身体に悪いと言われてもトランス脂肪酸が含まれた食品は安いので逃れられない

身体に悪いと言われてもトランス脂肪酸が含まれた食品は安いので逃れられない

「トランス脂肪酸の血中濃度が高い人はアルツハイマー病や認知症を引き起こす」という結果が出ている。「日本におけるトランス脂肪酸の摂取量は少ないから気にしなくていい」と強く主張する専門家もいるが、リスクを抱えるのは間違いない。本来はリスクを減らすのがいいのだが、そうは言ってもトランス脂肪酸が含まれた食品は安い。(鈴木傾城)


プロフィール:鈴木傾城(すずき けいせい)

作家、アルファブロガー。政治・経済分野に精通し、様々な事件や事象を取りあげるブログ「ダークネス」、アジアの闇をテーマにしたブログ「ブラックアジア」、投資をテーマにしたブログ「フルインベスト」を運営している。「鈴木傾城のダークネス・メルマガ編」を発行、マネーボイスにも寄稿している。(連絡先:bllackz@gmail.com)

アルツハイマー病や認知症を引き起こす?

2019年10月23日。米神経学会誌に『トランス脂肪酸の血中濃度が高い人は、低い人に比べてアルツハイマー病や認知症を発症する確率が50~75%高くなる可能性がある』と研究成果が発表された。

CNNがこの研究成果を詳しく記事にしているのだが、この研究は「1600人の日本人を10年に及ぶ追跡調査の結果」によって導き出された結果である。「血中濃度の追跡調査なので科学的な信憑性も高い」と専門家が述べている。

トランス脂肪酸とは何か。これは植物性の油脂を加工する過程で発生するもので、現在は多くの食品に使われている。

たとえば、サラダ油、マーガリン、ショートニングに含まれ、さらにこうしたものを使ったクッキー、アイスクリーム、チョコレートのようなお菓子にも含まれている。

トランス脂肪酸を取りすぎると、アルツハイマー病や認知症を引き起こすのではないかというのは、実はこの調査が出る前からずっと言われていたことだ。サラダ油も、キャノーラ油も、アルツハイマー病や認知症の引き金になると2017年に米テンプル大学の研究グループが発表している。

トランス脂肪酸が引き起こすのは、アルツハイマー病や認知症だけではない。心筋梗塞や狭心症やアレルギーを引き起こし、流産や死産を生じさせる可能性がある。

もちろん、こうした問題を引き起こすものはトランス脂肪酸だけではない。他にも身体に悪い物質はたくさんある。「なぜトランス脂肪酸だけが悪者にされるのか」という反発の意見も強く、欧米で禁止されているトランス脂肪酸は日本では規制されていない。

「日本におけるトランス脂肪酸の摂取量は少ないから気にしなくていい」と強く主張する専門家もいる。しかしながら、トランス脂肪酸の血中濃度が高い人はリスクを抱えるという事実も出ているのは軽視していいのだろうか。

厚労省は、2025年には認知症患者が700万人にのぼり、かつ若年性認知症も増え続けていることを憂慮している。

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長い蓄積が身体にダメージを与えていく

トランス脂肪酸は「食べるプラスチック」と呼ばれている。この分子構造がプラスチックと非常に似ているからである。「プラスチックは食品ではないが、トランス脂肪酸を食べるというのは、プラスチックを食べるというのと同じ」という専門家もいる。

このトランス脂肪酸は様々な食品に含まれているのだが、その中で特に論争になっているのがサラダ油やマーガリンである。

日本では朝食に食パンを食べる人がとても多くなっているのだが、その食パンにバターではなくてマーガリンを塗る人は80%を超えている。

バターは固くて溶けにくいので食パンに塗りにくい。そのため、マーガリンが好まれるようになっている。しかし、マーガリンを常食するこの80%の人は、ほぼ毎朝プラスチックと分子構造が似たものを食べているということになる。

さらに日本は「揚げ物」が非常によく食べられている。スーパーではできたての惣菜がたくさん売っているが、大半が揚げ物である。揚げ物もまたトランス脂肪酸が大量に含まれている食品だ。

おまけに、現代の食品は食品添加物が非常に多い。食品添加物に加えてマーガリンや揚げ物のようなトランス脂肪酸の恒常的に摂取されているのだから、アトピーや心臓疾患や認知症(若年性認知症含む)や糖尿病等、「食べ物から来る病気」が全国民の悩みになっているのは当然のことでもある。

本来は健康である若年層ですらも、数十万人規模で糖尿病や若年性認知症にかかっているのだから尋常ではない。若者を悩ましているアトピーも増えていく一方で、現在では少なく見積もっても50万人を超えている。

「アトピーの人はサラダ油やマーガリンを取るな」と言う医師もいる。もちろん、サラダ油やマーガリンだけが問題ではないのだが、サラダ油やマーガリンを取らないというのは原因を取り除くという意味ではひとつの方法でもある。

トランス脂肪酸は問題があると言っても、それを食べたらすぐに死ぬというわけではない。トランス脂肪酸を継続して取ったとしても「ただちに影響はない」ものだ。しかし、長い蓄積が身体にダメージを与えていく。

摂取したら死ぬのではなく「健康を害する」のだ。こうした「少量ではすぐに何か問題が発生するわけではない」というものを人間は往々にして軽視する。

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「わざわざ規制するほどでもない」の意味

欧米でトランス脂肪酸が規制されているのに日本で規制されないのは、「欧米と日本ではトランス脂肪酸の摂取量がまったく違うから」という前提があるからだ。そもそも、欧米人のジャンクフード好きは、日本人の想像を超えたところがある。

特にアメリカ人はそうだ。ハンバーガーからフライドポテトからタコスからピザからフライドチキンからドーナツからケーキに至るまで、ほぼジャンクフード満載の食事がそこにある。

そして、そのすべては油脂がたっぷり含まれており、その油脂の中にトランス脂肪酸がありったけ含まれている。しかも食べる量が半端ではない。おまけに砂糖たっぷりの炭酸飲料もここに加わる。

アメリカ人の限度を超えた肥満は、そうした食生活に問題があるのは間違いない。トランス脂肪酸の規制はこうした現状から生まれたものだ。

しかし、日本人で朝から晩までジャンクフードを食べる人は、皆無とは言わないがさすがに少ない。そう考えると、たかが食パンにマーガリンを塗ってたまにジャンクフードを食べるくらいでは規制するほどでもないという意見も一理ある。

厚生労働省もこうした立場である。しかし、厚生労働省は2010年度版の「日本人の食事摂取基準」の中で、わざわざこのような一文を入れている。

「日本人の中にも、欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいる」

そういう人もいるのは厚生労働省も認識しているのだが、日本ではトランス脂肪酸が規制されないので「すべては自己責任」ということになった。

「わざわざ規制するほどでもない」というのは、そういう意味である。「自分の健康は自分で守れ」というのが基本的な見解なのである。しかし、ここにある社会問題が絡んでくる。

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「貧困層=肥満」「貧困層=糖尿病」

バターとマーガリンはどちらが安いか。マーガリンである。マーガリンにはトランス脂肪酸が大量に含まれていると言われても、バターが高すぎてマーガリンしか選択の余地がないという人はたくさんいる。

使い回しの油で揚げられた揚げ物と、毎日のように交換される油で揚げられた揚げ物は、どちらがトランス脂肪酸が大量に含まれているのか。もちろん、使い回しの油の方だ。

しかし、使い回しの油を使っている店ほど食品は激安であり、いくらトランス脂肪酸が大量に含まれていると言われても、それしか選択肢がない人もたくさんいる。

それと同じく、ジャンクフードにはトランス脂肪酸が大量に含まれているとしても、低価格で大量のカロリーを取れるジャンクフードしか選択肢がない人も生まれてきている。

トランス脂肪酸が大量に含まれている食品は、不健康であると言っても「安い」のである。だから、身体に悪いと言われてもそれを選ぶしかないという「哀しい現実」が浮上する。

アメリカではすでに貧困層は痩せ細るのではなく、逆にぶくぶくと太っていくという「貧困層=肥満」現象が定着している。トランス脂肪酸たっぷりのジャンクフードが安いから、どんどんカロリーがオーバーしていく。好き嫌いではなく、貧困で食品の選択肢が消えた結果としてそうなっている。

世界中で同様の傾向があるので、当然のことながら日本もまた「貧困層=肥満」の構図になっていく。貧困は糖尿病を引き寄せるので、「貧困層=糖尿病」という結果をも生み出す。(マネーボイス:日本の貧困層は飢えずに太る。糖尿病患者の半数以上が年収200万円未満の衝撃=鈴木傾城

貧困であるがゆえに、安い食品を選択せざるを得ず、それは結果的にトランス脂肪酸たっぷりのジャンクフードとなり、健康を損ねるのである。こうした社会現象を考えると、今後は何が起きてくるのかは誰もが分かるはずだ。

「貧困層ほどトランス脂肪酸を大量に摂取することになって健康を害し、健康を害するために仕事に影響が出て貧困がより深くなっていく」という現象が起きるのだ。

さらに長い目で見ると、健康な食品を選べる富裕層とそうでない貧困層の間では、間違いなく同じ国民とは思えないほどの健康寿命の差となって現れてくる。

「何を食べるのかは自己責任」と言われても安い食品を食べるしかなく、あげくの果てに病気になりやすく、さらに寿命も短くなる。トランス脂肪酸の問題は、実は貧困問題だったのである。

『病気がイヤなら「油」を変えなさい! 危ない“トランス脂肪”だらけの食の改善法(山田 豊文)』

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