模の配置転換を行うことを発表しているのだが、これは総務や経理の人間を営業やSEに回して「仕事が合わなければ転職を支援する」というものだった。適材適所の逆をして自発的に辞めるのを進めているのだ。

陰湿だが、そういう方法で企業は「要らない人間」を捨てている。

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マスコミは貧困問題でまったく騒がなくなっている

会社がいったん従業員をリストラすると決めたら、資格をどれだけ持っていようが、今までどれだけ会社に尽くしていようが、どれだけ上司に媚びへつらっていようが、すべてが無に帰す。

どれだけ子供の教育費がかかっていようが、住宅ローンが残っていようが、そんな個人的なことも考慮されない。

会社に利益を残すことを極限まで追求した株主優先の経営(ROE経営)では、利益のために従業員を切り捨てるのが基本なのだ。時流に合っていない人材であると思われたら、単純に切り捨てられて終わりだ。

中高年でリストラに遭った後、果敢にも起業の世界に乗り込んでいく人も多い。

しかし、起業は90%が失敗すると言われる世界である。 起業の多くは貯金を取り崩したり、借金を抱えて始めることが多いので、起業に失敗した人はさらに困窮が深まっていく。

仕事を失った上に借金まで抱えることになるのだから、その悲惨さと壮絶さは低賃金で働くサラリーマンの比ではない。起業の失敗によって一家離散や自殺に追い込まれてしまう人も珍しくはない。

会社に残っても追い詰められ、リストラされたら再就職の場がなくなり、起業しても失敗の確率が高い。少子高齢化で国の活力が消え、右肩下がりの時代が続くというのは、そういうことなのである。

そのような世界なので、重要な地位に辿り着けなかった中高年の多くは、追い詰められていくのは明白である。未来は決して楽観できるものではない。

国が助けてくれるわけではない。なぜなら、日本は社会保障費が膨らむだけ膨らみきっており、中高年の面倒をみるような余裕も消えているからだ。

国自体が高齢層をどうするのかでお手上げになっているので、消費増税は今後も必ず行われていく。今、10%が議論されているが、10%で終わると思っている人はひとりもいない。もっと上がっていく。しかし、逆に生活保護の支給額や年金の支給額は下がっていく。

その結果どうなるのか。若年層も貧困に落ちる。女性も貧困に落ちる。そして、中高年も貧困に落ちていく。これが今、私たちが生きている時代のリアルな姿である。

こんな世界が常態化してしまったのだ。そのため、貧困はニュースバリューを失い、もうマスコミは貧困問題でまったく騒がなくなっている。しかし、この問題は必ず顕在化する時がくる。

では、次に顕在化するのはいつか。それは消費税が10%に引き上げられた時となる。

消費税の引き上げで、低所得層はシビアな生活がよりシビアになって貧困の度合いが増す。企業はモノが売れなくなって再びリストラする。リストラが加速すると、低所得層に落ちる人が増える。

そういった負のスパイラルが消費税10%で一気に始まる。安倍首相は2018年10月15日の臨時閣議で「2019年10月に消費税率を10%へ引き上げる」と明言しているが、本当にそうであれば2020年以後から貧困に転がり落ちる層は激増することになる。

貧困のニュースが減ったからと言って、「良くなっている」と思ってはならない。私たちの足元は揺らいでいる。(written by 鈴木傾城)

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企業は利益を確保するために、コスト削減と効率化を徹底している。そのために若年層を非正規労働者にして50代以上の中高年をリストラするという策をどんどん推し進めている。

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