Adobe Systems。世の中のクリエイティブ分野はAdobeの掌で動いているのだ

Adobe Systems。世の中のクリエイティブ分野はAdobeの掌で動いているのだ

Adobe Systemsは投資対象としても有望であるとも言えるし、長期投資の対象にもなり得るものである。今回の「Adobe Creative Cloud Web」を見ても、Adobeが次の時代にきちんと布石を打っているのを見て、この企業が今後もしたたかに生き残るというのは確信に近い思いがある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

普通の人にはあまり意識されていない最重要企業Adobe

今はクラウドの時代である。AmazonやMicrosoftがクラウドで覇を争っているのだが、それとはまったく違うアプローチでクラウドを攻めて来ているのが、「アドビ・システムズ(Adobe Systems)」である。

2021年10月26日、Adobeは「Adobe Creative Cloud Web」を発表し、フォトショップ(Photoshop)やイラストレーター(Illustrator)と言ったソフトウェアをWebでも使えるようにすると発表し、ベータ版やパブリック版を提供している。

クラウドの時代にもAdobeは躍進し続けることが確認された。

普通の人はAppleやFacebookやGoogleやAmazonがいかに驚異なのかを知っている。それは、これらの企業の製品やサービスを日常的に使っているからだ。また、Microsoftも知らない人はいないだろう。

しかし、クリエイターにはなくてはならないソフトウェア製品を作り、長年に渡って市場を独占しているのに、Adobeという企業は普通の人にはあまり意識されていない。当然、クリエイター的能力が「ゼロ」の政治家連中もほとんど知らない。

プロのクリエイターでAdobe製品を知らない人はいない。知らないどころか、知っていて当然の企業である。さらに、Adobe製品を手足のように使いこなせるかどうかで、他のクリエイターと大きな差となって現れる。

写真を扱う現場、写真を加工する現場、カタログ制作、デザインや印刷現場で、AdobeのPhotoshopを使えないと言えば、それだけで大きなハンディとなる。

Photoshopは業界の標準(デファクトスタンダード)であり、言ってみれば唯一無二の存在でもある。クラウドの時代でも重要な地位を示し続けるだろう。

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Adobeに代わってプロの現場で使われるようにならない

Adobe Systemsは「Photoshop」と「Illustrator」という二大ソフトウェアで、クリエイティブの現場を完全に独占している企業である。Photoshopは写真加工の現場で、Illustratorはデザインの現場で使われる「専門家御用達ソフトウェア」だ。

専門家がやりたいことをとことん可能にする潜在能力を秘めているので、これらのソフトウェアは素人が簡単に使えるものではない。

日常的にPhotoshopやIllustratorを使いこなしているプロでさえも、これらのソフトウェアの潜在能力があまりにも深すぎて、すべてを理解していない。つまり、Adobeのソフトウェアは決して取っ付きやすい製品でもないし、気軽に使える製品でもない。価格もそれなりに高い。

そのため「Adobeの製品群よりも使いやすいソフトウェア」「安いソフトウェア」が山のように現れては、Adobeの牙城を崩そうと、勝負してきた。しかし、こうしたライバル企業はことごとく討ち死にしている。

一定の認知度は得られても、Adobeに代わってプロの現場で使われるようにならないのである。

今でも、フォトショップやイラストレーターの「類似品」は多く出ている。そして、オープンソースのソフトウェアでも、「Photoshop」を模した製品が出ていたりする。

たとえば、GIMP(ギンプ)などは常にAdobeのライバルとして語られている。GIMPは、無料でそれなりのことができる。高機能である。

しかし、それでもPhotoshopにできてGIMPにできないことがあったり、デザイン現場ではPhotoshopだけではなく他のAdobe製品との協調もあったりするので、フォトショップを使っているプロがGIMPにダウングレードすることは基本的にない。

もはや無料の製品があったとしても、フォトショップの牙城は崩れない。そうしたソフトウェアを提供して、業界を独占支配しているのが「Adobeソフトウェア」なのである。

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業界で圧倒的なシェアを築き上げていくAdobeのソフトウェア

Adobeは印刷業界も独占支配している。印刷業界ではもはや版下はすべてDTP(デスクトップ・パブリッシング)としてデジタルに置き換わっている。書籍や雑誌やチラシ等のレイアウト(組版)は、すべてコンピュータによって行われている。

そこで使われるソフトウェアは何か。業界を独占しているDTPソフトは、「Adobe InDesign(Adobe・インデザイン)」である。

かつては「クオークエクスプレス」という強大なライバルもいたのだが、Adobeはすでに「インデザイン」で圧倒的なシェアを築き上げている。

Adobeは顧客が望む機能を貪欲に吸収していき、それぞれの国のそれぞれの印刷に関する慣習をも取り込み、フォントも拡充し、フォトショップやイラストレーターとの連携を押し進め、もはやAdobe以外のソフトウェアが使えない「高み」にまで世界を作り上げた。

そもそも、印刷業界で必須のフォーマットである「PDF」もAdobeが開発したフォーマットである。業界は、もうAdobe支配から逃れられないのである。

昨今は、書籍や雑誌を制作する印刷業界全体がウェブページに飲み込まれて凋落しており、紙のレイアウトよりも、ウェブページのレイアウトのレイアウトの方が重要になってきている。

しかし、ここでもAdobeは抜かりがない。ウェブのレイアウトを制作するために、Adobeは「Dreamweaver」や「XD」などを提供しており、ここでも大きな影響力を行使している。

そして、今後は本格的に「5G」の時代に入って映像編集技術がすべての企業で最重要課題になっていくのだが、ここでもAdobeは重要な製品で業界に食い込んでいる。それが「Adobe premiere(Adobe・プレミア)」である。

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もはや世の中のクリエイティブ分野はAdobeの掌で動いている

今、映像業界のプロの現場でよく使われているソフトウェアはいくつかある。

「Adobe premiere(Adobe・プレミア)」以外に「DaVinci Resolve(ダヴィンチ・リゾルブ)」や「Apple Final Cut Pro(アップル・ファイナルカット・プロ」などが使われていて、ハリウッド映画などで圧倒的なシェアを持っているのが「ダヴィンチ・リゾルブ」である。

Appleはハードウェア事業に注力しており「ファイナルカット・プロ(Final Cut Pro)」で業界のシェアを独占しようという野心は見せていないのだが、Adobeは違う。

かつて、印刷業界で独占を欲しいままにしていた「クオークエクスプレス(QuarkXPress)」を追い抜いたように、映像業界を「Adobe Premiere(プレミア)」や「Adobe After Effects(アフターエフェクト)」で追い上げて独占しようとしている。

Adobeは映像分野でも大きな成功を得るだろうか。私は、Adobeはいずれ「Adobe Premiere」「Adobe After Effects」や、その他のソフトウェア製品群で粘り強く責め続けて業界を支配するところにまで到達するのではないかと思っている。

このように考えると、Adobeが掌握している「プロ市場」は今後10年、20年に渡ってAdobe製品がずっと使われ続けるのは必至であり、その間ずっとAdobeは安定的な収益を手にするというのが読める。

Adobeシステムズは投資対象としても有望であるとも言えるし、長期投資の対象にもなり得るものである。

今回の「Adobe Creative Cloud Web」を見ても、Adobeが次の時代にきちんと布石を打っているのを見て、この企業が今後もしたたかに生き残るというのは確信に近い思いがある。

ちなみに、SNSが廃れていこうとしている中で、Facebookはメタバース(metaverse)の世界に注力すると宣言している。メタバースとは3Dで構築された仮想空間を指すのだが、このメタバースの世界を構築するにも、Adobeのソフトウェアは最重要ツールとなる。

もはや世の中のクリエイティブ分野はAdobeの掌で動いている。私はAdobeに心酔している。

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