2020年。社会の底辺で渦巻いている巨大な不満が爆発するのは時間の問題だ

2020年。社会の底辺で渦巻いている巨大な不満が爆発するのは時間の問題だ

2016年のアメリカ大統領選挙で若者の熱狂的な支持を受けたのはドナルド・トランプでもヒラリー・クリントンでもなく、バーニー・サンダースだった。バーニー・サンダースは「民主社会主義者」だと自分を定義していたのだが、アメリカで社会主義の思想が支持されていることに世界は大きな驚きを持った。バーニー・サンダースは大統領選挙に敗れたが、以後のアメリカは新しい形の社会主義を支持する動きがじわじわと広がっている。アレクサンドリア・オカシオ=コルテスのような女性の民主社会主義者も台頭しており、2020年の大統領選挙もまた「社会主義」が大きな旋風を巻き起こす可能性がある。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

その差はもはや埋めることすらもできない壁になった

2016年のアメリカ大統領選挙で若者の熱狂的な支持を受けたのはドナルド・トランプでもヒラリー・クリントンでもなく、バーニー・サンダースだった。バーニー・サンダースは「民主社会主義者」だと自分を定義していたのだが、アメリカで社会主義の思想が支持されていることに世界は大きな驚きを持った。

バーニー・サンダースは大統領選挙に敗れたが、以後のアメリカは新しい形の社会主義を支持する動きがじわじわと広がっている。

アレクサンドリア・オカシオ=コルテスのような女性の民主社会主義者も台頭しており、2020年の大統領選挙もまた「社会主義」が大きな旋風を巻き起こす可能性がある。

アメリカで広がっていく社会主義は、もはや今の資本主義は1%の金持ちだけが得して99%が損する社会へと変質し、「平等」を完全に喪失させた社会であるという認識が生まれているからに他ならない。

スタートラインが最初から極度なまでに違っており、もはや99%の人間は這い上がることすらもできない。だから、彼らは資本主義よりも社会主義に立ち戻って1%の金持ちを打ち砕こうと考えているのである。

現代は、自由であることを追求した社会であると言える。ある人は享楽を追求し、ある人はカネを追求する。享楽を追求している人と、カネを追求している人では、長い目で見るとその資産には大きな差ができる。

一般論で言うと、カネを追求している人は結果的に資産が貯まる。逆に享楽を追求している人は結果的に資産が貯まらない。最終的に所有する財産を見ると、ふたりは平等にならないのが普通だ。

スタートは同じだったとしても、結果は不平等になる。求めているものが違っているのだから、ふたりの人生は平等になるというのは、どう考えてもあり得ない。

そして、この差は子供たちにも引き継がれる。金持ちの子供たちは有利な環境の中で有利な教育と有利な人脈を継承して有利な社会的ポジションに就いて再び財産を増大させる。そして、その子供もまた財産を継承してさらにそれを増大させる。

その結果、現在は計り知れない「格差」が生じるようになり、その差はもはや埋めることすらもできない壁になっていった。

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「いくら何でも格差がひどすぎる」と人々は感じ始めた

社会的野心を持ち、事業に関心を持ち、高給と富を求めて誰よりも働く人が世の中にいる。逆にそんなものには一切の関心を持たず、身近な人間関係や趣味に囲まれてのんびりと暮らすのが好きな人がいる。

両者の資産が平等であるはずがないのは誰が考えても分かる。資産から見るとその結果は平等になり得ない。しかし、「人生の目的や生き方が違っているのだから、他人の財産をとやかく言うのは大間違いだ」というのが資本主義だった。

いろんな生き方があって、それを許容するのが自由主義であり、資本主義である。私たちが生きている社会はそのような社会である。

この仕組みは、結果の平等にこだわった共産主義よりもうまく機能したので、今や全世界がこの資本主義に覆い尽くされようとしている。アメリカ人は他の国の人間たちよりも、ずっと強くこのスタイルを肯定してきた国民だったはずだ。

しかし、今はもうそうではない。

気が付くと、常に金持ちが税制でも教育でも賃金でも優遇される社会になって、一部の人間が莫大な富を独占するようになっていた。

通常は政府が富の再配分を相続税や累進課税で行うのだが、金持ちたちはロビー活動で自分たちが優遇される税制にしてしまったので富の再配分はうまくいかなくなってしまった。

財産というのは、親から子へ、子から孫へと継承される。信じがたいまでの財産が1%の人間が独占するようになって、「いくら何でも格差がひどすぎる」と人々は感じ始めている。

その社会的現状が、よりによって資本主義の権化であるアメリカに、再び社会主義を台頭させているのである。

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そのひずみがどんどん大きなものになってしまっている

共産主義の総本山だったソビエト社会主義共和国連邦は1991年に死んだ。その次に共産主義大国だった中国もこのままではアジアの眠れる豚となってしまうと考え、ソ連崩壊の翌年に共産主義を捨てて資本主義に移行した。

結果の平等にこだわった共産主義、あるいは結果が平等になるように自由に規制をかける社会主義よりも、自由主義や資本主義の方が社会システムとしては優れているということは、1991年にすでに決着を見ているのである。

社会主義も共産主義も、1991年に死んだのだ。

しかし、資本主義も完璧には程遠い。資本主義の世界が先鋭化していくと、企業が利益拡大のために労働者を最低賃金で働かせたり、コスト削減でリストラを恒常化するようになる。

その結果、あまりカネを追求しないで自由に生きていた人が貧困に転がり落ちるようになり、自由どころではなくなった。資本主義はあまりにも弱肉強食化し、それ自体が不平等を生み出すシステムになった。

そして、そのひずみがどんどん大きなものになってしまっている。

弱肉強食の資本主義は超格差社会を誕生させたのだ。富める者はますます富み、貧しいものはますます貧しくなる社会が出現した。そして、財産が子供たちに継承されて格差はもはや埋めがたいものとなった。

金持ちの子供たちは生まれながらにして巨大な資本に囲まれて生まれ育ち、その資本を十二分に活用してさらに財産を殖やすことができる。

一方で普通の親の子供は、何も継承されないで世の中に放り出される。

仮に、10億円を継承した金持ちの子供がその10億円を3%の株式で運用していたとすると、彼は何もしないで年間3000万円の配当収入を得る。

仮に彼がその3000万円をそっくり配当再投資に回すと、彼は何もしないで3年後には9000万円以上もの資産を増やせる。こうした財産の継承が数代続くと、それだけで金持ちの一族の子供はより豊かになるのである。

年間3000万円の収入を得られる人というのは、相当なエリートでもない限り不可能である。この時点でもう社会の不平等は極まっている。

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社会の仕組みを少し変えたくらいでは解消できない

現在の世界有数の富裕層の資産は10億円や20億円のレベルではない。上を見れば10兆円のレベルである。この1%の富裕層は黙っていても資産はさらに巨大化していく。

しかし、何も持たない層は、効率化を極限まで推し進める企業によって賃金が抑制されるか削減される傾向にあり、どんどんワーキングプア化している。

もはや、極限的な不平等は社会の仕組みを少し変えたくらいでは解消できないレベルにまで達した。格差は「永久」に解消しないし、不平等は今よりもさらに凄まじい不平等になる。

何をどうやっても絶対に逆転できないような「超絶的な格差社会」がすでに生まれてしまっており、それを自由主義と資本主義が後押ししているような状況になってしまっているのである。

だから、「今の社会を破壊したい」という爆発的なエネルギーが、社会の底辺からマグマのように噴火しているのだ。

2009年には「巨大銀行で我々の税金を使うな」というデモが起き、2011年には「ウォール街を占拠せよ(オキュパイ・ウォール・ストリート)」運動が盛り上がり、そして2016年にはバーニー・サンダースが台頭し、現状打破のためにドナルド・トランプが大統領が選ばれるという番狂わせが起きた。

2020年も、今の資本主義に対する激しい不満が吹き荒れる年になる。

これらは競争することすらも不可能になった巨大な富裕層たちに対する絶望的な怒りが生み出している。同一の怒りが、それぞれ違う現象として起きているのだが、根はすべて「解消できない不平等への怒り」なのである。

こうした世の中の一連の動きを見ても、現在の資本主義システムはすでに人々の不満を掻き立てている問題のあるシステムに変質していることが分かるはずだ。

社会の底辺で渦巻いている巨大な不満が爆発するのは時間の問題だ。日本でも格差問題が先鋭化しつつあるが、2020年はこうした問題が社会に大きな波乱を起こすことになるだろう。

『アメリカ人が語る 日本人に隠しておけないアメリカの“崩壊”(マックス・フォン・シュラー)』

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