株式会社レオパレス21は東証1部上場企業であり、大手不動産会社のひとつである。
敷金無料型賃貸マンションで大きく飛躍して、2012年には韓国のウリ管理と合併会社「ウリレオPMC」という会社を作って国外展開したりしていた。
この企業は2016年秋以降にサブリース契約で相次いで裁判を起こされている。サブリース契約というのは「転貸を目的とした一括借上」のことを言う。
レオパレス21が貸主から賃借した建物を、実際の入居者に転貸して家賃を徴収し、リース料を貸主に支払うという流れになっている。
サブリースを行う業者は、貸主にアパートを建てさせて金を儲け、家賃から管理費という名目で中抜きし、リフォームすると言ってまた貸主に金を出させてそれを中抜きし、空室が出たら家賃を減額させて貸主にダメージを与える。
サブリース業者は、ほとんど人がいないような地方の田んぼのど真ん中でも貸主をけしかけてアパートを建てさせる。だから、人口が減っているのにアパートが次々と建つという状況になっているのである。
レオパレス21もこのサブリース業をしていたのだが、貸主と多くのトラブルを起こして裁判だらけになっていた。(鈴木傾城)
金儲けのためだけに建てられてた安普請アパート群
問題はそれだけではなかった。2018年5月29日、レオパレス21は「計206棟のアパートで施工不良を確認した。来年6月までに全3万7853棟を調査し、不備のある物件を改修する」と発表している。
レオパレス21はこれが「意図的な手抜き工事ではない」としているのだが、実はレオパレス21のアパートは隣の声が筒抜けするほど安普請であるというのは誰でも知っていた。インターネットではこのような「伝説」も出回っていたからだ。
「エアコンが勝手に切れる」「チャイムが鳴らされたと思って玄関を開けたら、四軒隣の部屋だった」「チャイムが聞こえ今度こそはと思ったけど、やっぱり隣の部屋だった」「チャイムを鳴らしたら住人全員が出てきた」……。
このレオパレス21の安普請のアパートの問題は、グーグルで「レオパレス21・伝説」で調べたら大量に似たようなバージョンが出てくる。
壁が薄すぎるという悪評は凄まじく多いのだが、実際にはアパートの部屋の境界となる壁が天井に達していなかった。つまり、天井を開ければ、天井越しに隣の部屋でもどこの部屋でも移動できる状態だったのである。
防犯上の問題もあれば、防火上の問題もある。専門家はこれを指して「お金儲けのためのアパートで、人間が住むためのアパートではない」と評した。
金儲けのためだけに建てられてた安普請のアパート群。これが日本全国を覆い尽くしていたのである。
もっとも、安普請のアパートは別にレオパレス21だけに限った話ではないという不動産業者も多い。2015年には三井不動産グループも住友不動産も手抜きしていたことで大問題になったこともある。
今やどこの不動産業者も施工業者も手抜きだらけで、建築検査のプロである船津欣弘氏は現状を憂慮して『新築マンションは9割が欠陥』という書籍も出している。
これから人口がどんどん減少して空室率が上がっていくのは確実なのだが、安普請のアパートや欠陥マンションが増え続けるのだから日本の国土は荒廃する。
建て替えもできないような老朽化マンション
日本は地震大国であり災害大国でもある。建築物は他の国々からみると耐震に気を配られており、実を言うと東南アジアのような国から見ると天国のように素晴らしい。私は日本の建物を基本的には信頼している。
だから、日本に欠陥建物が増え続けていく現状にはとても残念な気持ちでいる。そして、自分が住む建物を長期ローンで買おうという気にもならない。
どんな素晴らしい建物であっても長期ローンが終わる30年後あたりには老朽化が激しくなり、大規模なメンテナンスが必要になるのは必至だからだ。欠陥建物であれば、30年も持つかどうかも分からない。
老朽化した建物は実際、日本の大きな問題となりつつある。
それがマンションのような集合住宅だと、それぞれの所有者全員が足並みをそろえて費用を出さなければならない。
しかし、建替え費用が捻出できない人もいれば、建て替えしなくてもいいという意見の人もいる。意見も費用も、必要なときにまとまらない。
さらに建て替えると、容積率が減って狭くなってしまう建物もあったりする。
そのため、ローンが終わったら建て替えもできないような老朽化マンションだけが残るというケースが続出している。このようなマンションのことを「限界マンション」と呼んだりすることもある。
かつて、日本に不動産神話があった頃は、そうなる前に売却して含み益を得ることもできたかもしれない。しかし、すでに日本は世界有数の少子高齢化の社会に入っており、地方から急激に人口が減少している。
今後、不動産価格が上がるとしたら、それは都会の一部の地域であり、全体を見ると地価は下がる一方である。
都会であっても新築マンションが次々と供給されているわけで、そんな中で老朽化した30年前のマンションが高く売れるわけがない。
資産だと思ったものが資産ではなくなってしまうのだ。
「不動産は資産」という考え方に賭けるのは冒険に
不動産を資産として手に入れるのであれば、細心の上にも細心の注意が必要になってくる。
素人は、自分が買うマンションがきちんとした作りのマンションなのか、それとも内部に手抜きが隠されているマンションなのかは判断できない。
そのため素人の多くはブランドで選ぶのだが、超大手である三井不動産グループの販売したマンションであっても手抜き欠陥マンションになるのだから意味がない。
手抜き工事はゼロにはならず、手抜き工事の発覚は後を絶たないのが実情だ。ブランドさえも役に立たない。「見る目」がなければ、とんでもないマンションをつかまされるのである。
不動産が資産になるというのは、人口がどんどん増えて将来は国全体がもっと豊かになることが確約されている成長期の時代の話だったのだ。
人口が減って高齢者だらけになる国、格差がどんどん開いて貧困層が激増する国の話ではない。
日本がこれから少子高齢化や格差が解消できないというのであれば、不動産は思ったほどの資産にならないということを意味しているのである。
不動産が資産であるというのは、よほどロケーションの良いところだけの話になっていく。借り手の見つからない不動産を親から相続でもしてしまったら売るに売れず、建物の解体や固定資産税で「負動産」になってしまう。
日本で「不動産は資産」という考え方に賭けるのは、いろんな意味で冒険になる。
不動産投資が絶対に失敗するわけではないのだが、いろんな意味で厳しい戦いになる。不動産を持っていれば何とかなるという神話はすでに崩れている。
「不動産は資産」の考え方は日本の高度成長期が始まった1954年からバブルが崩壊する前の1989年までの間に培われた「神話」だったのだが、その神話はすでに崩壊して色褪せた。
そして、かろうじて残っていた神話さえも、少子高齢化の進行と、安普請のアパートと欠陥マンションの蔓延で過去のものになっていく。(written by 鈴木傾城)