「大災害時代」に突入している。地方の死は、この大災害によって加速される

「大災害時代」に突入している。地方の死は、この大災害によって加速される

日本はただでさえ地方が過疎化に苦しんでいる国である。災害によって過疎地区から見捨てられてもおかしくない。それぞれの過疎地方が崩壊し、人口は地方都市に集約される流れになる。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。まぐまぐ大賞2019メディア『マネーボイス賞』1位。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。

人間がそれを止めることは不可能

日本でも九州地方を中心として激しい豪雨に見舞われているのだが、世界に目を転じても、今までは考えられなかった「超弩級」のハリケーン、洪水、猛暑、山火事が、次々と発生している。

あまりにも「観測史上最悪」が世界中で続いているので、もはや全人類が「最悪」に慣れてしまって何とも思わなくなってしまったほどだ。2019年7月は、欧州の複数の国で最高気温を更新し、40度近くにまで気温が上昇した国もあった。

イスラエルでも複数の観測地点で最高気温を更新、アフリカでも記録上、最も暑い7月になっていた。アラスカも香港も記録を更新し、アジアも南米も例年よりもかなり気温が高かった。

そのせいで、本来は燃え広がることがないはずのアマゾンのジャングルが凄まじく燃え広がって止まらずに全人類が注目する「国際問題」となった。

一方で北極の永久凍土も溶け出しており、このままでは後20年で氷は消滅することになる。熱波は北極圏のグリーンランドにも到達し、1年中雪で覆われているはずのグリーンランドで山火事が発生するような事態にもなっていた。

南極も海氷面積が過去最少だ。そして、今、アメリカやバハマに超巨大ハリケーンが到来しているのだが、人間の存続を脅かすような強烈な気候が、もはや恒常化してしまっているということは間違いない。

地球環境の激変が迫っている。人間が止めることは不可能である。

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気候変動が着実に世界を変えている

この気候の変動の要因については様々な説が出されては議論されている。地球温暖化が進んでいるという説もあれば、逆に氷河期が進んでいるという説もある。エルニーニョ現象のせいだという説もあったが、今年はエルニーニョ現象の影響は小さいはずだった。

私たちは気象の専門家ではないので、どれが正しいのかを判定する立場にない。

重要なのは、どの仮説が正しいのだとしてもすでに地球は「大災害時代」に突入しているという事実である。地球全体がおかしくなっている以上、私たちはどこにいても気候変動の被害に遭うのを避けられない。

気象が荒れると、私たちの日常生活はいとも簡単に吹き飛ぶ。家が破壊され、街が破壊され、熱波で人が死に、寒波で人が死ぬのが恒常的に繰り返される。

海面が上昇して住める地が消えているツバルやキリバスのような国もあれば、海岸線が削られて今まで住んでいた場所が住めなくなっているバングラデシュのような国もある。

今後30年の間で、マーシャル諸島もモルディブもソロモン諸島も沈没してしまう可能性も指摘されている。

消える国々のほとんどに私たちは縁がない。しかし、地球はつながっている。こうした国々が消えるというのは、凄まじいまでの気候変動が着実に世界を変えているということの証(あかし)である。

それは形を変えて私たちに襲いかかってくるのだ。たとえば、何が起きるのか。

1. 世界各国で激しい豪雨が襲いかかる。
2. 世界各国で穀倉地帯の干魃が起きる。
3. 世界各国で、熱波と寒波が襲いかかる。
4. 沿岸部が沈没し、消える島国も出てくる。
5. 被災した地方が、復旧できなくなっていく。
6. 最後に各国の主要都市が機能停止する。

もう、それは現在進行形であるのを私たちは悟っているはずだ。徐々に、しかし着実にそれはやってきている。

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穀物価格・資源価格の高騰が生活を直撃

今後も、地震・猛暑・山火事・集中豪雨・暴風雨・洪水・干魃と、ありとあらゆる巨大災害が吹き荒れる。毎年毎年「こんなのは見たことがない」と言われるような異常災害が立て続けに起きる。

10年前まで、世界中で起きるこれらの自然災害の劇症化は、一過性のものなのか、さらに深刻な事態が続いていくのかどうか議論が戦わされていた。

もう答えは明らかだ。

これは一過性ではなく、継続的なものである。世界各国で起きているのは「観測史上最悪の激甚災害」ばかりになっている。今はまだ、本当は大きな災害が起きても、速やかに復興が進んで何とか収束ができている。

しかし、激甚災害が日常的に起きてしまうならば、いずれ復興できないダメージを負うケースが必ず発生する。

年を追うごとに自然災害の「異常」が度を超していくと、最初は地域の被害に過ぎなかったものが、復興が不可能なまでの広範囲な影響になっていく。そうなれば、もはや復旧を諦めて放棄するしかない場所も出てくるだろう。

過酷な自然環境は人をイライラさせるが、灼熱の夏と酷寒の冬が恒例になったら、それが社会に影響を与えないはずがない。

農作物にも影響が出る。自然災害の被災地は、往々にして穀倉地帯だったり資源地だったりする。穀倉地帯が壊滅したら、当然のことながら穀物価格・資源価格の高騰で人々の生活に影響を与えていくことになる。

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社会崩壊は順序がある。なぜ地方が危ないのか?

ここ最近の異様な気象、歴史に残るような巨大地震などが、これからも頻繁に起きるのであれば、それによって復興が不可能になったり、治安が崩壊する国や地域が続々と出現するのは間違いない。

日本も例外ではない。日本はただでさえ地方が過疎化に苦しんでいる国である。災害によって過疎地区から見捨てられてもおかしくない。それぞれの過疎地方が崩壊し、人口は地方都市に集約される流れになる。

災害の後は復旧が必要になるが、いくら日本とは言えども復旧できる国家予算と国民の体力は無限ではないのだ。すでに国民は消費税で疲弊しているので、復興税を課して引き上げるのは容易なことではない。

災害が大規模化かつ恒常化して、繰り返し国土にダメージを与えるようになると、どうなるのか。国家予算はいつか枯渇する。もはや復旧の体力すらもなくなって、現場の放置が生まれる可能性が高まる。

放置されるのは、当然だが人口の少ない地方からである。

どこの国でも都市は社会の中枢なのでどんなに破壊されても復旧されるが、逆に言えば地方は都市を守るために予算削減で犠牲にされていく。インフラが破壊された時、そこに住む人たちが極度に少なければインフラは復旧されない。

災害でかろうじて家屋が助かったとしても、他が壊滅していればそこに人は住めなくなる。住んでいる人は、移住が強制される。災害に直撃された地方はそうやって死んでいくことになる。

しかし都市部も平穏ではない。都市部も絶えず災害に見舞われて、激しい気象変動に熱波や洪水の被害を受けるわけだから、そのストレスは並大抵のものではない。都市部でもまだらに捨てられる地が生まれる。

大災害時代は、そうした激変を加速させるものになる。こうした災害による共同体の死は、都市部に住む人たちよりも、地方に住む人たちの方が切実に感じているはずだ。まずは地方から致命傷になる可能性が高いから他人事ではないのである。

『住んでいい町、ダメな町 自然災害大国・日本で暮らす』

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