中国をグローバル経済から徹底的に村八分する。もう中国の衰退は避けられない?

中国をグローバル経済から徹底的に村八分する。もう中国の衰退は避けられない?

バイデン大統領自身は中国に融和的な姿勢を見せている。しかし、米国政府の動きを見ると、半導体の輸出規制を強化したり、米国上場の中国企業を上場廃止に追い込んで排除したり、むしろ中国排除を強化している。米国は最終的に中国を排除、弱体化させるのではないか。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。著書は『ボトム・オブ・ジャパン』など多数。政治・経済分野を取りあげたブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」を運営、2019、2020、2022年、マネーボイス賞1位。 連絡先 : bllackz@gmail.com

アメリカに対する中国の切り離しは刻々と行われている

アメリカのバイデン大統領はゴリゴリのリベラルなので、しきりに中国との融和を図ろうとしているように見える。

しかし大きな流れで見ると、今後、欧米先進国は中国を分断させ、孤立させ、最終的には中国を元の極貧国家にして封じ込めるだろう。

なぜなら、中国は欧米の価値観とは相入れず、欧米から知的財産のあらゆるものを盗み取り、欧米の持つ利権を横取りし、欧米から覇権をも奪い取ろうと画策する「危険な存在」だからだ。

中国は日本のように「欧米の従順な属国」と成り得ない。さらに、人口14億人の市場も欧米に自由にアクセスさせず、欧米を儲けさせない。中国は凄まじいまでの利己主義国家であり、欧米の民主主義では測れないところがある。

2010年頃はオバマ大統領も中国に肩入れしていたのだが、中国があまりにも不誠実であったために、2015年あたりから不信感を隠さないようになっていったのは記憶に新しい。

ヒラリー・クリントンに至っては、オバマ大統領よりももっと前に中国に対する激しい嫌悪をハーバード大学での講演で語っていた。

中国は「拝金主義と堕落が空前絶後だ」「環境破壊、略奪、浪費に明け暮れている」と述べて、「20年後は中国は世界で最も貧しい国になる」と述べていたのだ。(知財を盗んで肥大化する中国は「20年後は世界で最も貧しい国になる」のか?=鈴木傾城

トランプ大統領が登場してからは一気に中国とのデカップリング(切り離し)を実行してきたが、アメリカに対する中国の切り離しは今も半導体などを中心に刻々と行われている。

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中国を「世界で最も貧しい国にする」という方向性

バイデン大統領自身は中国に融和的な姿勢を見せている。しかし、この動きに騙されてはならない。

アメリカ政府の動きを見ると、中国向けの半導体の輸出規制を強化したり、アメリカに上場している中国企業を上場廃止に追い込んで排除したり、TikTokのような中国企業の人気アプリを潰そうとしたりしており、むしろ中国排除を強化しているからだ。

バイデン大統領自身も、2022年10月には「対中半導体輸出規制強化策」を発表して中国をグローバル経済から村八分した。これによって、先端チップ、スパコン技術を中国に移転するあらゆる行動が法律違反となる。

そしてアメリカの属国・日本もまた2023年3月31日に「先端半導体の製造装置など23品目を輸出管理の規制対象に加える」と発表した。

中国は5月26日に、「日本側は誤りを正し、世界のサプライチェーンの安定を維持するよう求める」「国際貿易ルールに違反し、産業発展の基礎を著しく破壊する」と強い不満を表明しているのだが、日本はアメリカの属国なので中国が何を言っても粛々と規制を続けるだろう。

バイデン大統領は、先日のG7では「中国とは雪解けは近い」「中国とのデカップリング(分断)を目指しているわけではない」「対中関係におけるリスク低減や多様化を望んでいる」と言った。

中国を追い込む政策は変わっていないのに、口ではトーンダウンしている。これは、あまりにも早く中国を追い込みすぎたら欧米の経済がめちゃくちゃになるので、やや手綱を緩めて状況をコントロールしようとしている政治駆け引きのように見える。

あるいは、習近平と会談をして政治的な実績を作りたいので、そのために「追い込みを緩めてやるから会談しろ」と習近平にアピールしているようにも見える。

短期的には中国に対する締め付けが緩められる可能性はあっても、長期的には中国を「世界で最も貧しい国にする」という方向性は変わっていないのは「対中半導体輸出規制強化策」を見ても分かる。これは中国の技術を劣化させて、中国を貧困国に落とす第一歩である。

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半導体は産業の米。現代文明に絶対に必要なもの

今、コンピュータから家電から車から戦闘機まで、ありとあらゆる電化製品が「半導体」で動いている。そういう意味で「半導体は産業の米」と表現させる。要するに「現代文明には絶対に必要なもの」である。

半導体がなければモノは作れない。そして、半導体がなければ国家も産業も成長できない。だから、中国に対して半導体を輸出することが規制されて、それが徹底強化させるというのは中国にとっては衝撃的な出来事である。

もちろん、中国も半導体を作ることができる。しかし、半導体は超絶的に進化を繰り返す部品であり、成長するためには徹底的な最新技術の研鑽が必要となってくる。半導体を製造するための装置からして必要不可欠である。

それが完全に規制されるとしたら、中国は半導体を製造する前に、半導体を製造する装置からして製造しなければならない。あらゆるものを自前で用意しなければならないのだが、すべてをイチから作り出すというのは不可能に近い。

半導体で使われる重要な素材は最低でも13種類あり、装置は少なくとも35の装置があり、それぞれが精密でなければ不良品の山ができるだけだ。それぞれの装置に知的財産があり、長年にわたって蓄積されたノウハウがある。これをすべて中国だけで揃えるというのは無理である。

さらに、中国は作り出した中国版の半導体を世界で売りさばくこともできない。欧米が締め出していることもあるのだが、民間も「中国製は何が仕組まれているのか分からないので製品に組み込めない」という事情がある。

下手に中国製を組み込むと情報漏洩する可能性が高まる。いったん、情報が中国に漏れていると分かったら、企業イメージや信用は地に墜ちる。しかも、製品の質は担保されていない。

となれば、わざわざ中国製の得体の知れない半導体を使う企業は限られるわけで、中国の半導体はガラパゴス化するしかない。そして、中国製半導体は進化しないか、進化してもいびつな進化でますます世界の標準(スタンダード)とは外れる。

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欧米の目論見通りに物事が進むわけではない

この「産業の米」である半導体が規制されたということは、中国は産業衰退のカウントダウンに入ったということだ。欧米の「中国排除」の姿勢がこのまま変わらないのであれば、間違いなく中国の経済や産業や国家は衰退に入っていく。中国が盛り返すことはない。

私自身は5年以上も前から「中国の時代は完全に終わった」と述べているのだが、2020年は中国の衰退が加速する年代になっていくのだろうと見ている。

2020年からの3年間で中国はコロナ禍で経済がズタズタになってしまって今もその余波を拭いきれていない。

個人消費や工業生産の伸びは、4月に予想を下回っているし、中国の国家統計局自身も「国際環境は依然として複雑で厳しく、内需はなお不十分」と述べている。若年失業率も過去最悪の水準に急上昇している。

ただ、アメリカの経済界にとっては中国の14億人の市場は相変わらず魅力的なので、中国企業が衰退していくのであれば、自分たちがそれに付け入って高機能製品・サービスで中国市場を奪い取れるチャンスがあると見て、むしろ中国に潜り込んでいくグローバル企業もあるはずだ。

そういう動きもあるので、アメリカは中国を切り捨てたいのか仲直りしたいのか、そのあたりがよく分からずに混沌とした動きに見えるかもしれない。しかし、こういうことだと思う。

1. 中国の国家・企業をデカップリングで弱体化させる。
2. 弱体化したところで中国市場を欧米企業が乗っ取る。
3. 最後に中国そのものを欧米の属国にする。

もちろん、中国もそれが分かっているので、やられっぱなしではなく徹底抗戦する。そのため、欧米の目論見通りに物事が進むわけではない。欧米が中国を乗っ取り、属国化する過程でいろんなことが起こり得るだろう。

たとえば、切羽詰まった中国が台湾に侵略していくという台湾有事さえ起こる確率はゼロではない。日本がすべきことは、日本政府も日本企業も日本人個人も、さっさと中国から関係を切っておくということだろう。

中国の時代なんか来ない。中国はリスクある国だ。中国が弱体化してヒラリー・クリントンがかつて言ったように「世界で最も貧しい国」になった頃に、毒にも薬にもならなくなった中国と関わるくらいでちょうどいいのではないか。私はそう思っている。

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