「超」高度情報化社会の時代が人々をより混乱させて社会を分断させる理由とは?

「超」高度情報化社会の時代が人々をより混乱させて社会を分断させる理由とは?

コロナの情報、ワクチンの情報を見ても分かる通り、あまりの大量情報によって安全性や健康については何が正しいのか理解できなくなって混乱しているのが今の普通の人の状態ではないだろうか。誰を信じていいのか分からない。何が正しいのかも分からない。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

誰も答えが分からないまま翻弄される時代となっている

コロナ禍によって時代が激変し、多くの人が「コロナやワクチンに関してはどのように接したら正しいのか」を求めて情報を漁ったのだが、その結果として生まれたのが「分断」だった。

「コロナはただの風邪」と主張する情報、「コロナは危険だ」と主張する情報、「ワクチンは打つべき」という情報、「ワクチンは打ってはいけない」という情報……。あらゆる相反する情報が渦巻いて、人々は右往左往しながら「分断」された。

インターネット時代になって大量の情報がありあまるほど手に入る時代になったが、情報は錯綜して何が正しいのか何が間違っているのか、誰も答えが分からないまま翻弄される時代となっているのである。

これは金融情報に関しても言える。金融の情報もまた大量に流通し、マクロからミクロまでの情報や数値が手に入る。

かつては、「資産運用に関して、部外者は情報にアクセスできないから投資に結果が出せない」と言われていた。しかし、今や「情報」はインターネットでいくらでも手に入れられる驚異の時代に入っている。

企業の財務諸表も企業自身が情報提供しているので、過去に遡ってそれを調査・分析することもできる。

では、それで誰もが正しい情報を手にして効果的に資産を増やしているのかと言えばまったくそうではない。実のところ、大量の情報を集めたところで、投資の結果に有利になるとは限らないことが分かってきた。

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人はそれぞれ考え方・感じ方・捉え方・分析の視点が違う

なぜ、大量の情報を集めても有利にならない現象が起きているのかというと、言うまでもなく、インターネットで拡散されている情報が玉石混交で時には意図的なフェイクも混じるからだ。

企業の財務諸表も、代表のコメントも、証券会社の分析も、他の人たちの意見も、インターネットですべて手に入る。その気になれば、調査目的に関する企業の将来展望や株価動向に関する記事も読み切れないほど集めることができる。

物事に対する見方が多極的に知ることができるという意味では、確かに大量の情報収集は重要かもしれない。しかし、同じ数字を見ても、同じニュースを見ても、人はそれぞれ考え方・感じ方・捉え方・分析の視点が違う。

そのため、企業分析をしても、それぞれ微妙に細部が異なる分析が生まれる。大量の違う分析がばらまかれるわけだから、結局のところ、投資家は情報を集めれば集めるほど身動きができなくなる。

「真実はひとつしかない」というのは幻想だった。インターネットではあまりにも真実がありすぎて、どれが真実なのか分からなくなってしまうのである。さらに、そこに意図的なフェイクや扇動も入り込むのだから悪質だ。

結局、大量の情報が判断と決断を鈍らせる。大量情報に接することができるようになればなるほど、逆に迷いが生じ、決断が鈍り、いったん下した決断も貫徹できなくなっていく現象が生まれる。

大量の情報を手に入れれば何でも分かるのではない。むしろ逆に、何もかも分からなくなっていくという理由がここにある。

世の中が高度情報化社会になって、人々はインターネットがなかった時代よりも知的になっているのかと言えば、ほとんどの人は「ノー」と答えるはずだ。

また、たくさんの情報を手に入れられるようになって、物事はシンプルで分かりやすくなったのかと言われれば、これもまたほとんどの人は「ノー」と答えるはずだ。

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より次元の違う「超」高度情報化社会になっていく流れに

コロナの情報、ワクチンの情報を見ても分かる通り、あまりの大量情報によって安全性や健康については何が正しいのか理解できなくなって混乱しているのが今の普通の人の状態ではないだろうか。

誰を信じていいのか分からない。何が正しいのかも分からない。情報を集めたら、それだけ人間の処理できる限界を超えて情報が押し寄せて、脳が逆に思考停止してしまうのである。

中国共産党も世界を混乱させるために大量のフェイク情報を垂れ流しているのだが、そんな中で何かを「正しく決断しろ」と言われても、自分がよく知っていること以外は正しい決断が難しい。

ステイホームを余儀なくされた今、時代はますますインターネットに依存するようになっていく。

今も高度情報化社会で情報が満ち溢れているように私たちは思うが、インターネット第一主義、DX(デジタル・トランスフォーメーション)等の動きが加速していくと、今後は「5G」の普及も相まって、より次元の違う「超」高度情報化社会になっていく。

科学も、医学も、社会のありかたも、経済のありかたも、すべてが劇的に変わることになる。

いつでも膨大な情報にアクセスできることになるのだが、その情報量はひとりの人間がすべての情報を当たることが不可能な量になる。つまり、今後の高度情報化社会はあまりにも「高度化」し過ぎて、もはや限界を超えてしまうのである。

つまり、「超」高度情報化したがゆえに、私たちは世の中の全体を知ることが、事実上「不可能」になってしまうのだ。

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異論もフェイクも誤謬も錯乱もそれを補強する根拠が見つかる

情報が莫大になりすぎる。また情報自体も複雑化する。そのため、仮に何らかの情報が与えられても、それがどんな意味があるのか、理解すらできないということも起こり得る。

情報化時代になると、世の中の進歩は加速していくのだが、結局それが社会を信じられないほど複雑にしてしまい、やがて誰もが何が起きているのか理解できなくなってしまう。

重要なのは、今の世の中はすでに「そうなってしまっている」ということである。これからさらに複雑化するのだが、はっきり言って世の中はもう充分に複雑化しているのである。

高度情報化になってたくさんの情報を手に入れられるようになっても一向に世の中が「分からない」のは、あふれ過ぎる情報が複雑さを生み出すからである。あまりにも大量の情報が同時並行で目の前を横切って的確な判断ができなくなる。

その複雑さが人間を惑わす。

結局のところ、「超」高度情報化社会になったとしても、的確な判断などできはしないのである。

もし、大量の情報があってそこで何かするのであれば、大量の情報をすべて手に入れて、それを並べて判断したり、踊ったりすることではない。

いくら大量の情報があったとしても、そこから導き出せるのは「大筋を捉えて大雑把であっても方向性をつかむ」くらいが精一杯だと達観しておいた方がいい。大量の情報から「唯一の正解」を導き出せるなどと幻想を持たない方がいい。

むしろ、大量の情報が爆発的に垂れ流しになる時代であればあるほど、「必要最小限の重要な情報で的確な判断をする」という点になる。

近い将来にやってくる「超」高度情報化社会の時代、すなわち「超」情報過多の時代に、私たちは的確に判断できる時代がくるだろうか。私は否定的に考えている。

情報が過多になればなるほど、異論もフェイクも誤謬も錯乱もそれを補強する根拠が見つかるようになる。その根拠自体が誤りだとしても、それは人々を惑わし、社会を混乱させる。

「超」高度情報化社会の時代は、より深い分断と錯乱を引き起こすだろう。

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