備えよ。アメリカと中国の対立で「予想外」が起きやすい環境になっている

備えよ。アメリカと中国の対立で「予想外」が起きやすい環境になっている

トランプ政権が中国に対して激しい貿易戦争を仕掛けており、中国を代表するスマートフォン・ベンダーである「ファーウェイ」は、OSもチップも供給を止められて絶体絶命の危機に落ちた。

つい、1ヶ月ほど前までは、日本のITメディアも無責任にファーウェイが知的財産の強奪によって成り立っていた企業であることをまったく報じないで、顧客にファーウェイを勧めるという無責任なことをしていた。

さらに、日本の3大キャリアであるドコモ・AU・ソフトバンクも、ファーウェイの機器を何食わぬ顔で販売していた。今後、ファーウェイはOSのサポートもなく、中古市場でも価値がゼロになっていくが、キャリアもITメディアも責任を取らない。

騙された人が馬鹿を見るということになった。

もっとも、アメリカと中国がこれほど激しい対立となって、ファーウェイが一気に危機に落ちるというのは誰もが予測できたことではない。複雑化した世の中では、他にもあり得たシナリオは無数にあったからだ。

そのシナリオは、メディアも、キャリアも、顧客自身も読めなかった。「予想外」だったのだ。当然だが、これから状況がどのように流転していくのかも誰も分からない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

唯一「確かな予測」とは?

2020年は大統領選挙の年になる。ドナルド・トランプ大統領が再選するという見方が強くなってきたが、必ずトランプ大統領が再選すると決まったわけではない。予測はできるが、ほんのちょっとした些細な「何か」で状況は反転する。

そもそも、2016年にドナルド・トランプが大統領になったということ自体が、アメリカのメディア自身も想定外の出来事だった。90%はヒラリー・クリントンが次期大統領になると考えていたのだ。

また、トランプ大統領が大統領になるとアメリカは大混乱に陥って中国が次の覇権国家になるという「妄想」も真顔で語られていた。「トランプという無能が大統領になったのだから中国にとってはチャンスだ」と言っていた人もいた。

しかし、起きているのは逆のことである。トランプ大統領の首尾一貫した締め付けで、中国が追い詰められ、打つ手なしになっている。

ファーウェイに関しても、ほんの1ヶ月ほど前までは「世界最大のスマートフォン・メーカーになる」と言われていたのに、いまや「ファーウェイは国有化されて中国国内だけで生きていく企業になる」と言われるようになった。180度と言っていいほど状況が変わった。

これが現実なのだ。ほんの目先のことですらも、何が起きるのか誰も予測できていないのである。

もちろん、あらゆる材料を集めて予測をしてもいいが、それは常に軌道修正が必要な曖昧模糊としたものだ。もし、確実な予測があるとしたら、「何が起きるのか分からない」という予測こそが、唯一確かな予測になる。

何を予測しても、いずれ「その時点で起きていない出来事」によって社会情勢は大きく変わっていくのだから、重要なのは当初の予測にしがみつくことではない。他人の言うことを鵜呑みにして、それを信じることでもない。

予測するよりも、もっと重要なことがある。常に、現実を見ることだ。

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「起きたこと」の意味をきちんと把握

重要なのは「起きるかもしれない」ものを予測することではなく、まずは「起きたこと」の意味をきちんと把握することだ。

起きるまでは予測もしなかったことが突如として起きて、世の中を震撼させる。そして、その日から世の中を一変させる。当然、その巨大な予想外に、自分もまた直接的にも間接的にも巻き込まれていくことになる。

「予想外」の中には、世界を変えるほど巨大なものもある。

たとえば、2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件は、アメリカのみならず世界にとっても大きな予想外だった。2008年9月15日に起きたリーマン・ショックもそうだ。

2016年のドナルド・トランプ大統領の誕生、あるいは国民投票の結果によるイギリスのEU離脱派の勝利も、世界のほとんどの人にとっては「予想外」だった。

日本人にとっては、1995年の阪神淡路大震災や、2000年以後のバブル崩壊、あるいは2011年3月11日の東日本大震災は、多くの人を危機に追いやった大きな予想外であったと言える。

予想外は毎日無数に起きている。良い予想外もあるが、悪い予想外もある。問題を引き起こすのは、言うまでもなく「悪い予想外」の方だ。

社会全体に影響を与えるものもあれば、個人だけに影響を与えるものもある。いずれにせよ、私たちは遅かれ早かれ「起きるまで予測もしなかったトラブル」に巻き込まれて、頭を抱えてしまう日がやってくる。

予測できないのだから回避もできない。不意に巻き込まれてしまうしかない。巻き込まれたら、起きたことの意味を考えて、それが自分に何をもたらすのかを最初にきちんと把握することが重要だ。

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私たちが武器にしなければならないもの

予想外に巻き込まれてダメージを受けたら、そこから生き残りのために全力を尽くすことが重要になる。

予想外は私たちに大きな試練を与える。しかし、その時点で状況をきちんと把握した上で、自分が復活できる最善の道をしっかりと見定めて、とにもかくにも「したたかに生き残る」ということが重要になる。

それは、基本的に「いつの時点でも冷静で合理的な判断をする」ということでしか成し遂げられない。

起きた予想外の全体像を把握し、予想外から逃れられるために自分が持っている手持ちのコマを集め、予想外のトラブルから脱するためのシナリオを組み立てて、それを実行してフィードバックを得る。

なぜ、こうしたことを今の私たちが再確認しなければならないのかというと、アメリカの動きがかなり強引で性急なものになっており、世界中で軋轢を引き起こし、予想外が起きやすい環境になっているからだ。

今後、私たちは何らかの「不測の事態」に巻き込まれる。

私たちは誰ひとりとして、それを回避することができない。予想外が何なのかはまったく分からないからである。場合によっては、それが私たちの人生を激変させてしまうほどの大きなトラブルになるかもしれない。

世の中はグローバル化し、ネットワーク化しているので、不測の事態もあっと言う間に世界に波及し、いったん起きた予想外は次の予想外をドミノ倒しのように引き起こす。

世の中は、すでにひとりの人間がすべてを把握できないほどに複雑化している。間違えても、複雑化した世の中が予測できるとは絶対に思ってはいけない。私たちが武器にしなければならないのは予測ではなく、現実対応能力の方だ。

あなたの現実対応能力は、万全だろうか?(written by 鈴木傾城)

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予想外に備えなければならない。なぜ、それを今の私たちが再確認しなければならないのかというと、アメリカの動きがかなり強引で性急なものになっており、世界中で軋轢を引き起こし、予想外が起きやすい環境になっているからだ。

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