終身雇用の時代から使い捨ての時代になったので、生き延びる方法も変わった

終身雇用の時代から使い捨ての時代になったので、生き延びる方法も変わった

企業は株主や経営者の利益を追求するようになり、社員は家族ではなくコストと化した。会社に利益を残すためには、社員に払う賃金は低ければ低いほど良い。社員の人数は少なければ少ないほど良い。低賃金・悪条件で働いてくれる方がいい。それが暴走して……(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019、2020年2連覇で『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

世の中は完全に「労働者の使い捨て社会」と化したと理解せよ

総務省が出している2022年(令和4年)の労働力調査によると、非正規雇用者は1634万人だった2005年から比べると1.3倍も増えて2101万人になっているのが確認できる。

2020年、2021年は非正規雇用が減ったのだが、それはコロナ禍で切り捨てられたからでもある。2022年からは再び非正規雇用者が増え出している。

非正規雇用は2001年からの小泉政権の経済担当だった竹中平蔵の頃から意図的に増やされるようになっていき、以後の日本社会は完全に「労働者の使い捨て社会」と化した。これからも、人材の使い捨て傾向は変わらない。

今後は、ジョブ型雇用も定着していくようになり、非正規雇用のみならず正社員もまた状況が変わったら容赦なく切り捨てられる対象となる。

世界がグローバル化した結果、すべての企業は否が応でも激甚な競争の巻き込まれる。そうなると、競合相手よりも利益を上げるために、スピードある経営と、高度なテクノロジーの導入と、コスト削減に力を入れざるを得ない。

この3つは、すべて「社員の切り捨て」を生み出すものなのだ。スピードある経営とは何か。世の中がシフトしたとき、会社はシフトした方向に向けて、思い切りよく会社の方向を切り替えなければならないのである。

その時、その企業の新しい方向性に使える社員は残し、使えなくなった社員は「切り捨てる」という決断がなされる。かつては社内で社員を育てていたかもしれない。しかし今は社員を切り捨てて入れ替える。

スピードある経営とはそのような意味である。

スピードある経営とはスピードある判断力や経営に関する合理的な選択も必要だが、これらは人間の判断ではなくAI(人工知能)が担うようになっていく。AIが本格化すれば、あらゆる場面で衝撃的な人員削減が起きる。

かつては、不要な社員を切り捨てるのは「アメリカ型」の経営だったが、今は日本でも非正規雇用を増やしてアメリカ型の経営になっている。終身雇用は残っているが、いずれは跡形もなく消え去る。

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新卒でどこかの会社に入れば会社を辞めない限り安泰?

これは社員側から見ると、いつでもリストラされ、雇われるときは単なる「歯車の部品」として雇われるスタイルに変わったということだ。つまり、多くの社員は「一時的な雇われの労働者」と化した。

日本社会で定着してすでに労働者の4割近くを占めている「非正規雇用者」は、まさにこの一時的な雇われの労働者なのである。

2000年代から非正規雇用の動きが加速するようになると、これによって、日本に長く定着していたひとつの幻想が終わった。それは、このような幻想だった。

「新卒でどこかの会社に入れば、会社を辞めない限り一生安泰である」

新卒で入った会社に一生「奉公」する。それが昭和の働き方だった。会社も社員を家族として扱い、定年まで面倒を見た。中小企業でも終身雇用であった。今まで多くの日本人はこのような幻想の上に安泰な人生を夢見ていた。

しかし、もうこの幻想は機能していない。粉々に打ち砕かれた。

良い大学を卒業し、良い会社に入り、資格もたくさん取って意味があったのも終身雇用の時代の話だ。かつては、そういったものが評価されて、加算でひとつひとつ役職の階段を上がっていくシステムだった。

しかし、やがて企業は株主や経営者の利益を追求するようになり、社員は家族ではなくコストと見なされるようになった。

会社に利益を残すためには、社員に払う賃金は低ければ低いほど良い。さらに、社員の人数は少なければ少ないほど良い。低賃金・悪条件で働いてくれる方がいい。世の中は完全に「労働者の使い捨て社会」と化したのである。

使い捨てするのだから、労働者がどこの大学卒だろうが、いくら資格を持っていようが、長年勤めていようが関係なくなった。そんなものよりも、低賃金・悪条件で働いてくれる外国人労働者の方が企業には都合が良い。

だから、日本人よりも外国人労働者の方が率先して雇われている。

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自分の持っている職業分野の「スキル」が自分の存在価値になる

学歴や資格などは次の仕事探しに役に立つかもしれないが、そこでも結局は「使い捨て」になるのだから、結局、生活の安定に寄与することはなくなっていく。今後は「使い捨てされる」という状況の中で生き延びる必要が出てきた。

会社に依存して生きることは、もう許されない。終身雇用は日本社会から完全に消えていくからだ。

使い捨てされるのであれば、転職するにしてもフリーランサーになるにしても起業するにしても、いかに自分自身が他にない能力《スキル》があるかが生き残りのキーとなる。その他大勢と同じでは、雇われない可能性も出てくる。

自分の持っている職業分野の「スキル」が自分の存在価値になる。真っ先にやるべきことは、その分野の専門家《スペシャリスト》になって能力を磨くことである。

下らない、つまらない、どうでもいいような資格を山ほど持っていても意味がない。実務に裏打ちされた「専門」を持っていなければならない。

終身雇用で雇われていた時代は会社に従順であることが求められていたので、突出した個性や能力よりも、むしろチームでうまくやれる協調性が重要だった。しかし、使い捨てされて常に職を探す状況に置かれるのであれば、突出した個性や能力がなければ話にならない。

もし自分の能力を使ってくれる企業がない、条件に合う企業がないのであれば、その専門で起業することも考える必要が出てくる。

その際に必要になってくるのは、深く広いテクノロジーへの知識と縦横無尽に使いこなす能力である。

なぜテクノロジーなのか。現在はすでに「超」高度情報化社会に入っている。これからもそうだ。そうなればなるほどテクノロジーが世界を支配することになり、テクノロジーが分からなければ起業すらもできなくなるからだ。

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世の中が使い捨てになったから、個人の能力が重要になっている

私たちはこれから、自分の専門技能《スキル》を極限まで磨いて生き残らなければならない。「専門知識」と「専門実務」と「高度な能力」を武器にして世の中をサバイバルする必要がある。

終身雇用の時代は、個人の能力よりも協調性が重要だった。しかし使い捨ての時代は、個人の突出した能力が重要になっている。

「終身雇用の時代」から「使い捨ての時代」になった。だから、使い捨ての時代のためのサバイバル方法が重要になっているのだ。自分のスキルを極限まで磨いて生き残らなければならない理由がここにある。

さらに言えば、いつでも「使い捨て」されるために賃金収入はしばしば途切れてしまう可能性も考える必要がある。これに対処するために、不労所得が生み出せる知識や力も必要なのだ。

ライセンス料が入ってくる仕組み、特許料が入ってくる仕組み、広告料が入ってくる仕組み、あるいは配当が入ってくる仕組みなどの「不労所得」を構築しなければならない。

もっとも分かりやすいのは「投資」だが、ここで言う投資というのは、一攫千金の「バクチ」ではない。堅実で、確実で、間違いのないものでなければならない。

不動産投資でも、株式投資でも、現物投資でも何でもいいが、それによって、値上がり(キャピタルゲイン)や配当(インカムゲイン)のいずれかが生み出せるように努力すべきだ。年々、これを膨らませていく行為が「投資」の本質である。

なぜ若者に職がないのか。彼らはまだ専門家(スペシャリスト)ではないからだ。なぜ中高年が苦しんでいるのか。テクノロジーの能力を向上させるのを避けていたからだ。なぜ高齢者が追い込まれているのか。彼らは年金に依存して投資を重視していなかったからだ。

「生き延びる」というのは、並大抵のことではない。だから、今の時代を生き延びるために、時代がどのように変わったのか、そして変わってしまった社会にどのように適応すべきなのかが問われているのである。

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